77・二度目の人生
次々と飛来する水ドリルをかわしていく。
ゼフィーの水ドリルは、要は螺旋状になった槍だ。
ジゼロジゼロのドリルはアニメ的な円錐なのでだいぶ違う。
その意味では、地球の異界因子とは異なる。
と、そんな呑気に考えている場合じゃない。
あれは、バナナの木など軽く貫通する。
避け切る以外ない。
だが、アルガスとの戦いで体力は限界だ。
転がるように這うように、なりふり構わず避けていく。
「ハアッハアッ……」
「なんや、そのダッサイ避け方? そんなに貫いて欲しいんか~? な~んや、それならはよ言うてぇな」
ゼフィーは、水ドリルを集めて巨大な槍に作り替える。
禍々しい槍だ。
この世界では武器は発展しなかったが、スキルで貫く形に成型することは珍しくなく、槍の概念はある。
だが、スキルで作る以上、シンプルな形状が多く、ここまでねじくれた形で見かけることはまずない。
間違いなく、異界の影響だ……!
武器の華美さは、武器の実用性だけじゃなく、そこに価値を見出すほど進歩している世界でなくては生まれない。
そしてそれは、人間同士が殺し合うのを前提とする世界なのだ……!
地球と同じように……!
「心配せんでもええよ~。ちゃあんと毒水で作った槍やさかい。一発で天国に行けるで♡」
槍から滴った水滴が、床でじゅう、と音を立てた。
勘弁してくれ。
「【バナナ園】!!」
正面にバナナの木を大量に生やす。
アルガスに刈り取られてしまった分の隠れ場所を補給するのだ。
「……っ」
急にめまいがした。
まずい。
スキルの使いすぎだ。
【万気】は空気中から皮膚呼吸で摂取するとはいえ、スキルへの加工には体力を使う。
乱発していると、酸欠時にも似た症状に襲われるのだ。
「無駄やでー」
ずどん、と大砲のような唸りと共に、近くのバナナの木が抉り飛ばされる。
その切り口がじゅうじゅうと音を立てていた。
「ぜーんぶ吹き飛ばすのに何秒もかからへん」
「俺を殺す意味はないだろ」
「せやねえ。あらへんねえ」
言いながら、俺の声がしたあたりに槍を突き入れてくるゼフィー。
もちろん声を出してすぐに逃げたからくらいはしないが、えげつないことをやってくるな……。
「まぁ、ユラーゲルの命令でもあるし? 一応殺しとかなアカンやん?」
「スナック感覚で殺されてたまるか!」
「あはは。でもゼフィーは、あんたのこと、そないに嫌いやなかってんで? 一目惚れするほど軽いオンナやないけどな。でもでもでもぉ、今度はどこまでも軽ぅなってもええよなあ!! ぐっちゃんぐっちゃんになった血と腸の中で、乳繰り合うのも楽しいと思わへんかぁ?」
「思うかよ!」
「なんやつれへんやつやなあ。ゼフィーやったら悲しむで。うちは、そういうのも嫌いやないけど。だって屈服させるほうが楽しそうやからなあ!」
喋りながらどんどんバナナの木は削られていく。
俺の隠れられる場所は、もうほとんどない。
「さっきからずっと他人事みたいな喋り方だな」
「そうや? もう今までの惨めなゼフィーは死んだんやから」
「二度目の人生ってわけか」
「そうやで~。最強のチカラをもらって二度目の人生や。なーんもかんも思い通りにできる圧倒的なパワーを、何の苦労もなく手に入れられたんや。今までさんざん苦労してきたんやから、今度こそ好きにやらせてもらうで!!」
「……!!」
ああ。それは。
「耳が痛い話だな……」
「何を言うとるんや?」
「こっちの話だよ。だがな……」
一瞬、脳裏に浮かんだのは赤竜公主の姿。
「二度目の人生だからって、周りの事も考えずに好き勝手やってると、しっぺ返しが来るんだぜ」
「知ったようなクチを……!! お前にウチの気持ちなんかわかってたまるかあ!!!」
ゼフィーは渾身の一撃を放つ。
「知ってるから言ってんだ!!」
頬をかすめる一撃を感じながら、ギリギリでかわして足元からバナナの木を生み出し、その反動で飛ぶ!
「なっ!?」
俺は拳にスキルを集中させ、そのまま突っ込んだ――




