4・追放阻止突破
「どういうことだい! ジーロ!!」
スパルネを振り切ろうとしたとき、回り込むように銀髪長身のモデル体型の男が現れた。
最低限の装備から、細マッチョな筋肉が見えている。
「ソルダ!」
スパルネのその言葉通り、パーティーのリーダーにして、同年代最大のホープ・ソルダだ。
そういえば言っていなかったが、ジーロは俺の名前だ。
「勝手にパーティーを抜けようなんて、勝手にもほどがあるじゃないか。そんなことは許されないよ」
「いや、もういいんだってば! これが小説なら、はよ迷宮に潜れやとか思われてる頃なんだから!!」
別に誰に言われているわけじゃないが、ラノベ愛読者としての自分がそう叫んでいるのだ。
「混乱しているようだが、広い世界に飛び出すことへの恐れから、スキル授与前に逃げ出そうとする者は稀にいると聞く。だが、恐れることはない。天に選ばれた僕に従えばいいのだ」
うーん、ソルダはちょっと鼻もちならないところはあるが、悪い奴ではないのだ。
うまいこと立ち回らないと追放されないかもとは思っていたが、意外と面倒見がいい!
「言い方はともかく、言う通りだと思うよ……? もどろ?」
「うおっ、カペローラもいたのか!?」
ソルダの後ろには、緑髪に瓶底眼鏡の少女・カペローラもいた。
自己主張は強くないが、彼女もまた有望株であり、パーティーの一員だった。
彼女は彼女で、競泳水着のような服装だが、もうこれはこの世界の文化なので仕方ない。多様性だ。
「ほら! みんなもこう言ってるし、早くスキル受け取りなさいってば!」
我が意を得たりとスパルネが間合いを詰めてくる。
まずいな、挟まれた。
「悪いとは思ってるけど、俺のことは忘れてくれ!」
フェイントをかけてスパルネの脇を抜けようとした瞬間、足を掴まれるような感覚に襲われた。
「そうはいかない! 華麗なる【フロストバインド】!!」
「くっ! 【氷】のスキルか!!」
ソルダは案の定レアスキルを授かっており、霜によって俺の靴と地面を縫い付けていた。
まるで、3Dプリンタのサポート材のように、足に絡みつく霜。
水・炎・風は基礎属性だが、氷や雷は希少属性であり、それに属するスキルはレアスキルとして珍重される。
だが、やりようはある!
「だりゃっ!」
腰から、【剣】を引き抜き、氷を払う。
「なんだいそれは!?」
「あ、あんた、そんなマグロ包丁持ち歩くなんて危なすぎるでしょ!!」
「ひ、ひぇえええ!!!」
驚愕する一同。
そう、この世界に【剣】は存在しない。
スキルが当たり前にある世界において、武器は進歩しなかったのだ。
わざわざコストをかけて武器を作るより、手から火を出した方が早いのだから当然ではある。
だから、これも料理道具として特注したものだ。
だって、外れスキルもらうつもりだったしね!
戦闘用に武器は必須だ。
「そ、そんなものがスキルの代用になるはずもない。愚かな真似はやめて、大人になり給え」
悪いが二度目の人生なんでね。
精神的には大人なんだよ。
いや、大人は外れスキルなんか欲しがらないか……。
「愚かなのは自覚してる。だから、俺なんかほっといてくれていいんだ」
「逃がすかこの唐変木!!」
スパルネが炎の妖精を飛ばしてくる。
唐変木の語源は唐から来た変な木だからこの世界にあるはずはないが、うまい具合に翻訳していると思ってくれたまえ。
「ていっ!」
腰だめに左手で【水鉄砲】を放ち、炎の妖精に当てる。
これは前述の【基礎スキル】で、この世界で物心ついたものならば誰でも使うことが出来るものだ。
厳密には、ステータスを表示する【水鏡】と、指から少量の水を出す【水召喚】の2種が【基礎スキル】である。
おかげで、この世界のトイレ事情はすこぶる良い。
この【水召喚】を独自にアレンジしたものが【水鉄砲】なのだが、それが当たった炎の妖精は一瞬ひるんだ。
「くっ、相変わらず何て早撃ちなの!?」
西部劇の見様見真似だが、この世界の人間がよくやるただの指差しとは、速さも命中率も段違いなのだ。
この隙に剣を納め、スパルネをかわしたのだが、背後から霜を踏み砕くような足音が響く。
「やるね。だが、天才たる僕には通じない。行け! 輝ける【アイスウルフ】!!」
氷の彫刻で作られた狼が、後を追ってきていた。
氷に水を掛けたところで意味はない。
だから、ソルダは自信満々なのだ。
が、別にスキルである必要はない。
背中に隠していた自作の折り畳み式のクロスボウを抜き、アイスウルフに矢を放つ。
「しゅっ!」
高校時代弓道部だったという昔取った杵柄のおかげで、見事にアイスウルフの脳天に矢が突き刺さる。
「はぁ!?」
頭から砕けるアイスウルフに、ソルダは顎が外れんばかりに顔を歪める。
そう、この世界には弓矢も存在しない。
手から火を飛ばせば以下略。
一同再び驚愕し、カペローラも何かスキルを使おうとしていたが、「はわわわ」と驚いて何もできていない。
これ幸いにと、俺は街道を駆け出した。
外れスキル授与後のために鍛えていた健脚に、追いつける者はいない。
スパルネが追いかけて来ていたが、ついに諦め、怒りを込めて叫んだ。
「待ちなさいよーーー!! 一人旅なんて魔物が出たらどうするつもりなのよーーー!! ばかーーーーーー!!」




