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35・雪原のやらかし

 ソルダの【氷】の力で、大蛇たちは樹氷めいた雪像となり、スライムたちは凍りついて死んでいく。

 周囲が吹雪で急速に雪景色に変わっていく。

 ソルダのスキルはこれほどの力だったのか!?

 いや、それより――


「大丈夫なのか!?」


 ソルダに駆け寄ると、未だ満身創痍のソルダを支えている影が見えた。


「大丈夫なわけないよ! でも言っても聞かないんだもん!」


 ソルダを脇から支えていたのはカペローラだった。

 そうか、この吹雪は彼女の【風】のスキルとの複合か!

 二人のスキルの相乗効果で、広範囲を覆えるのか!

 パーティーの約束をした仲だが、知らなかった。

 二人の秘密だったのだろう。


「……まだだ。ジゼロジゼロさんを助けなければ……」


 地表に吹雪は広がっているが、ジゼロジゼロはその巨大な身長と、戦闘に他者を巻き込まないようにだんだん神殿から離れて行っているために、効果範囲に入っていない。


「もういいよ! 無理だって!」

「僕のスキルなら……取りついたスライムを……」

「もうやめてよ! ついさっきまで、意識もなかったんだよ!?」

「僕は……恩を……」


 ああ、ソルダ。

 お前は凄い奴だ。

 自分のことしか考えていなかった俺なんかと違う、本物の勇者だ。

 俺はいま、恥ずかしい。

 

「無理をするな。俺が行く」

「ジーロ!」

「君か……」

「だから、休んでいてくれ」


 返事は聞かず、火矢を準備しながらジゼロジゼロに近づいていく。

 矢じりに油を染み込ませた布を巻いた単純な作りだ。

 火打石は流石にこの世界にもある。

 全員が【火】スキルを使えるわけではないからだ。

 この世界に来て初めて知ったが、火打石とは金属片にその石を打ちつけて火花を出すので、火打石だけでは着火できない。

 その火打石を使って矢に着火。

 面倒なので、まとめて数本の矢に火をつける。


「よし……!」


 直接、ジゼロジゼロの体に群がるスライムを狙うのは危険すぎるので、まずは足元のスライムに火矢を放つ。

 パスパスと気持ちがいいほど簡単にスライムに矢が突き立っていく。

 一気に火だるまということはないが、スライムに引きはがすすべはロクにないので、暴れ回るしかない。

 正面に居る奴らはこれで排除し、道が出来る。


「ジゼロジゼローーーーーーっ!!」


 叫びながら突っ込んで行く。


「えっ? ジーロですの? どこどこどこですの!?」


 ようやく、声がジゼロジゼロに届いた。

 が、デカすぎるせいか足元付近にいる俺に気づいていない。

 灯台並のサイズの人間なので、灯台下暗しすぎる。


「足元だよ!」

「あっ、ほんとですの! このねちょねちょなんとかして頂けません?」


 顔に張り付こうとするスライムを引きはがそうと苦労しているようだ。

 だが、その身長では助けることも出来ない。

 お台場の某像によじ登れと言われても無理なのがわかるだろう。


「スキルを解除して! その方がみんなで援護できる!」

「それが出来ないんですの! たぶんお腹がすくまで戻れないんですの!」

「まじかー」


 慣れていないからか、それとも元々ピーキーなスキルなのかはわからないが、巨大になりすぎるとデメリットが様々あるようだ。

 じゃあかがんで、と言おうとしたとき、視界の端にローブの人影が見えた。

 それは、明らかに弓を構えていた。


「!」



 この世界に弓はないはずだ。

 発明したのか?

 明らかにジゼロジゼロに向いているが、援護のためか?


「……違う!」


 スライムにただの矢は効果が薄い。

 それに外したらジゼロジゼロに当たってしまう。

 弓術自体が存在しないこの世界で、そこまで正確な腕を持っている人間がいるはずがない。

 よくよく見れば、妙にぎこちない動きで狙いをつけようとしているのがおかしい。


「止まれーーーーーー!!!」


 警察官の時の癖が抜けきれず、人影の足元に矢を打ち込み、威嚇する。

 人影はローブのフードで顔は見えないが、驚いているのがわかる。

 その驚きは、矢が飛んできたことへの驚きか。

 それとも、自分以外に弓矢を知る者がいることへの驚きか。

 おそらくは後者。

 なぜなら、ジゼロジゼロを狙う動きを止めないからだ……!


「なら、容赦はしない!」


 こっちのクロスボウの方が速射性は高い。

 もたもたしている相手に、先んじて矢を放つ。


「!」

「は!?」


 ローブの人影は、何を思ったから背を向けた!

 そんなことをすれば、矢が刺さるだけ――


「あっ」


 なんと、矢が弾かれた。

 盾でも仕込んでいたか!

 広がってきた吹雪の勢いでローブがめくれ、その下の姿が露になった時、それは間違いだとわかった。

 見えたのは、甲羅……!?


「亀人間!?」


 ということは、スパルネをさらった奴の仲間だ!

 だったら――


「情報を吐かせる!!」


 一気に距離を詰めて、剣を引き抜く。

 今度はもう威嚇はしない。


「舐めるなよサルモドキ!」


 亀人間はしわがれた声で叫ぶとローブと弓を投げ捨て、両手を開いた。


「あやつに引けをとらぬ大蛇を召喚してくれるわ!!」


 亀人間の周囲に巨大な魔法陣が出現する。

 まずい!

 言葉通りなら、やばいものを召喚するつもりだ。

 発動前に止めるしかない!

 と、思った次の瞬間。


「敵ですわね! そりゃー!」

「あっ」


 亀人間に気づいたジゼロジゼロが、そのまま踏みつぶした――

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