5・ゴブリンランナー
「よし、まけたか……」
だが、旅の準備が必要なので、街を大回りして反対から入ったため、最悪、普通にスパルネたちに出くわしてしまう可能性がある。
「さっさと済ませないと……」
近隣でもっとも大きいため、街、街と呼称されるが、正確にはセンテールという。
ファスティバ王国の首都に次ぐ第二都市。
大風車が有名で、風車の街とも言われる、都市でありながらどこか牧歌的な街でもある。
この世界は、水が不足することがないため、戦争というものは稀だ。
都市というのは、地球の歴史を見ていくと、脅威に対して集団的に身を守るために生まれることが多い。
本来、科学レベルが一定を超えない限り、都市の方が面倒が多いからだ。
そのため、戦争が稀なこの世界では都市の人口はそう多くない。
必然、欲しい装備というのは、なかなか揃わない。
あちこち回っているうちに、時間を取られてしまった。
「日が傾く前に向かいたいが……」
転生前の知識のせいで、周りと話が合わず、独り言が癖になってしまった……。
それはさておき、日が落ちると何が危険かと言えば魔物だ。
「まぁ、大丈夫か。途中まで乗合馬車だし」
その考えは甘かった。
「魔物だーーー!!」
街と地方を繋ぐ乗合馬車の客室でうとうとしていると、御者の叫び声で目が覚めた。
他には農家のおばさんと、5,6歳の娘が乗っている。
車内に悲鳴が上がるのと同時に、幌から身を乗り出す。
「!」
見えたのは、キノコとダチョウを混ぜたような怪物だった。
それが3匹、馬車と並走している。
「ゴブリンランナーか!」
ゴブリンは、この世界ではキノコの化け物の総称だ。
目や口手足もあるが知性あるキノコである。
そのため、どこからでも湧き出す厄介な生物だ。
中でもゴブリンランナーは珍しいが――
「振り切れそうですか!?」
「やってみる……!」
髭面の御者はベテランに見えるが、そのベテランが断定出来ないということは、まずいってことだ。
ゴブリンランナー――いわゆるゴブランは菌類最速。
すぐに馬車に取りついてきた。
「キャーッ!!」
幌が揺れて、破れ、女の子が金切声を上げる。
だが、俺も準備は出来ている。
腰から剣を引き抜き、破れた穴から取りついたゴブラン腕を切り払う。
ピギーと、叫ぶ声と共に、ゴブランの一匹が転がり落ちていく。
「1!」
穴から覗くと、一匹が御者台に掴みかかろうとしていた。
「まずい!」
そう思ったが、御者のおじさんが【火】のスキルでゴブランの顔面を焼いていた。
焼きシイタケのような匂いをまき散らしながら、そのゴブランもすっ転んでいく。
あと一匹、と思ったが、背後に回ってきたゴブランを、おばちゃんが【風】のスキルで吹っ飛ばしているところだった。
大人は何かしらのスキルを持っているから、こういうこともある。
……うん。
1! とか言わなきゃ良かった……。




