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21・〇〇出来ない部屋

 魔物の頭を剣でかち割った次の瞬間、その中から光が溢れ出した。

 そして、視界が白で埋まり――

 気づくと、全員でここにいた。

 今までの広大なフィールドではなく、真っ白な部屋。

 白いパネルが敷き詰められた、どこか未来的なものを感じる。

 一般的な体育館くらいの広さで何もなく、俺たちの他には誰もいない。

 

「何よここ……」


 不満げなスパルネだが……。


「大丈夫なの? だいぶ怪我してたと思うけど……」

「ふーん、心配してくれるんだ?」

「そりゃするでしょ」

「よろしい。まぁ、私もわかんないんだけど、ここに来た瞬間に、怪我が軽くなった気はするね」

「あっ、わたくしもですわ! ぶっちゃけ、槍を刺したあと、高すぎて着地で足をくじいたのですけど、ずいぶん楽になっていますわ」

「確かに、俺もアバラの痛みが軽くなってるかな」

「ふむ、この空間に回復の力があるのかのう。あるいは、先ほどの光に回復の効果があったのか……」

「前者だ。後者は移動の力しかない」

「!!!???」


 突如、誰もいない空間から見知らぬ声がして、一同に緊張が走る。


「誰じゃ!!」


 空間にノイズが走り、大柄な鎧騎士が現れた。

 この世界では滅多に見ることのない全身鎧で、中身は見えない。


「我は、()()()()


 鎧騎士は大剣の切っ先を床に刺し、柄頭に両手を乗せた。

 その姿は、欧州の騎士物語のレリーフのようだ。


「貴方を倒せとでも言うつもり?」

「その通りだ。そして、我を打ち倒せたならば、スキルを授かれるであろう」

「……!」


 伝説は正しかった。

 やはりこの先にスキル神殿があるのだ。


「執念、スキル、知恵。様々、ここまでに試されて来たはず。最後は武の試練。それが我・ナイトゴーストの使命である」


 鎧騎士が兜を外して投げると、そこには骸骨の顔が現れた。

 そしてゴーストが大剣を引き抜いて構える。

 その名の如く、おそらくは幽霊の類なのだろうが、霊的なものというより、圧倒的強者としての威圧感は並ではない。

 2mもないくらいだが、知恵があるぶん、マーキメデューサなどよりよほど怖い相手かも……。

 

「な、何よ。そんな刃物持ってたって距離を取って攻撃すればいいだけでしょ。行け! 【火の鳥】!!」


 スパルネが指を鉄砲の形にして――どうやら気に入ったらしい――狙いを定め、スキルを放った。


「……あれ?」


 が、何も起こらない。


「えっ、嘘、なんでなにも……」

「【雲】よ!!」


 即座にパコニカがスキルを発動させようとする。

 しかし、何も起こらない。


「ど、どうしたんですの!?」

「思った通りじゃ。つまりここは――」

「スキルが使えない部屋なんだね?」


 俺の言葉に、ゴーストが頷く。


「武の試練と言ったはず。借り物の力はここでは意味を成さぬ」

「借り物の力……?」


 スキルをそういう風に言うのを聞いたことがない。

 授けられこそすれ、借り物という感覚で使っている人はいないだろう。

 何か、重要なことを聞いたんじゃないか。

 この世界に関わる、重大な――


「オオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 ゴーストは大剣を頭上で振り回した。

 大剣の重さすら感じさせず回転させるそれは、もはや竜巻のよう。

 あの剣が当たればミンチになるのは確実だろう。


「化け物じゃ!!」

「あんなのどうするのよ!?」

「これ以上の問答は無用。来ないならば帰れ!!」


 ゴーストが剣で示した先には、ドアが出現していた。

 それから、大剣をこん棒のように片手で大上段に構え直す。

 来るなら、叩き潰すという意思表示だろう。


「もちろん、帰らないよ」


 俺は一歩前に出る。


「ちょっ、ちょっと何考えてるの!?」

「俺は元からスキルは使えない」

「そうだったわね……じゃなくて!! どっちにしろ勝ち目なんかないじゃない!!」

「俺はそうは思わないな」


 ゴーストの間合いから多少の余裕を持って立つ。


「スパルネの言う通りですわ! あんなドでか遊ばせる武器相手に、スキルなしじゃ無理ですわよ!?」


 もう言葉が滅茶苦茶だが、それだけ心配してくれているのだろう。


「いや、あの小僧を信用してはどうじゃ? 無策とは思えぬ」

「それはそうかもしれませんけど……でも……」

「……フゥーッ」


 深呼吸し、剣を引き抜いて正眼に構える。

 ゴーストに僅かな戸惑いが見える。

 見たことがない構えなんだろう。

 やはりそうか。

 なら――()()()


「オオオオオオオオオオ」


 ゴーストが突進してくる。

 その足さばきは完全に素人!!


「キエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」


 俺は、一気に飛び込んで面打ちを放つ!

 小中高大、そして職場。

 ずっと稽古し続けてきた面打ちが、ゴーストの頭をたたき割る。


「がっ!?」


 そのまま後ろに駆け抜ける。

 反撃を受けない間合いまで離れ、ゴーストが振り向いたところに、更にもう一発面打ち。


「エエエエエエエエエエエエエエエエエイ!!」

「ごあっ!?」


 ゴーストがひるんだ隙に、すかさず胴打ち。

 小手。面。胴。面。小手。胴。

 反撃は許さない。

 ゴーストを滅多打ちにする。


「ぐあっ!! ぐおっ!? ぬぐっ!?」


 日本刀ならぬただの剣でも、バールで殴るようなものだ。

 十分な破壊力がある。

 鉄の塊を叩くようなものだから、こちらの手も傷んでいるが、この空間自体の回復能力に懸ける。

 やがて、俺の剣がへし折れたところで、ゴーストは膝をついた。

 髑髏の顔も、半分以上砕けている。


「何だ……その技は……」

「これは、()()()


 漫画とかだと実戦経験のある侍が強いという理屈が語られるが、俺はそうは思わない。

 長い時間をかけたくさんの人に磨かれて来た剣道の技は、もはや素人の目で追える速さじゃない。

 いかに破壊力のある大剣を振り回そうが、先に頭を割ってしまえばいいだけの話だ。

 こっちは剣道日本一と対戦した経験だってあるんだ。

 あんな素人の構えに、負ける気はしなかった。


「……剣の道……まさかそのようなものがあったとは……」

「これでも、警官を三年やってたんでね」

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