53・スパイラルお嬢様
スパルネが腹の中……!?
「食ったのかスパルネを……!!」
はらわたのマグマが、両手に黒い【死】を溢れさせる。
「落ち着け。ドラゴンはスキルが使える人間以外唯一の種族と言われておるがその実異なる。雷を放つのも生体の能力に過ぎぬ。骨を操るのは白骨公主のみの力じゃがな」
「それがどうしたんだ!」
「やつらはより大きな力を欲して、人のスキルを得ようとしておる」
「!」
「人域を侵すなど、誇り高き他のドラゴン連中が怒る可能性が高い。やつらとしても戦力増強は必須なのじゃ」
「だから食うのか……!」
そんなの、どうやって落ち着ける……!
「生け捕りにしておるのじゃから、死体からは奪えぬということ。ならば、噛み砕くとも考えにくい。体に馴染ませるための時間がいるように思える」
「!」
「丸のみにしてるってことですのね! じゃあ――」
「うむ。まだチャンスはあるはずじゃ」
「ありがとう! 希望が湧いた……!!」
落ち着いたせいか【死】が両手から掻き消えていく。
「キーキー騒いでおるとは余裕よのう」
声を標的にしたのか、雲を突き破って骨の槍が次々突っ込んで来る。
爆撃にも等しいその攻撃で空いた隙間に、稲妻が貫く。
幸い、ドラゴンの身長のために角度がついた雷は、俺より高く生成したバナナの木に落ちていく。
「くそっ!」
こんなのはただその場しのぎに過ぎない。
いつかじり貧になる。
なにしろ、ドラゴンは角から【万気】をチャージできるのだから、いずれエレベーター前を薙ぎ払ったあの稲妻を撃ってくる可能性が高い。
【死】は一撃必殺だが、当てるにはもっと近づくしかない。
だが、暴れ回る骨槍の勢いが凄まじく、下手に近づけない。
公主に近づけば丸見えになる。
そうなればハチの巣だろう。
「どうにか近づけないか……」
「それでしたら、いい手がありますわよ」
自信満々に微笑むジゼロジゼロ。
猛烈に嫌な予感がする……!
「パワーアップしたのはジーロだけではありませんよ。わたくしも、修業場でスキルの神髄を掴みましたの。ふんすふんす」
「なんだって!?」
修業場では、岩の重さでまともに動けていなかったはずだが……たしか終わった後、何かを得た顔をしていた。
天才はちょっとしたきっかけで閃いたりするものだ。
あのファルケファルケの妹である彼女も、天賦の才に恵まれているのかも……。
「ご覧くださいまし! わたくしの新たなるスキルを!!」
ジゼロジゼロの両手が輝く。
「ほほ。何を企もうと無駄なこと」
雲の向こうからわかるほど、角に溜まった電撃の光が漏れて来る。
積乱雲並みの電力が集中している……!
「まずい! 丸ごと薙ぎ払うつもりだ!」
「わたくしに掴まり遊ばせ!!」
瞬間、膨大な稲妻の奔流で、視界が埋め尽くされる。
「ほほほ! 黒焦げじゃな! ……おっと、それではスキルを回収できぬか。失敗失敗……白竜帝さま、お怒りになるやもしれんのう……それは困るのう……」
「その心配は、いりませんわ!!」
「なっ……!?」
地面を突き破って、ジゼロジゼロと俺たちが飛び出す。
真下近くの地面から現れた俺たちに狼狽える公主。
「ぬしら、どうやって!?」
ジゼロジゼロの両手には、巨大な三角の螺旋。
すなわち――
「【ドリル】万歳ですわ!!」
それは、ジゼロジゼロのロール髪が腕に巻き付いて形成されたドリルだった。
このドリルによって、地面に潜って雷をかわしたのだ。
あまりに強力な稲妻だったので、穴の中にすら光は届いたので目がくらんだが、幸い電流までは届かなかった。
っていうか、修業場と関係ない!
入り口の土壁突破の時からの着想じゃん!!
「ドリル!? なんじゃそれは!!??」
「大地のパワーですわ!!」
多分違う!
だが本人がそう思い込んでいるならいいや!
それでスキルを発現させるのは凄いし!!
「おかげで懐に入り込めた!!」
「なっ!?」
俺の両手から【死】が溢れ出す。
「悪いが、スパルネの命がかかってるんでな!! 一撃で決めさせてもらう!!」
公主の腹に向かい、俺は両手を突き出した――




