93・群竜迎撃戦:ジーロサイド
「かかった」
空中モニターの凹が点滅する。
入り口に仕掛けた落とし穴が作動した証だ。
敵を示す赤い▲のアイコンがそこで留まっている。
「ほふでふの?」
バナナを頬張りながら、ジゼロ・ハムスター・ジゼロが何か言っているが、それはさておき。
落とし穴の先には、いくつも罠が仕掛けてある。
「作動だ」
トラップアイコンをどんどん押していく。
範囲内で自動発動をさせることもできるが、任意でも発動できるのだ。
砂丘から落とし穴目掛けて落石が落ちていき、トゲ丸太が落下したはずだ。
ドラゴンは空を飛べる。
だから、実は仕掛ける場所は階段前しかない。
自動起動と任意起動のトラップが一斉に作動していく。
「じゃんじゃん引っかかってるみたいですわね。けぷ。……失礼」
バナナをたくさん食べ終わり、心なしか少しデカくなっているジゼロジゼロが言う。
げっぷよりもっと気にすることは色々ありそうな気がするが。
「……引っかかっているというより、一体がまとめて引き受けている印象があるな……」
トラップによるドラゴンへのダメージは、あまり期待できない。
爬虫類人たちを削れればというところだが、小さな▲は数が減ってはいるが、期待していたほどではない。
更に、大きな▲と一緒に完全に同じ動きで、小さな▲が移動していく。
「……爬虫類人を乗せて運んでいるドラゴンがいる……?」
「そう考えるのが自然ですね」
「白骨公主の態度からみるに、奴隷くらいにしか思っていないと思ってたんだけどな……」
だが、ドラゴンの性格が全部同じというのもあり得ないか。
考えを改めないといけない。
「とにかく、時間を稼がなきゃならない。俺たちだけでドラゴンを4体も倒すなんて無理だ。ファルケファルケたちの到着まで粘ればチャンスがある。もしかしたらガングレーナ来てくれるかもしれないしな」
「ええ。どちらにせよ、この階にはゼフィーさんたちもいますから、絶対に来させませんわ!」
「……そうだな」
一瞬、それを忘れていた自分が、ひどく恥ずかしい。
これは、ゲームじゃないのだ。
失敗したら、自分だけじゃなくたくさんの人が死ぬのだ。
「しかしこれで、トラップのリソースはほぼ全て使いましたね。時間で回復はしますが、どのくらい再使用に間に合うかは微妙なところです」
残リソースのバーはじわじわ回復していくが、確かに心もとない速度だ。
「しかし、このゴーレムの配置はどういった意図なので?」
階段マークのそばに大量の凸が集まっている。
ゴーレムのほとんどは、地下への階段のそばの砂漠に埋めてあるのだ。
「たしかにそうですわ。なぜ階段の前を固めないのです?」
「まずドラゴンの火力だと、遠距離で撃ち抜かれて終わるから、並べる意味はないんだ」
ドラゴンの雷撃は、もはやビーム兵器の域だ。
落雷でも岩が砕けると聞くが、岩だからある程度は耐えられても、ゴーレムとしての四肢がばらばらになるのは間違いない。
「なるほど……それはわたくしも気をつけねばなりませんね」
この先はジゼロジゼロもゴーレム作成で打って出ることになる。
雷対策は必須だ。
「その上で、このゴーレムは何に使うかなんだけど――」
俺は、秘策を開示した。
「なるほど。面白い使い方です」
「ほあー。よく考えますわね」
「……人間以上の存在のドラゴンに通じるかはわからないけどね。でも、やる価値はある」
「でも、このぽつんといくつか配置されているゴーレムはなんですの?」
ジゼロジゼロの言う通り、マップには小さな凸がいくつか点在している。
戦力としてはあまり意味はないが――
「それは単に嫌がらせだ」
「ほあ?」
「見つかったら、逃げさせるように考えてる。逃げたら追いたくなるのが動物のサガだ」
「索敵に時間を無駄に使わせるのですね」
「ああ。別に何もないんだが、何かあると思わせたい。無駄に気を張らすんだ」
「性格が悪いですね」
「お前だけには言われたくない。あと、他にもやりたいことがあってね……」
ドラゴンと人間、あまりに戦力差がある。
だが、人間が勝っているものが、確実に一つある。
弱い生き物だからこそ、鍛えて来たもの。
そして、この世界より格段に戦争の多かった世界の記憶があるからこそ、浮かぶものがいくつもある。
「悪知恵じゃ、負けないぜ……!」




