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18/26

18・休憩の終わり

 温泉のそばでひと眠りして、おそらくは翌朝。

 ここはずっと月夜なので正確な時間はわからない。

 セカンダールではまだ腕時計は実用化されていない。

 ファスティバ王国の首都には大時計があるそうだが、他の都市では水時計が使われている。

 小さな町や村々では日時計ないし、日の出と日没が時計代わりだ。

 太陽が昇らないこんなフロアでは寝起きが良いやつもいれば悪いやつもいるわけだ。

 真っ先に起きたのはもちろんパコニカ。


「うーむ良い朝じゃ。まぁここは夜のままじゃが」


 見た目はともかく起床時間に年齢が出る……と、言いたいところだが、最初に起きたのは俺だった。


「おはようございます……」

「おっと、もう起きておったか。早起きじゃの」


 これには理由がある。

 パコニカをまだ信用出来ていないので、闇討ちを避けるべく彼女が先に寝たのを確認した。

 それから寝て、先に起きておいたのだ。

 思った時間に起きれるように訓練はしている。

 この辺は、社会人をやっていた前世の経験が活きていた。

 幸い、寝込みを襲われるようなことはなく杞憂だった。

 疑いすぎだったかもしれない。


「どうする? 嬢ちゃんたちが起きるのを待つかの?」

「そうだな……」


 まぁ、たぶんジゼロジゼロはすぐ起きて来るだろう。

 お腹がすいたら起きて来るという確信めいた予感がある。


「ま、あのお嬢様は問題なかろう」


 岩を操作して作ったベッドに、桜の葉を敷き詰めた上に毛布を引いて寝ているので優雅に見えるが、もうぐぅぐぅお腹が鳴っているので台無しだった。


「というわけで、嬢ちゃんはおぬしが起こして来るんじゃな」

「なんで僕が……」

「そういうポーズはいらん。さっさと起こしてこい」


 なんというか、一瞬で外堀が埋められている気がしなくもないが。

 

「まぁいいけど……」


 スパルネを起こしに行く。

 バスタオルは持ってないが、流石に毛布の一枚くらいは用意していてよかったが、一緒に寝るというのを意識しすぎて一人だけ離れた位置に寝たはずだ。

 もしかしたらもう起きてるかも……と思ったがぐーぐー寝ていた。

 そういえば、学校に遅刻するから、いつも起こしに行ってたな……。

 スパルネのお母さんも相当な寝坊助だったのを思い出す。

 ジゼロジゼロより呑気な人だったので、その分スパルネも勝気になったのかもしれないが、寝坊助なのはそのまま受け継いでいるんだよな……。


「おーい、起きてー」


 ぺちぺちと頬を叩いてみる。


「むにゃむにゃ……」


 流石に「もう食べれないよ」なんて寝言は言わないだろうと思ったが、むにゃむにゃと来たか。

 いい夢を見ているであろうところに悪いが、起きてもらわないと困るので両頬を引っ張る。


「ううう……ん」


 流石にそこまでされれば目が覚める。


「ジーロ……?」


 寝ぼけ眼できょろきょろ辺りを見渡すスパルネ。


「もう起きる時間――」

「まだ夜じゃない……」


 忘れたのか寝ぼけたのか……。

 ここはずっと夜だとパコニカから説明されただろうに。


「って夜なのに、ジーロがここに!? 何何何!? まさか夜這い……!?」

「誤解だよう!!」


 いいから、早く次の階に行かせてくれ!

 わーわー言うスパルネはもう置いておいて、一同の元に戻ると、ジゼロジゼロが起きていた。

 というか飯を食っていた。

 湿地で獲った魚は開きにして鉄の網に挟んで干していたが、すぐに干物にできるわけではない。

 ……が、スパルネが合流したのをいいことに、【火精】で燻製にしていたのだ。

 バスタオルすらないのに干物の干し器は用意してるジゼロジゼロの食い意地は尊敬に値する……。


「むしゃようございますわ」

 

 丁寧に喋っても食べながらだと意味ないぞ。


「腹ごしらえしたら、すぐに下に降りるぞ。あそこは、どれだけ時間がかかるかわからんでな」

「それほどのところですのねむしゃ……」

「おい、嬢ちゃんはどうした」

「あー寝ぼけて暴れてまして……」

「……おぬしら、個性豊かじゃのう」


 年の功か、妙に配慮した物言いありがとう。

 その寝坊助の暴れフェニックスは、温泉で顔を洗ったらしく、流石に合流時には落ち着いていた。

 恨みがましい視線を向けられたが気づかないふりをしておく。

 ともあれ、全員が揃ったし食事も済ませ、いざ地下三階へということになった。

 階段の場所は特別隠されているということもなく、温泉のそばだったので、本当にセーフティーゾーンとして設計されたフロアらしい。

 だが、ボス戦前のセーブポイントのような怖さはある……。


「どうしたの? ジーロって昔から、考え込んでること多いよね」

「あ、ああ……そうかもな」


 前世の記憶があるというのはいいことばかりじゃない。

 若さゆえの行動力を阻害しがちで、こうしていちいち考えてしまう。

 でも、この大迷宮に来たのは、行動するためだ。

 砂漠に大湿原に温泉に、さんざん予想外のを見てきたんだ。

 今更、考えてもしょうがない。


「よし、行こう!」


 気合を入れて下への階段を降り――


「嘘だろ……」


 そして、信じられないものを見た。


「宇宙……?」


 そこにあったのは、無限に広がる大宇宙だった――

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