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70・おぞましき儀式

 頭からつま先まですっぽり琥珀に覆われたアルガスが突っ込んでくる。

 ただの体当たりではもちろんない。

 琥珀から無数のトゲが生えている。

 カウンターで【死】を食らわせようにも、このままでは触れることが出来ない。

 なら――


「【死】を剣に!」


 抜いた剣に【死】を流し込む。

 【死】は動くものしか殺さないが、その「動く」の定義は「まるで生き物のように」という動きを指すから、単なる物体の剣は死なない。

 つまり刀身を【死】で覆えば、トゲにも対応できる!

 アルガスは琥珀の剣でバナナの木を斬り飛ばしながら突進して来ている。

 ガングレーナ戦を見るにトゲを発射する可能性があるし、雷の精霊が援護をするであろうから、遮蔽物が減るのは危険だ。

 上手く雷の精霊の視線を切るように移動しながら、アルガスを誘導する。

 チャンスは一瞬。

 アルガスが、バナナの木を斬り飛ばした、その隙だ!


「きえええええっ!!」


 バナナの木を斬ったがために大きく開いた胸元に突っ込んで行く。

 腕を引き戻しても間に合いはしない。

 対人経験はこっちが遥かに上。

 トゲで攻撃する間もなく、剣が面に命中した!


「っし!!」


 剣から流れ込む【死】!

 琥珀が砂のように崩れていく――


「え?」


 崩れた琥珀の中に、誰もいない!?


「なるほど……恐ろしいスキルだ……」

「なっ!?」


 アルガスの声は、真上から響いて来た!

 天井に琥珀で張り付いていたのだ!

 まんまとやられた!

 鎧のように琥珀を纏っておいて、バナナの木の陰に入った瞬間、抜け出していたのだ!


「だが、もう見た……」


 アルガスは、天井から無数の琥珀の槍を打ち出して来た。


「くそっ!」


 あれをやられるときつい!

 剣を納め、代わりにクロスボウを取り出す。

 槍の雨をかわしながら矢を放つが、琥珀の盾に防がれてしまう。


「私にばかり気を取られていていいのかな……?」

「!」

「アハハ」


 いつの間にか雷の精霊が接近して来ている!

 バチッとその指が弾ける。

 放電の前兆に、咄嗟に剣を鞘ごと放り投げた。

 稲妻が、剣に直撃する!

 その隙にバナナの森に逃げ込む。


「くっそ! 手も足も出ない!!」


 こんな時、拳銃ニューナンブがあればと思う。

 琥珀なんかぶち抜いてやるのに!


「かくれんぼが好きなら、そのままでいるといい……私は儀式を進めるだけだ……」


 天井から滴るように琥珀ごと降りて来るアルガス。


「儀式だと?」

「言っただろう……? ここは精霊と交信するための塔……もっとも精霊の力を高める場所……しかしそれでも、【呪い】は解けなかった……精霊を封じるほどの、あまりに強い【呪い】は、人間ごときにいくら移そうとも解けはしなかった……」

「だったらもうやめろ!!」

「いいや……【呪い】を移すのが不可能ならば、別のものを移せばいい」


 アルガスは、柱に埋まるゼフィーに近づいていく。


「彼女に何をする気だ!」

「だから儀式だよ……

 ()()()()()()()()()()

「なっ!?」

「高位の【水】使いは、樹液とも相性が良い……彼女が現れたのは僥倖だった」


 アルガスの手には【精霊琥珀】。

 それが、ねじれるように形を変え、ゼフィーの口元へ……!


「やめろ!!!」



 飛び出した俺に、抱き着いて来たのは雷の精霊……!


「しまっ……!!」

「ジャマシチャダメ」


 全身に広がる電気ショック。

 断線する意識の中、ゼフィーの口に流し込まれる琥珀が見えた――

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