表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
49/72

49・理から外れたスキルと世界の理

 震えが止まらない。

 死の恐怖からじゃない。

 それは経験済みのことだ。

 初めて程の怖さはない。

 そうではなくて、自分のスキルへの恐怖だ。


「……こんな……こんなの……」


 おそろしい。

 恐ろしすぎる。

 殺傷するのではない。

 死という概念を押し付ける。

 壊れることはあっても、死なないはずのカカシが死んだ。

 死の押し付け。

 その対象に、死の起源を与える力。

 感覚としてなんとなくわかる。

 これは、起源的に石は殺せない。

 だが、きっと動くものなら問答無用で殺せてしまう。

 動物はもちろん、かりそめの命まで殺せてしまう。

 かつて死のなかった人間のように。

 動けど死なぬものを殺すためのスキル。

 新たなルールを生み出し、強制する力。

 それはまるで――


「ジーロ、顔が真っ青ですわよ……?」

「あ……う……うん」


 何が外れスキルだ。

 外れているのは、この世のルールからだ。

 だからか。

 

 だから転生者じゃないといけなかったのか。


 この世ならざる力は、この世ならざる者に。

 死の力は死した者に。


 異邦の死者のみが扱えるスキル。


「……ようわかった。外れ大迷宮は何のためにあるのか。

 すべては、小僧のためだったというわけじゃ」


 ……同感だ。

 俺のくそったれな前世すら、そのために。

 トラウマもドロドロした感情も、全てが燃料となる。

 ああ、【神の嫌がらせ】とは、なんて気の利いた名前だ。


「これにて修業は終わりです♡」


 慇懃無礼なまでににこやかなバトラーの言葉に、体から力が抜ける。

 同時に、サバゲーフィールドが何もない真っ白な部屋に置き換わる。


「はぁ~良かったですわ。死ぬかと思いました……」

「本来、スキルとはそのくらいのことがなければ、進化しないものです。普通は性能は変わらず、使い手の精度が上がるのが関の山なのですから」

「確かに、お姉さまも「10や20死にかけて一人前だ」と言っておりましたわ」


 それは極端な気がするけども。

 だが、だからこそあの若さで国宝になれたのだろう。


「役目を終えたここやおぬしは消えるのかえ?」

「いいえ。ここは新たなセーフゾーンとなります」

「え? 新たなって?」

「ええ、地下2階まで、完全に敵の手に落ちましたから」

「!?」


 うすうす感じていたとはいえ、事実を明示されるとショックだ。


「どうして精霊はそんなことになるまで放置していたの?」

()()()()()()()()()()()


 それは予想通りではある。


「それはいつからなんじゃ? 奴らが入り込んだのはこの数日ではなかろう」

「!」

「……と言うと、小僧がわしを疑いそうじゃがな。わしとてずっと潜っておったわけではないし、爬虫類どもが温泉に浸かるはずもなし。あやつらは火山にしか用がないでな」


 調査を続けていたパコニカとトカゲ人間たちが出会っていないというのは不自然だから、どこかで問いたださなければならないことではあった。

 それをパコニカが自覚していないわけもないので、改めてここで自分から言ったのだろう。


「一応、筋は通ってるね……」

「彼らがいつ現れたのかは私にもわかりかねますね。基本的に生成元のジーロ様の知識と、あらかじめ想定された内容しか知りませんので」

「もー、【時空】の精霊様がついていらっしゃるのに、融通が利きませんわね」

「言えとるわい」

「まぁ、あの方だけは、世界をまたがって存在しておりますから。いち世界のためだけに労力は使えないということでございましょう。あっはっはっ」


 コイツ……!


「他の精霊のみなさまは、世界の維持で手一杯。この迷宮の運営もぎりぎりなんとかというありさまですので。より正確に言えば、この迷宮を作った時点で、もう力を失っていたということです」


 ぶん殴りたくなる寸前で、きちんと情報を出して来るところまで含めていい性格してるよほんと。


「だからこそ、ジーロ様をお待ちしていたのですよ」

「自分たちに余裕がないから、人間に解決させるってことだね……」

「他力本願ですわね~」

「まぁまぁ、そうおっしゃらず。みなさまが【気珠】を手に出来るのも精霊のみなさまのおかげなのですし」

「そうなんですの!?」


 確かに聞いたことがない。

 あれは自然現象なのではないのか?


「ああ。これは秘密でした。忘れて下さい」

「そんなものが通るわけなかろう! 説明せよ!」

「まぁ、秘密にしているのは各国の上層部だけですので、私や精霊のみなさまはどっちでもいいのですけどね」

「お前、何でもありだな……」

「素が出ておりますよジーロ様」

「うるせっ!」

「これ以上怒られてももあれですから、全部喋っちゃいますが――」

「おい! 国家機密なんだろ!? 大丈夫なのか!?」


 こっちの制止などどこ吹く風。


「気珠とは()()()()()()()。ゆえにスキル神殿で消費されるものですが……」

「!?」


 一同、驚愕する。

 気珠の使い道は、基本的には秘されている。

 防協が集めるので、防険者にとっては通貨と変わらない。

 ただ、集めたあとにどうしているかは謎なのだ。

 噂では国家間で使用する通貨であるとか言われ、実際に運搬されている目撃例などもあったが……。

 その目的ならば、それも嘘ではないとも言えるだろう。

 国家間の戦力の均衡にもつながる情報だ。

 そりゃあ、国家も秘するわ。


「赤い気珠は神が用意したもの。しかしそれでは足りないので、()()()()()()()()()()()青い気珠……」

「待て待て待て待てぇ!!!」


 下手くそな作家が書いた小説の設定垂れ流しパートじゃねえんだぞ!!

 そんな一気に重大情報をぺらぺら喋って、本当に大丈夫なのか!?

 だって、それは――


「それではまるで、魔物を用意したのが神様や精霊様だと聞こえますわ……?」

「はい、()()()()♡」

「!!??」

「っていうかそりゃそうでしょう。創造神なのだから魔物も作ってなきゃおかしな話です」

「ま、まぁ、それはそうなんだけど……」


 地球でも、創造神と悪魔の関係とか、説明がつかなくてデリケートな話だ。

 神が世界を作ったのだから、悪魔も作っていないとおかしい。

 神が完璧ならば、天使が堕天使になるはずがない。

 悪魔が人間を苦しめるのなら、それは神が人間を苦しめていることになる。

 そんなの、誰でも一度は考える。

 だが、完全に説明できているとは言い難く、そこに触れなくなっていく。

 こっちの世界でも、魔物は神話に出てこない謎の存在ということになっている。


「ま、魔物という敵がおるから人間同士殺し合わずに済む。神の慈悲とも言えるの」


 それはある。

 地球がまさにそれだった。

 おそらく神の意図としてはそれが全てで、そうなるとミクロな視点では神が人を苦しめているとも言えるから、国家や宗教家もそれを主張できないのだろう。

 ……あれ?

 でも、一つ気になることがあったぞ。


「赤の気珠が神、青が精霊によるものなら……紫の気珠は何なの?」

()()()()()()()気珠ですね。ほら砂漠に魚とか、キメラとか、まともでは無いものばかりが持っていたでしょう?」


 そうだ。これまで赤と青の気珠しか確認されていなかったのだ。

 外部要因なのは納得できる。


「そうか……トカゲ人間たちのせいだったんだなあれは」

「いえ、()()()()()()()()()()()()?」

「はぁ!!!???」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ