22・外れスキル授与
「我の負けだ……」
ゴーストが膝を着いたまま、宣言した。
「貴方そんなに強かったんですの!?」
「びっくりハテナなんですけど!! 何あの動き!?」
「……まぁ、ちょっとね」
長年剣道をやっていたので、大学卒業後、そのまま深く考えずに警官になった。
幸い採用され、おりしも不況だったので、家族も喜んでくれた。
しかし、あまりの激務で心身を壊し、三年で退職した。
その後、無難に生きようと決め、何も得られないまま死ぬのだが……。
ここで警官時代の経験が活きるとは思わなかった。
「対人戦に特化した技術じゃな」
「魔物だらけのここじゃ役に立たないけどね……」
「そういう意味ではない」
誤魔化せないか。
水が無限にあり、かつ魔物という人類共通の敵がいるこの世界では、戦争が起こりにくい。
「そんなことより、早くスキルを貰おうよ」
「強引な話題逸らしじゃのう。じゃがもっともじゃ」
パコニカも気になっているということか。
「さぁ、スキルを渡して!」
外れのな!
ゴーストは俺の言葉に、頷く。
「約束は違えぬ」
ゴーストは自分の胸を、鎧ごと貫いた。
驚くこちらを意にも介さず、胸から金色の気珠を取り出し、床に叩きつけた。
すると、床や壁のパネルが一斉に移動を始めた。
「なななななななななんですの!?」
まるでスライドパズルのように動いたパネルが、何かを形作っていく。
そしてカシャカシャと積み上がっていく中で、それが神殿であるとはっきりわかった。
壁に半分埋め込まれている形の神殿で、祭壇が積み上がっていった。
祭壇に、水晶玉がどこからか出現。
それに合わせて、パネルの移動が止まった。
「我が使命、ここに成就せり……」
ゴーストが万感の思いを感じさせる一言をつぶやくと、その鎧がぽろぽろと砕け始めた。
そして体がいくつもの光の玉となって、蛍の群れのように散って消えて行った。
「……どれだけの期間、待ってたのかしらね……」
「わからない……けど、少なくともこれで良かったんだと思う」
「そうね……」
「感慨深そうにしているとこ悪いがの、早くスキルを手にしてくれんかの? わしの長年の研究が、大きく進展する時なのじゃ」
「ああ、そうだね」
「でも、神官さまはいないようですわよ?」
ああ、そうか。
漫画とかだと水晶玉が喋り出したりするものだが、この世界の人間からしたら、神殿が無人なのは不思議に感じるのは自然だな。
「きっとあの水晶だと思う」
「へっ? 何をおっしゃってますの?」
「まぁまぁ、とりあえずは行ってからだよ」
パコニカに何かを気取られるかもしれないが、俺も高揚感を止められないので、迷うそぶりすら見せずに一直線に水晶玉に向かっていく。
待ってよ、と一同もついてくる。
それを待たずに、水晶玉に触れる。
すると、脳内に直接声が響いてきた。
「数多の試練を超え、辿り着いた者よ……力を得る資格持ちし加護無き者よ……」
慈愛にと威厳に満ちた女性の声に聞こえる。
神の声なのだろうか。
「ど、どうしたのよ。何があったの?」
「悪い。静かにしてほしい。声が聞こえてるんだ」
「……」
頷いて素直に口をつぐむスパルネ。
この辺、気遣いが出来る子なんだよな……。
「そなたに、Eスキルを授けよう」
「Eスキル?」
Dスキルではなく?
俺の疑問に声が答えることはなく、代わりに俺の足元で急に光が線となり、魔法陣を形成した。
「……!」
Eが何かはわからないが、いよいよ外れスキルが貰えるのだ!!
外れという意味でエラーのEかもしれないな。
心臓が高鳴る。緊張で口の中が乾いてくる。
が、直後に聞こえた言葉は、全ての予想を覆すものだった。
「神に見捨てられた地を、この力で救うのだ……」
「え?」
とんでもない発言と共に、足元から立ち上る光が、俺の体を包んだ。
光は水のように体に染み込んでくる。
理屈ではなく、感覚でスキルを得たのだと理解する。
やがて光は消え、声も聞こえなくなった。
「ど、どうなりましたの?」
「たぶん、何かのスキルを貰えたはず……」
【水鏡】を開いてみる。
「あっ」
これまで、潜在能力を示すだけだった水面に、文字が浮かんでいる。
俺が授かったスキルはいったい何か?
外れスキルに見えて大当たりなのか、それとも単に外れスキルか?
文字列に目を走らせると――
「は?」
【バナナ生成】
なにこれ。




