23・一回目のプロポーズと二回目のプロポーズ
「なになに、どんなスキルもらったの!?」
「どうでしたか!? 解呪スキルだったりしまして?」
「何を聞き、何を得た!?」
「ま、まぁまぁ落ち着いて」
全員が一斉に問い詰めて来る。
「ええと……スキルはもらえたよ。で、やっぱり、スキル未収得状態じゃないと授与はされないみたい」
水晶が「力を得る資格持ちし加護無き者」とか言ってたし。
「確かにそうみたいですわね」
無造作に水晶を触るジゼロジゼロ。
「いや、上書きだったらどうするつもりだったの!? もらえるの外れスキルなんだよ!?」
「ほあっ!? そうでしたわ!?」
うっかりさんすぎるだろ。
【大地母神】なんてぶっとんだスキルなんだから大事にしなよ。
「スキル無しでないと授与されぬというのは、予想の範囲内ではあるな。最初に攻略した者など、絶望したじゃろうな。【神の嫌がらせ】とはよく言ったものじゃ」
「それより、どんなスキルなのよ? いま、外れとか言ってなかった?」
「ああ、それなんだけど……」
とりあえず、スキルを起動してみる。
誰しも【基礎スキル】で水を呼び出すことが出来るので、その要領でやればいい。
「【バナナ生成】!!」
手の中に、バナナが一本出現した。
「はぁ? 何それ!?」
「どうやら、バナナを生成できるスキルらしい」
「なんじゃと!?」
生み出したバナナをむいてみたが、中身もちゃんとバナナだ。
試しに食べてみる。
「……うまい」
「食べれるんだ……って、何よそのスキル!? どう戦闘に使うのよ!?」
「皮で滑らせる……とか?」
某レースゲームみたいに。
「大外れじゃない!?」
「だから、そう言ってるじゃ……」
「大当たりですわーーーーーー!!」
ジゼロジゼロの絶叫に、一同が目をむく。
「ああ、やっぱり呪いを解くカギはここにあったのですわ……」
なんか泣いてる……。
「い、いや、ただバナナを生成できるだけだよ?」
皮をポーチにしまい――日本人の記憶があるしポイ捨てには抵抗がある――バナナをひと房、両手の間に生成してみせる。
一本以外もポンと出せるが、とても解呪なんかできるスキルではない。
「最高ではないですか!」
サッとそのバナナを奪うジゼロジゼロ。
「よいむしゃか? あっ、おいしいですわ。常にバナナをむしゃれるということは、むしゃの呪いはもうないのと同じむしゃ」
武者の呪いになっちゃった。
金田一の事件かなんかか?
「食べながら喋らないで……」
「もう食べ終わりましたから大丈夫ですわ。要は、ジーロがいれば、【腹ペコ】の呪いももう怖くないということですの」
「根本的解決になってない気がするけど……」
呪いが解けたわけでもなんでもない。
それは単に、水漏れする器を修理するのではなく、水を入れ続けるだけの話だ……。
「そんなの、ジーロがいなかったら同じじゃない」
しかし、ジゼロジゼロは、なぜか自信満々だ。
「ですから、わたくしとジーロが結婚すればいいんですの」
瞬間、空気が停止した。
「は?」
「聞こえませんでしたか? ですから、あなたがわたくしと結婚すればいいんですのよ」
「なななななななな何言ってんのよアンタああああ!?」
スパルネが顔どころか髪まで真っ赤にして絶叫する。
「だって、わたくしはいつも腹ペコ、ジーロはいつもバナナを出せる。こんなに運命的な出会いはありませんもの」
もうそれただの餌付けじゃねえか!!
「いや、何でそれで結婚することになるの……」
「そんなにお嫌ですか?」
そんな言い方はずるいだろ!!
こちとらなあ、前世では結婚できないまま孤独に死んだんだぞ!
「何で嫌と即答しないのよ!!」
「そ、そんなこと言われても……」
「あっ、そうだ! アンタ、私の言うこと何でも聞くって言ってたでしょ?」
「それはハンドタオル貸すときにもう――」
「だったら私と結婚しなさいよ!!」
何で瞬間的に修羅場に!?
「ちょっ、ちょっと待って! まだ結婚とかそういう話は――」
「だったらどっちともすればいいじゃないですの。貴族なら重婚も許されましてよ」
確かに貴族は血統を残すためにその特権があるけど、そういう問題じゃない。
目先のバナナに釣られすぎて思考力がゼロになってる!
「俺は貴族じゃないからどっちもとか無理だよ!」
「ですから、わたくしがジーロとスパルネさんと両方結婚すれば解決ですの」
思考力ゼロどころかマイナスだった!!
その大騒ぎの中、パコニカがぼそっとつぶやいた一言が、耳に残った。
「【召喚】ではなく【生成】じゃと……? それではまるで……神の……」
俺は敢えて言わなかった。
【水鏡】には【バナナ生成】が表示されていた。
だが、よく見るとその上に、親スキルが存在していた。
ちょうど【大地母神】と【岩石操作】のように。
そこに書かれていたのは――
【バナナ型神話】だった。




