79・怪文書と警戒文書
ゼフィーが倒れている。
胸は上下しているので、生きているのは間違いない。
その体は、ほとんど人のそれに戻っている。
あざのように残っている箇所もあるが、続けるには俺の体力も限界だし、ゼフィーに負担をかけすぎる。
いったん、様子を見るしかない。
「ハァッハァッハァッ……」
忘れていたように呼吸が荒くなる。
俺もとうに限界は超えていた。
へたり込んで動けなくなる。
もし今、敵が現れたら、間違いなく終わる。
そう思った瞬間、背後でザリッと足音がした。
「……っ!」
なんとか首を傾けると、そこには――
「ふぅ、やっと昇って来れましたわ」
汗だくのジゼロジゼロだった。
「……なんだ……」
「あら、なんだとはご無体な言葉ですわね」
「……いや……敵かと……」
「こんなにフレンドリーな敵はいませんことよ」
「あ」
ジゼロジゼロは強引に俺をひざまくらした。
「あ、あの……」
気恥ずかしさと言ったらない。
そんな幼子ではないのだ……。
「ずいぶん頑張ったのでしょう? なら甘えなさいな」
あまりに自然。
当然、未婚で子どもがいるはずもないから、本人が母親か姉にこんな感じで甘えていたのかもしれない。
というか、ファルケファルケはそういうことする。
「ゼフィーさんを助けられたのですね」
「……まだ、予断は許さないけど……ね」
「ずいぶん、仲良さそうやなあ……うらやましいわ」
「!」
音もなくガングレーナが現れていた。
その姿は、前にも増してボロボロになっている。
額からは血が流れ、
「大変ですわ! 大怪我なさってます……!」
「……まぁ、致命傷はないから大丈夫や。それより――」
頭を下げるガングレーナ。
「すまん、ヤツには逃げられた」
流石にいつまでも膝枕してるわけにはいかない。
無理やり体を起こす。
「いや……奴は、普通の手段では倒せない……貴方のせいじゃない……」
「……みたいやな。せやけど、そこのお嬢ちゃんは……」
ガングレーナがゼフィーに目を向ける。
「ええ……俺のスキルは、【深魔】に効くみたいです」
「マジかー」
「ふふん、ジーロは凄いんですのよ」
なぜ君が自慢げなんだ。
と、そんなジゼロジゼロの元に、何かが飛んできた。
すわ敵か、と身構えたが、小鳥だった。
ただ、氷で出来ていることだけが異様だった。
「あら、お姉様の【氷鳥】ですわね」
そうか、ファルケファルケのスキルか。
スパルネの【火精召喚】のように、【氷】のスキルでも同様に簡単な命令で動かす使い魔を作り出すことが出来る。
「ファルっちの鳥かぁ。たぶん王都からやろ? ここまで飛ばすとか相変わらず無茶苦茶やなあ……」
同じ【国宝】が言うのだから、やはり規格外なのだろう。
「ふふん、お姉様、すごいんですの」
ずっと他の人で自慢げにしてるの、なんか眩しくすら感じるな……。
「あら、脚に手紙がついていますわね」
「なるほど、伝書鳩か。よっぽど急ぎの内容だったんだろう」
「読んでみますわね」
【氷鳥】の脚輪から、手紙を取り出すジゼロジゼロ。
「ええと……大好き大好きハイパー大好き我が心のトレジャー・ジゼロジゼロ。お前のことを考えると胸がディンドンディンドン……」
「その前置き部分は全部飛ばしてくれると助かる」
「わかりましたわ」
ずいぶん目を動かしているから、だいぶ怪文書パートが多いんだろう……。
「……ドラゴンの一団が王都に迫っている!!!!????」




