47・【バナナ型神話】
バナナの森の影に潜み、背後から敵部隊を強襲する。
相手は特殊部隊に酷似した姿をしているが、中身はカカシだ。
矢がその背に突き立つと、糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちる。
その相方であろうもう一人が銃を乱射するが、バナナの幹に当たってピンク色の樹液を飛ばすばかりだ。
なお、バナナの樹液は服につくと落ちないので注意が必要だ。
あと物凄くねばねばする。
返り血ならぬ返り樹液が顔にかかり、一瞬怯んだところに矢を撃ち込む。
これで2。残り6。
行けるか、そう思った瞬間、頬を熱気が撫でて行った。
「火炎放射器か!」
敵部隊が、火炎放射でバナナの木を焼き払い始めた。
仕掛け的には【炎】のスキルを照射しているのだろうが、使い勝手はほとんど同じだろう。
ただ水分を多く含むので、燃料の噴きつけを行っていない純粋な炎であるぶん、一度に焼け落ちるほどではない。
とはいえ、あんなもの当たったらおしまいだ。
どうする。どうする。
これまで対魔物用の切り札はいくつか用意してきていた。
原始的な火薬だとかも、用意はしていたのだ。
使いたくはないが、毒の類も一応はあった。
しかしこれまでの大迷宮でも使う機会はなく、この相手にも効果は薄いか無いものばかり。
銃相手では剣道の技でどうこうするのも難しい。
スキルだ。
スキルしかない。
どう工夫する。
バナナの木は生やし続けることは出来るが、居場所を教えるようなものだ。
【バナナ型神話】。
何か他の使い道はないのか。
何か。何か。何か……!!
「小僧何をしておる!! 敵がジゼロジゼロに向かっておるぞ!!」
「!!」
視野が狭くなっていた!!
ジゼロジゼロはバナナの森で覆っていたが、居場所は最初からバレているのだ。
そして大理石に雷弾が効かなくても、火炎放射は中の人間を蒸し焼きに出来る。
あるいは顔に当たろうものなら――
「俺のバカ野郎!!」
「きゃーっですわーっ!?」
じたばた足を動かすジゼロジゼロの元に駆ける。
見つかるかどうかなど考えていられない。
敵三体が火炎放射器を持ったまま、ジゼロジゼロににじり寄っている。
「ジゼロジゼロ!! 纏ってる岩を全方位にバラまけ!!」
「そんなことしたらジーロにも当たるかもですわ!!」
「いいからやれーーーーーーっ!!」
「……わかりましたわ! やーっ!!」
瞬間、ジゼロジゼロの全身を覆っていた大理石が石礫となって敵を弾き飛ばす。
爆発にも似たそれは、小石の群れとなって俺の方にも飛んでくる。
「ぐっ、うっ!!」
半身になって重要箇所を手でかばうも、あちこちに石が当たり激痛が走る。
しかもそばのバナナの木や遮蔽物まで破損し、視界が開けてしまっている。
残る敵三体が、飛び出した形になった俺に銃を向けた。
弓に番える暇もなく、矢を素手で投げつける。
それが運よく一体に当たるも、他の二体が引き金を引き、銃を乱射した。
「ぐおっ!?」
太ももに熱さを感じる。
衝撃でひっくり返りそうになるがその勢いで転がり、銃撃をかわす。
だが、そのまま逃げてしまうとジゼロジゼロが狙われてしまう。
何とか立ち上がって突っ込んで行く。
剣を引き抜く。
もう何発かは食らう覚悟だ。
唯一の希望は、敵は本物の軍人ではなくカカシだということで、エイムは正確ではないし動作もぎこちない。
そのワンチャンに懸けて突っ込むと、幸運が味方した。
カカシの一体が、スッ転んだのだ。
「!?」
吹っ飛んで潰れたバナナの果実を踏んづけ、滑ったのだ。
それに引っかかる形で、もう一体の進行が止まる。
その隙に飛び掛かる。
「うあああああっ!!」
剣を叩き込み一体の頭をカチ割ると、倒れたもう一体に剣を突き入れる。
「勝った……」
そう気を抜いたのが、油断だった。
先ほど素手で矢を投げつけたカカシが、まだ動いていたのだ。
それは引き金を引き――
「がっ」
俺の胸に熱い衝撃が走った――




