30・骨の鳥籠
ハエトリソウのように開いた巨大なアバラが背後からファルケファルケに迫る。
「危ない!」
たまたま見える位置にいたので真っ先に動けたのは俺だった。
剣を引き抜き、アバラの化け物に斬りつけた。
骨の硬さで弾かれて、ガギンと音がする。
化け物の動きを一瞬止める程度にしかならない。
「ナイスだ少年!!」
だが、ダンバドにとってはその程度の時間で十分だった。
「【マグマドライブ】!!」
ダンバドの背中からマグマが噴き出し突進、マグマを纏った拳で化け物に殴り掛かる。
「どらぁ!!」
骨はマグマでは燃えなかったはず――かつてお葬式の際に、骨の燃える温度が気になって調べた――だが、破壊力は間違いなく増している。
アバラを粉々粉砕し、魔物を吹き飛ばす。
だが、死屍累々となった周囲の魔物の遺骸から、次々とアバラの化け物が飛び出して来る。
とんでもない量だ……!
もしかして千魔全てがこのための――
「くそっ、こりゃ最初からアネさんが狙いか!!」
「おのれ! ボタンが引っかかって脱げん!!」
肝心のファルケファルケは、ワンピースのボタンにてこずっている。
別に普通のボタンだが、本当に拘束具として成立している……。
「もうっ! 【火精召喚】と相性が悪すぎ!!」
スパルネのスキルも火であり、骨を焼くことは出来ず、苦戦している。
【火の鳥】を直接ぶつけて打撃代わりに使うしかない。
この世界では珍しい体技を駆使できるダンバドがおかしいのだ。
仮に鉄砲が最初から普及した世界で、格闘術が進歩するはずはない。
スキルとはそういうものだ。
だから、俺も役に立てる!
「だりゃっ!」
群がる骨の化け物を剣で叩き落とす。
小ぶりな奴なら、なんとかなる!
「でけえのは俺っちにまかせな!」
ダンバドと上手くスイッチしながら骨の魔物を倒していくが、あまりに数が多い。
「ああーーーーーーっ!?」
ファルケファルケが小脇に抱えていたジゼロジゼロ人形がアバラに挟み込まれていた。
まるで鳥籠のようにアバラが閉じると、そのまま上部の骨がプロペラのように回転。
あっという間に上空まで飛んで行った。
「愛しのジゼロジゼロがあああああああああああああああああああ!!」
慟哭が響き渡るが、その隙は流石に大きすぎた。
「しまっ――」
ダンバドの守りを潜り抜けたアバラの化け物が、飛んでいくジゼロジゼロ人形に目を奪われたファルケファルケに迫っていたのだ。
「【氷壁】!!」
だが、そこは【国宝防険者】。
肌をほとんど露出していないにも関わらず、氷壁を生み出してアバラを防いだ。
「国宝を舐めるなよ」
「ケケ、舐めちゃあいないさ」
どこからか男の声が響き、何かが【氷壁】に激突した。
「なに!?」
ぶつかったのが、遠くから伸びてきた槍状のものだと気づいた時には、【氷壁】は粉々に砕けていた。
そして、アバラの化け物がファルケファルケを包もうとした。
「させるかぁーーーー!!」
そこに突っ込んだのは、全身を燃え上がらせ、炎の羽根を生み出したスパルネだった。
「うおっ!?」
体当たりでファルケファルケを吹っ飛ばし、アバラの化け物から引きはがす。
代わりに挟まれそうになるが、飛行能力で潜り抜ける。
「いいぞ嬢ちゃん!!」
「へへん。私もやるもんでしょ? つい最近、増えたスキルで――」
「……邪魔しやがったなクソガキ!!」
槍状のものが伸びてきた先で、突然カメレオン人間が現れた。
ずっと擬態していたのだ……!
「だが、お前のスキルも面白そうだ。だから、「お前でいい」や」
「え」
次の瞬間、地面から飛び出して来たアバラの化け物が、スパルネを包み込んだ――




