表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
58/74

58・ポンコツと秘宝

 あれだけ殺す気満々だったファルケファルケが、ジゼロジゼロの一言で急に止まった。


「……」

「何だその目は」

「い、いや、人域の守護者なのに、そんなあっさり……」

「はっはっはっ何を言う。ジゼロジゼロは世界より大事だ」


 目がマジだ。

 コイツがセカイ系の主人公なら世界は滅ぶだろう。

 ……今後、ジゼロジゼロが人質に取られないように気を付けないと、容易に世界のバランスが崩壊する……。


「お姉様、わかってくださったのね」


 ジゼロジゼロは感動しているが、あれはわかったんじゃないぞ。

 最初から人生の優先順位を決めていて、それに従っただけだ。

 何も考えてないのと同じだぞ。


「怖すぎておしっこ漏れると思ったじゃなぁい!! ほんっっっとびっくりハテナ!!」


 一方の火竜公主は氷の鎖に捕らえられたまま、ガタガタと震えていた。

 もう言葉のどこにも威厳などありはしない。

 だが、そんなことより――


「もうやめないか」

「何をよぅ」

「俺たちが戦う意味はないだろ?」

「そんなことない……! だって、わえはドラゴンだし……」

「ドラゴンは人型じゃないだろ?」

「そ、そうとは限らないかもじゃない!」


 自信のなさが声から伝わってくる。

 やはり、本人も気づいてたのだ。


「なぁ、本当にスパルネの記憶はないのか?」

「誰それ? 知らない」

「だけどさっき、びっくりハテナって言っただろ?」

「言ったっけ……?」

「あれはスパルネの口癖だ。だから、お前がどう言おうが、彼女の記憶はあるはずなんだ」

「知らない……知らないよそんなこと!! ああああ……!!」


 火竜公主は、眉をしかめて呻きだした。

 氷の鎖を引きちぎり、頭を押さえる。


「頭が痛ぁい!!」

「な、なんだ、大丈夫か!?」

「わかんない! 思い出そうとすると頭が痛むのよぉ!!」

「……スパルネ」

「その名で呼ぶな! 余計頭が痛くなる……」


 どうすればいい?

 俺はどうすればスパルネを助けられる?


「ここで押し問答をしていても解決せんようだな。ならば、連行するしかあるまい」

「……!」


 ファルケファルケの言葉は正しい。

 この場でどうにか出来るような問題ではないのは確かなのだ。

 仮に記憶が戻っても、竜が混じった体をどうにかする方法なんて思いもつかない。

 だが、連行されれば、拷問や解剖されないとは言い切れない。

 ドラゴンの侵攻というのは、それほどに重い。

 人域など容易く踏みつぶせるほどの生物なのだから……。


「お姉様、なんとかなりませんの? スパルネさんを元に戻すことは……」

「ごめんな……可愛いジゼロジゼロ。こんなケースは聞いたことが無い。回復のスキルですらおそらく戻せはすまい」

「そんな……」

「だから悪いがわれが預からせてもらう」

「ダメじゃ」


 パコニカの声が響いたかと思ったら、辺りに霧が漂い始めた。

 視界が急速に奪われて行く。


「何者だ!!」


 ファルケファルケが戦闘のスイッチを入れる。

 その周囲に無数の氷の刃を浮かべているが、霧越しにうっすら見えた。


「待ってくれ! 今のは仲間の声だ!」

「何?」


 そういえば、戦闘の途中からパコニカの姿を見ていない。

 まるで、ファルケファルケから身を隠したように――


「仲間……と呼べるかは微妙じゃが今のところ敵ではないのは確かじゃ」

「パコニカさん! どうしたんですの? この霧はあなたのスキルですの?」

「左様。雨も霧も大した違いはない」


 霧はどんどん濃くなり、火竜公主の姿をもかき消していく。


「えっえっえっ、あっ」


 完全に消える刹那、パコニカの影が見えた気がした。


「何をするつもりだパコニカ!」

「この嬢ちゃんはわしが預かる」

「何でだ!」

「わかっておろうに。王都に連れて行かれれば、どんな扱いをされるかな」

「それは……」


 実際、想像はした。

 したし、否定も出来ないのだ。


「じゃからわしに任せよ。治せる術はわからぬが、匿ってやることくらいは出来るでな……」

「わからんな。お前が誰だかは知らんが、なぜそこまでする?」

「これはこれは【国宝】。お初にお目にかかる……いや、霧で見えぬかな。わしはパコニカ・ルーフェランドゥー。ダンジョン考古学者じゃよ。……で、わしがこの娘を助ける理由じゃが……わしにもわからん」

「何?」

「別段、わしにメリットはないが……まぁ強いて言えば、白竜幕府にでも行かれたらことじゃしな」

「白竜幕府? 何だそれは」


 そうか、ファルケファルケは侵深偵団だと聞いて追って来たはずだ。

 ドラゴンが攻めて来ていることは知らないのだ。


「それは後で小僧に聞くとよい。とにかく、この娘はわしが預かる」

「でも、それじゃ解決にはならないだろ」

「【精霊琥珀】を探せ」

「!?」

「なんですのそれは!?」

「精霊を閉じ込めたとされる秘宝じゃ。かくなる上は精霊に頼み込むほかあるまいよ。ゆえに可能性があるとすればそれだけじゃ」

「それはどこにあるんだ!?」

「知らぬ……じゃが、【国宝防険者】なら心当たりくらいはあるのではないか? それではわしは先に行かせてもらうぞ」

「あっ、待ってくれ!!」

「悪いがこの霧もいつまでも持たんのでな……さらばじゃ」


 霧と共に、パコニカは去った。

 スパルネ――火竜公主を連れて。


「食えない奴だ。可愛い声をして老獪なものを感じさせる手合いだったな」


 戦闘態勢を解いたファルケファルケの周りの氷の刃が溶け、水となって滴り落ちる。


「あの、お姉様? お姉様は【精霊琥珀】のありかを知っているんですの?」

「……本当は国家機密なのだが……」


 おい。それ大丈夫なのか。

 いや、大丈夫じゃないよな!?

 妹最優先にもほどがあるぞ!?


「【堕ちた国宝】精霊騎士アルガスが持ったまま姿をくらましている」

「!!!???」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ