63・リバース・ガングレーナ
「でゃはははは!! セクタバ国宝のお通りやでーーー!!」
【酔歩する天災】ガングレーナは、金髪にバンダナを巻いた赤い目のトランジスタグラマーだった。
……今日び、トランジスタグラマーとか言うのかは知らない。
その全身至る所に、試験管のようなものが括りつけられているが、どうも全部酒が入っているらしい。
今もなんか一本ぐびっとやってたし。
そのせいかアルコール臭ぷんぷんの竜巻に乗って、ガングレーナは島に突っ込んで行く。
その正面に湖面から琥珀が盛り上がってトゲだらけの壁になっていく。
水中に隠されていたのだろう。
もし俺たちが先に進んでいたらと思うとゾッとする……。
「ういーっく! 無粋な壁なんかいらんねん!!」
俺たちは下手に近づけずに、ただ見ている。
声は暴風の中でもクリアに聞こえて来るので、そういうスキルなのかもしれない。
竜巻の方向が縦に変わり、その中で浮かぶガングレーナが両腕をクロスした。
「【十字嵐】!!」
すると、正面の壁に向かって、左右から竜巻が襲い掛かり、琥珀の壁を粉々に吹き砕く!
ファルケファルケとも比肩する凄まじい規模の威力だ。
国を落とせるほどの力。
ゆえに【国宝】。
誉れという枷でしか縛れない者たち。
国の誇り――
「にぃやはははは!! はははは!! おぶっ、おふぇ~~!! おろろろろろろろろろろろろ!!」
が、めっちゃ吐いてる……。
空中から、だばだば流れ落ちていく……。
世界一汚い虹だ。
「おふっ、おふっ……ふぃー……」
吐瀉を終え、口元をハンカチでぬぐう【国宝】。
「よかったわぁ……誰にも見られてへんくて……」
「丸見えやがな!!」
「!!???」
「!!!!」
思わずツッコミをしてしまったゼフィーとガングレーナの目が合う。
気まずい時間が流れる……。
「……何で人がおるん……?」
「そんなこと言われましても……わたくしたちもあの島に用がありますし……」
「かなり危ないとこやでー……?」
さっきまで酔っぱらってはしゃいでいたのと同一人物とは思えないほど、おどおどした様子の女性がそこにはいた。
「ジブン、もしかしてシラフやと暴れられんタイプ?」
「な、なんのことかわからへん……」
「ちゅうか、セクタバの【国宝】はもっと前に島に乗り込んだみたいに聞いてたけどな……」
「……仕方ないやろ……途中で酒切れてもうたから引き返してたんや」
「おい、そんなことより敵が来てるぞ!!」
「はにゃーっ!?」
ガングレーナに向けて、琥珀の鳥が一斉に突っ込んでいく。
鋭利な刃物のように鋭い琥珀が組み合わせて作られた鳥だった。
「もー! もー!」
パニックを隠そうともせず、太ももから引き抜いた三本の試験管で酒を流し込むガングレーナ。
なんか半分泣いてないか?
【国宝】だよね!?
「……ってそんなすぐに酔えないよぉ!! もーっ!!」
泣きながら、両手から竜巻をぶっ放す。
ゼフィーの水流は難なく泳ぎ切って来た琥珀の魚たちよりおそらくは強力であろうそれが、あっという間に粉々になっていく。
「……酒飲む必要あるんか?」
ゼフィーのつぶやきに、俺もジゼロジゼロも頷く。
「悪いけど、この間に先に進ませてもらおうか……」
「せやな……」
琥珀の迎撃はガングレーナに任せ、俺たちはボートを進ませた。
そして、島に上陸した時、その異常さに気づいた。
「琥珀に飲まれている……!!」
遠くからだと緑も見えていた島だが、その半分以上が琥珀に包まれ、飴細工のように歪んだ異形を見せていた。
そして、その琥珀の中に、たくさんの人間が浮かんでいた……。




