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24・下

 【バナナ型神話】。

 聞いたことがある。

 東南アジアとか地球の世界各地にある神話だ。

 簡単に言えば、神が人間にバナナか石かを選ばせる。

 バナナは食べられるので、もちろん人間はバナナを選ぶ。

 しかし、石は不老不死の象徴なので、そちらを選んでいたら人間は不老不死だったのに……という内容。

 つまり、「なぜ人間には寿命があるのか」を説明する神話と言える。

 確か、日本神話のコノハナサクヤヒメとイワナガヒメのどちらを選ぶかの話も同じ系統のはずだ。

 何でそんなの知ってるんだって言われそうだが、そういう神話がモチーフのゲームにはまってた時期があったのだ。

 いずれにせよ、地球の神話には違いない。


「……」


 どうする?

 どこまで話していいものか。

 外れスキルがもらえる前提できたが、これが外れスキルかどうかもわからない。

 いや、外れスキルと言いつつ、ウェブ小説なんかでは実は大当たりスキルだったりするものだが、そういうのとも違う気がする。

 単純な有用性とは異なる意味が潜んでいるような……。

 

「何、目をつぶってるのよ! まさかキス待ちってこと!?」

「ほわー! なんとアグレッシブな受け身ですわ!!」


色々考えたいのに、周りの大騒ぎが止まらない。

 考えがまとまらない。


「いい加減にせよ!! 他に考えねばならんことがあるじゃろうが!!」

「!?」


 パコニカの一喝で一同が息を飲む。


「乳繰り合うのは上でせい!! こやつが授かったスキルは、明らかに異常じゃ。もっとそれについて話すべきじゃ」


 ……もっともな話だが。

 ただ、パコニカに対する疑念はまだ消え切っていない。

 上手く言葉に出来ないのだが、直感に近い。

 「俺と同じで」、「何かを隠すために演技をしている」ような気がするのだ。


「そうは言っても、スキルのことは他人に言うようなことじゃないんじゃないですか?」


 スパルネの言葉に頷くジゼロジゼロ。

 いや、お前、自分のスキルを開示して注意されてただろ。


「無論、スキル構成などは聞かぬ。じゃが、その水晶玉を触ったとき、何かが語りかけてきたはずじゃ。授与条件の話はしていたからの。それについては言えるじゃろう」

「……確かに、声がしたよ」

「神様の声ですの?」

「名乗らなかったからわからなかったよ。女性の声には聞こえたかな……」

「なんじゃと」


 あれ、何かまずかったか?


「神には性別がないとされておる。明確に女性の声だとすれば、別の存在の可能性が高い」

「……たぶんそうだと思う」


 神に見捨てられた云々から、それは明らかだ。

 だが、このあたりの情報は伏せておきたい。

 宗教的にあまりに衝撃が大きく、どう転ぶかわからない。

 魔女狩りみたいな目には遭いたくないしな……。

 だが、一方でその正体を知りたいのも事実。

 綱渡りの綱引きだ。


「ってことは、精霊さまってことかな」


 確かに、その可能性が高い。

 神は世界を創造すると、精霊に管理を任せたと神話にある。


「精霊って、スパルネさんが召喚してるあれですわよね?」

「【火精召喚】のこと? あれは、厳密には精霊じゃないんだけどね……」

「あれは疑似精霊とも呼ばれるものじゃな。生物的に振る舞うが、それは使い手の意思の延長であって、固有の意思は持たぬ。じゃが精霊は違う……とされておる」

「されておる、ってわからないんですの?」

「あのねぇ、精霊さまに会えた人なんて、伝説の存在よ。ハイ・レアスキルの中には【精霊召喚】なんてものがあるらしいけど……まぁ眉唾よね」

「嬢ちゃんの言う通りじゃ。国宝級防険者のアルガスは精霊を呼べるなどと噂があるが、どこまで信用がおけるかはわからんな。つまりはそれほどの存在ということじゃ」

 

 それは俺も知っている。

 この世界においては、常識のようなものだ。

 ジゼロジゼロが浮世離れしすぎているだけだ。


「まぁ、会話は出来なかったから、単に何らかのスキルで録音されてただけかもしれないけどね……」


 とは言ったものの、俺も精霊である可能性が高いと思っている。

 神以外の上位存在は精霊しかいないからだ。


「ふーむ、出来れば他にもスキル未習得の者を連れてきたいところじゃが……流石にそんなもの好きはそうそうおるまいな」

「バナナを出す力がもらえるって言って、誰が来るのよ……」

「まぁ、いずれにせよ調査することには変わらん」

「調査はいいですけど、ここって出口はないんですの?」


 言われてみれば、そうだ。


「そう言えば、ワープしてきたから、上への道もないんだった」

「ちょっ、ちょっと、閉じ込められたってこと!?」

「大丈夫ですわ。バナナはいくらでも出せるのですから、飢え死にはしませんわ」

「そういう問題じゃないんだけど!?」


 すぐ漫才をしだす二人はほっておいて、周囲を探してみる。


「あ」


 壁をよく見たら、三角と逆三角のボタンがあった。


「なにか見つけたかの?」

「いや、エレベーターのボタンが……」


 言って、しまったと思った。

 エレベーターなんかこの世界にはまだない。


「エレベーター? 王城などにあるというあれか? 上の階に食事を運ぶために使うとかいう……」

「ああ、あれならわたくしの家にもありましてよ。小さなものですけど、ご飯が届いて便利ですの」


 助かった……。

 たぶん人力なんだろうが、それならあってもおかしくない。

 地球での小学校の頃、給食を運ぶ時にそういうの使ってた気がする。


「えっと、それの大きい版かな」


 深く追求されないうちに三角ボタンを押す。

 すると、壁が左右に開き、エレベーターの箱が現れた。


「わっ、びっくりハテナ!?」

「これに入れば、上に上がれると思うよ」

「もう用事も済みましたし、帰りませんこと?」

「賛成。とっととこんなところから出ましょ」


 箱の中に入る俺たちだったが、パコニカが立ち止まっていた。


「あれ? どうしたんですか?」

「おかしいとは思わなんだか?」

「……何がですか?」


 俺のエレベーターの知識に違和感があったのか?


「おぬしが今押したのは上に上がるためのボタンじゃな?」

「あっ!?」

「なになに? 何の話?」

「そんなことより、お腹がすいてきましたわ」


 どういうことだ……?


「小僧は気づいたようじゃな」

「……なんで下に下がるボタンがあるんだ……?」

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