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番外編・落下するガングレーナ

 やってもうた……!

 アルガスの腹に必殺の【螺旋嵐スクリューストーム】をぶち込んで、完全に勝ったと思うた。

 けど、それは、奴の予想通りの攻撃やった。

 奴は脚を犠牲に耐えた。

 なんちゅう覚悟。

 ちゃう。まともやない。

 そのまともやないのを、読み切れんかったうちのミス……!

 その代償を、今払わされとる。

 ぎょうさん石礫を投げつけられたみたいに、全身に琥珀が食い込んどる。

 痛みで頭がどうにかなりそうやが、意識を切ったら終わりや。

 塔から相当に吹っ飛ばされてなお、琥珀の操作は切れとらん。

 うちの体にどんどん食い込み、仕留めようとしてくる。

 体の中から風を起こして押し返さな死んでまう。


「風よ!!」


 落下の速度を風で遅れさせながら、傷口を守る風を強くする……!

 当然、そないなことしたら、傷口は広がって激痛が襲って来る。


「ぐぎいい!!」


 頭がどうにかなりそうや。

 ホンマに意識が飛びそうになる。

 せやけど、そないな甘えたことは言えん。

 落ちながら、目に入った景色がある。

 琥珀の壁に取り込まれてもうた、セクタバの騎士団員たち。

 アスキン、サリュエン、シカロー……そしてサルクル。

 うちの部下……だったみんな。

 

「くそだらああああああああ……!」


 戦闘中に飲む用の特注の酒瓶を体中に括りつけとったが、どれもバキバキに割れてもうてる。

 背中側の生き残った僅かな酒瓶の中身を体にぶっかける。


「んがあああああああああ!!!」


 消毒と気付けや!

 間抜けな【国宝】にはこれでいい。

 これでもう酒はあらへんが……。

 酒……。

 うちがもっと自信を持ってたら、こないなもんはいらんかったんや。

 ……。

 正直、アルガスはとんでもない相手や。

 【国宝】なんて言われてるうちでさえ、確実に勝てるとは言えん。

 せやから、酒で恐怖を誤魔化してここまで来たんや。

 そしたら、いざ乗り込む段になって、足りひんちゃうかって心配になって……。

 うちが酒、買い足しとる間に、あいつらは先に乗り込んでしもうとった。

 うちの不安を見抜いとったんやな……。

 みんなの力じゃ勝てへん相手や。

 そんなのわかっとったはずや。

 でも、何でみんながそれでも行ったかは、わかっとる。


「……なんでこんなアル中のボンクラに惚れたんやアホども……!!」


 あいつらが陰で約束してたんは知っとる。

 一番手柄を立てたやつが、うちに告白するんやって。

 うちは貴族の出やない。

 【国宝】が一代貴族相当とは言うても、騎士団で名を上げれば身分差はないに等しい。

 ……あいつらアホや。

 思われとることに酔って、とっとと応えたらんかった、そんなボケナスに惚れたアホどもや。

 うちがとっとと答えとったら、みんなは死なずに済んだんや。

 いや、うちが酒なんかに頼らずおれたら、こないなことにはそもそもなってへん。


「アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 体内の風を全開にして食い込んだ琥珀を吹き飛ばす……!

 あちこちずたずたになったけど、もうかまへん!!

 酔いももう醒めてもうた。

 そうこうしとるうちにもう地面や。

 風の力で、今なら苦も無く着地できる。

 ……。

 ……決めた。

 一回地面についたら、それでリセットや。

 うちはもう二度と酒を飲まへん。

 そないなもんに頼らへん。


「……それでいいよね? サルクル……」


 セクタバに移住する前からの幼馴染。

 なまじ強力なスキルを発現した()を追って、騎士団に志願した男の子。

 今はもう琥珀の中で瞬きすらできない彼に、そうつぶやいて。

 私は再び、塔の上層へ向かい、嵐を纏って飛び出した。

 せめて、彼が憧れた【国宝】の姿を見せるために――

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