31・陰謀のカメレオン
スパルネを閉じ込めたアバラが、上部の骨を回転して一気に浮上する。
「わああああああああっ!?」
「スパルネぇぇぇっ!?」
手を伸ばすがとても間に合わない!
「くそっ! この服さえ脱げれば……!」
「!」
この後、どうなってもいい!!
これしかない!!
「ファルケファルケさん! ごめんなさい!!」
俺は剣を構えてファルケファルケに突っ込んでいく。
「そういうことか! やれ!!」
「えええいっ!!!」
ファルケファルケのワンピースを切り裂く!
あらわになる、極端なハイレグと黒いタイツ。
直後、周囲の空気が薄くなったのかと思った。
周囲から、【万気】が一気に消えたのだ。
「妹のお友達を!! 連れて行かせるかああああああああああああああ!!」
背中から氷を一気に噴き出し、上空へ打ち上がっていく。
まるで巨大な凍れる滝を逆再生したかのようだ。
「スパルネを頼みます!」
「させるかよォ!!」
カメレオン男が、下を槍のように伸ばす。
あれが先ほど【氷壁】を破壊した槍の正体か!
「そりゃこっちのセリフだ」
その舌をダンバドのマグマ手刀が切り飛ばした。
「ゲギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!???」
痛みに絶叫するカメレオン男に、剣を構えて突っ込む。
「お前は許さん!!」
カメレオン男を袈裟懸けに斬りつける。
「ゲエッ!?」
仕留めるには至らず、距離を取ろうと後ろに飛ぶカメレオン男。
その頭を、ダンバドが掴んだ。
「姿は消したままにしておくんだったな」
赤熱化した手。カメレオンの頭がじゅうと音を立てる。
「ケヒャア……!」
「さぁ、吐いてもらおうかね。てめえは誰だ? そのトカゲ顔はいったい何だ?」
そうだ。
この世界に獣人がいるなんて聞いたことがない。
明らかに魔物と関係があるコイツはいったい何なんだ。
「ケヒ……ケヒヒ……知らねえな」
「そうかい。ステーキになりてえかい」
じゅうううう、と音がし、肉が焼ける音がした。
「ゲギャアアアアアアア!?」
「レア……ミディアム……ウェルダンまで行っとくか?」
「ケヒヒ……何でオレが姿を出したままだったと思う?」
「!」
言われてみれば、消えたままにも出来たはず。
わざわざ姿を現したのには意図があるはずだ。
「囮だよォ!! ケヒヒヒヒ……!!」
「何ぃ? じゃあ、アネさんは!」
ファルケファルケの飛んだ方に目を向けると、そこに先ほどまでなかった黒雲が沸き起こっていた。
ごろごろと雷が鳴り出している。
「おい嘘だろ! あれを【雷】のスキルで作ったのか!?」
ダンバドが驚くのも無理はない。
【雷】は希少属性だ。
掌から放電して攻撃する【電撃】などが代表的だ。
しかし、入道雲を作り出すほどの規模など聞いたことがない。
これではまるで――
「【国宝防険者】に匹敵する規模だぞ!!」
だが、ファルケファルケは構わずスパルネを捕らえた骨の鳥籠に突っ込んで行く。
無論、あれが国宝級スキルだと気づいているはずだ。
それでもひるまない。
虹のように空を駆ける氷のアーチ。
もはや助けるが早いか、スキルを食らうが早いかだ。
そして、一条の稲妻が、ファルケファルケを直撃した……。




