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17・ラッキースキル

 スパルネも温泉に入りたがるので付き合っていたら茹ってしまった。

 おかげでパコニカを紹介する時間も十分にあったし、スパルネとジゼロジゼロも多少打ち解けてきたようだった。


「女の子ばっかり集めてパーティー組んでるとはね……びっくりハテナすぎ」


 俺に対する疑念だけは、消しきれなかったが。

 あとビキニアーマーの日焼け跡があまりに破壊力があったので目を逸らしていたらそれはそれで怒られた。

 とにかく、温泉で話すべきことは終わったので、体を拭いて移動……とここで気づいたが、バスタオルなんて用意をしていない。

 一応、ハンドタオルに近い布きれくらいは用意しているから、俺はいい。

 だが、無計画で乗り込んできたスパルネにそんなものは無かった。


「それ、貸して」

「え、いやこれは俺が普段使ってる……」

「何でもするって言った」

「……どうぞ」

 

 参った。どう体を拭くべきか。


「わしのは貸さんぞ」


 と、パコニカは桜の枝にバスタオルを掛けていた。

 何度も来ているだけに、慣れたものだ。

 では、ジゼロジゼロというと、これまたハンドタオルで体を拭いていた。


「おかしいですわ。全然拭き切れない……ああ、巨大化したままなんですのね」


 ……いや、最初に会った――腹ペコだった――時と変わらないが。

 単に目算が甘かっただけだろう……。

 結局、ハンドタオルを洗い、スパルネの火炎の力で乾かして使い回すのだった。

 ……やはり、スキルって便利だな……。


「そういえば、明らかにそれ【火精召喚】じゃないよね? 自分自身の体から炎が出てるし」

「そうね。この迷宮の中で成長したの。……まぁ、【水鏡】には読めない文字出てるから、何なのかはわかんないんだけど」


 さっきも言ってたな。

 殺気が凄すぎて、ちゃんと頭に入ってなかったけど。

 しかし、読めないスキルか……。


「俺なら読めるかも」

「え? ……私の【水鏡】を見たいってこと?」


 スパルネが赤面する。

 しまった。

 スキルは、この世界においてセンシティブな情報だ。

 潜在能力すら神官しか見ることができないし、教員へは神官からわざわざ伝えられる。

 結局、それを参考に特進的クラスが出るからわかるのだが……それこそ、地球での性に関する話題くらい腫れ物的扱いをされているものだ。

 家族にすら【水鏡】を見せないという人も珍しくない。

 この辺り、生殖に必要な性を隠したがる地球と、能力行使で見ればわかるスキルの情報を隠したがるセカンダールで似通っている部分かもしれない。


「あーいや、そういう意味じゃ……」

「ああ、ジーロはわたくしのスキルも読めましたものね」


 ジゼロジゼロが呑気に顔を出して来た。


「は?」


 あ、やばい。

 また髪の色が赤く変色していく……。


「ふぅぅぅん……見たんだ……? ジゼロジゼロさんの【水鏡】……」

「な、成り行きというか……」

「そんなラッキースキルあるかぁ!!」


 ラッキースキルって何だよ!?

 ラッキースケベみたいなこと!?


「異性に【水鏡】見せるなんて露出狂じゃない! そんな人いないでしょ!」

「わたくし、露出狂ですの!?」


 こうなってはもう収拾がつかない。

 さんざんわちゃわちゃした挙句、スパルネが【水鏡】を開いた。


「あーもう! わかった! 見たいんでしょ! なら見なさい!」

「見たいなんて一言も……」

「ジゼロジゼロさんだけ見て、私のを見ないなんて許されるわけないでしょ!!」


 もう理屈も通ってない。

 ヘッドロックして無理やり見せつけて来る。

 ……だが、気にならないと言えば嘘になる。

 そこに書かれていたのは――


「【不死鳥】……?」

「……ほんとに読めるんだ……」


 はっきり不死鳥に見える。

 この世界において、存在するかは知らないが、スパルネが読めないということは、おそらく存在しないのだろう。

 やはりこれもバグスキルなのか。


「で、フシチョウってどんなスキルなの?」

「わかるのは名前だけだから、多分なんだけど、不死鳥ってのは炎に飛び込んで、灰の中から蘇るとされる鳥なんだ。だから、炎を出したり、その炎で自分は傷つかなかったりするんだと思う」


 ゲームとかだと他者の再生能力があることが多いが、違った場合は取り返しがつかないので敢えて伏せておく。


「へぇ……鳥なんだ。じゃあ慣れてきたら飛んだりできるのかも。面白そう」


 と、遠巻きに見ていたと思っていたパコニカがいつの間にか近づいてきていた。


「……ほぉう。おぬし、妙な力があるんじゃのう」

「あなたの【雲】だって、よっぽどびっくりハテナだと思いますけど……」

「違う違う。小僧の方じゃ」

「え?」

「読めぬスキルが読める……気になるのう」

「……!」

 

 サングラスの向こうの目は見えない。

 どんな風に見ているかはわからないが、背筋を冷たいものが走り、鳥肌が立つ。

 ……考えてみれば、サングラスなんてこの世界で見かけたことはない。

 メガネは実用化されているから、あってもおかしくはないが……。

 パコニカ……やはり油断できない手合いかもしれない。


「あら、鳥肌が立っていましてよ。また温泉に入ります?」


 一人呑気なジゼロジゼロの提案は、お断りさせていただいた。

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