36・外れ大迷宮の謎
戦闘は終わった。
無理を押したソルダによりスライムも大蛇も凍りつく一方、それらを操っていたと思しき亀人間もジゼロジゼロに倒されたからだ。
なんとか生きていた亀人間は合流したダンバドが尋問している。
彼はファルケファルケのお目付けだが、本職は公安騎士だそうだ。
公安騎士は元老院直属の騎士で、治安維持などを目的とする。
「新米には見せられない尋問」をするそうで、神殿の奥に消えてしまった。
スパルネのことは心配だが、任せるしかない。
一方、ファルケファルケは神殿の野戦病院で治療を受けている。
ジゼロジゼロは姉のぼろぼろな姿に大泣きしていたが、手伝うだけの余力が無く、治療の邪魔なので無理やり引き離した。
ソルダもベッドに逆戻りになり、同じく引き離されたカペローラを加え、現状の情報をすり合わせることにした。
「……で、いったい何があったの?」
「わたくしたちにもよくわからないんですの。突然、魔物の群れが神殿に襲い掛かって来て……」
「【千魔夜行】って、夜にしか来ないんじゃないの? しかも二度も来るなんて、本当に死ぬかと思った……」
「なるほど……」
この二度の襲撃が人為的なのは間違いない。
だが、目的が読めない。
最初はファルケファルケを釣り出すためだと思っていた。
だが、二度目の襲撃は、彼女を狙ってのものではない。
とすれば――
「【国宝防険者】のファルケファルケさんを足止めして、神殿を破壊するのが目的だった……?」
「ど、どういうことですの?」
「おかしいよ。一回目は神殿は襲われてないんだし。スキル神殿は首都方面にもあるし、他の国にもあるんだよ?」
「た、たしかに! そうですわ!」
ジゼロジゼロ、実は何も考えてないのでは。
リアクション専門になっている。
「……【神の嫌がらせ】?」
「あの大迷宮ですか?」
「もしかしたら、本命はあっちかもしれない」
「外れスキルしかもらえないのにですか?」
「……単純な外れスキルじゃないのかもしれない」
「ほあ?」
「いや、それより、問題は君やスパルネのスキルの方なんだ」
【大地母神】に【不死鳥】。
どちらもこの世界にない概念によるバグスキルだ。
国宝認定とまでは行かなくても、国宝級に比肩する強力なスキルだ。
「読めないスキルになってたやつですわよね?」
「迷宮の中で、未知の進化をしている。君も巨大化はできなかったんでしょ?」
「確かに!」
「授与されるスキル以外にも、「スキルを進化させる効果がある」のかも……」
「ええっ!?」
「もしそうなら、みんなそこに行ってると思うけど?」
今まで遠慮していた――というか、ソルダの前だから猫を被っていたんだろう。カペローラが強気だ。
スパルネとは違った意味でたまにトゲトゲしさがあるが、素なのか、単にソルダの件でまだ嫌われているかのどちらかだろう。
「確かにそうなんだけど……」
何かピースがハマりそうな感覚がある。
寂れていた神殿。
確かに、異常な難易度なのはある。
だが、道中で既にジゼロジゼロやスパルネは成長していた。
何かが噛み合っていない。
「ところで、スパルネさんはどうしたんですの? 【千魔夜行】はお姉さまが全滅させたのですよね?」
「あっ……!」
あまりにばたばたして失念していた。
……いや、半ば無意識的に言及出来なかったのかもしれない。
自分の弱さばかりが見えて来て嫌になる。
「……スパルネは……さらわれた」
「はぁ!?」
「どういうことですの!? どういうことですの!?」
「おそらくあの亀人間の仲間だと思うけど、トカゲ人間がいたんだ。そいつらが魔物の中に鳥籠のようなものを仕掛けていて……連れ去られてしまったんだ」
「な、何をおっしゃっているのかちんぷんかんぷんですわ……!」
「……全部繋がってるってことでしょ」
「そう。全部繋がって……ん?」
待てよ?
全部が繋がっているとすれば。
「俺たちが迷宮を攻略していたから、【千魔夜行】が起きた……?」
そう考えれば辻褄が合う。
入り口の足跡も、パコニカのものとは限らない。
そして、敵には姿を消す能力を、種族として備えている奴がいる……。
「あの、一人で納得されても困るんだけど」
「うん。突飛な想像なんだけど……」
カペローラが息を飲む。
ジゼロジゼロは、わかってないがわかったふりの顔をしている。
「たぶん【千魔夜行】は、【神の嫌がらせ】の存在をウヤムヤにするために引き起こされている」




