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16・修羅の鉄火場

「ふぅぅぅぅぅぅぅん、そっかああああああああ」


 スパルネの緑と水色の混ざった髪が、今や真っ赤に燃え上がっている。

 全身が温泉を超える熱気をまとい、足が触れた浅瀬の湯がボコボコと沸騰している……。


「な、なんかすごいスキルを覚えたみたいだね……」

「おかげさまで~? 何しろ、砂漠を超えて湿原を超えて……ああ、そうだった。よっぽど追いかけて欲しくないのか、ドでかいアルマジロで階段塞いでたんだもんねええええええええええ!!」

「冤罪だよう!!!!」


 水マジロは勝手に突っ込んで死んだんだよ!!

 どかしてはなかったけど、外れスキル神殿に誰かが追いかけて来るなんて思わないしさあ!!


「砂漠の敵は熱に強いし、階段塞いでるやつは火に耐性があるのか全然焼けないし、湿原の敵もすぐ水に潜るし……もう最っ悪! おかげでよくわかんないスキルを覚えられたわ。ありがとねぇぇぇ」


 こんなねっとり喋る子じゃなかっただろ!

 怖すぎる!!


「っていうか、何で追いかけてきたんだよ! ソルダたちはどうしたんだ!?」

「カップル二人と旅なんかできるかあ!!!」


 怒髪天を衝き、髪の色が青い炎の色に変わる……!

 ツインテールが逆立つ姿は、悪魔の角のようにも見えた。

 怖すぎる!!

 いや、それより――


「あいつら付き合ってたの!?」

「このハイパー朴念仁が!! なんでわかんないのよそのくらいも!! ほんっっっとにびっくりハテナなんですけど!!」


 そんな馬鹿な。

 いつもソルダの後をカペローラはついていっていたが、付き合っているだなんて夢にも思わなかった。


「だからって、何で追いかけて来たんだ? お前なら、引く手あまただろ」

「誰のせいでパーティーが崩壊したと思ってんのよ!! そのくせムッチンプリンと温泉旅行だあああああ? もうこれ、殺して欲しいって言ってるのと同じだよねええええええええ?」


 殺される。

 指をぼきぼき鳴らしているが、その指の隙間から炎が漏れている。

 踏み出した一歩がじゅうと激しい音を立てた。

 このままだとお湯が水蒸気爆発を起こしかねないほどの熱量になっている……!

 その燃え盛る手が俺にまっすぐ伸びて来て――


「わ、わかった! 埋め合わせはする! 何でもする!」

「……へえ……何でも……」

「ああ、二言はない!!」


 もともと、追放のためにパーティーを組んでいた後ろめたさはあった。

 その大きな借りは、いつか返さなくてはいけないと思っていた。

 予定より早まってしまったが、構わないだろう。


「だから、この迷宮の攻略が終わるまで待ってくれ」

「……そう言って逃げる気なんじゃないの? 前科があるものねえええええ」


 伸ばされていた炎の手は止まったが、まだ目に正気が戻っていない。


「……まぁいいわ。信じてあげましょう。どうせ逃がさないんだし」


 こわい。

 そんな喋り方じゃなかっただろ。

 冷静さを無理やり装うとして、マダムみたいな口調になっているのが、余計に恐怖をあおる。


「……えっと、ついてくるってこと?」

「困るとでも言うつもりかなあ……」

「い、いやそんなことは。スパルネの能力は頼もしいよ」

「ふうううううん……まるでスキルしか用がないみたいな言い方に聞こえるな~~~~」

「違うってば! スパルネがいてくれて嬉しいよ。本当だ!」

「……」


 スパルネの炎の色が青から赤へ、そしてゆっくりと消えていく。

 それで気づいたが、かなり日焼けをして小麦色の肌になっていた。

 砂漠でよほど迷ったのだろう。

 それにしても焼けるのが早い気がするが……。


「あら、ずいぶん仲良しですのね」


 いつの間にか、ジゼロジゼロが目を覚ましていた。

 まぁ、あれだけ大騒ぎすれば、それも不思議ではない。


「……あなた、誰ですか?」


 じとぉ、と湿度の高い音がしそうなほどの視線をジゼロジゼロに向けるスパルネ。


「わたくしはジゼロジゼロ」


 あ。

 漫画で見たことがある。

 ものすごく誤解を生むようなこと言い出しそう!!

 下手したら、スパルネが爆発する!!!


「ちょっと待っ」

「あなたは、ジーロの婚約者さんですの?」

「こっ……!!!!!?????」


 全然予想外のセリフが飛び出し、スパルネが顔を真っ赤にした。


「―――――――――――――っ!!???」

 

 ボン、とスパルネの頭が爆発した。比喩ではなく。

 スキルの暴走によるものらしく、大したダメージはなく、昔のアニメのように煙を口から噴き上げる。


「す、すごい特技をもってらっしゃるのね……わたくしも負けてられませんわ……!」


 謎に対抗心を燃やしたジゼロジゼロが岩でゴーレムを作ろうとするのを必死に止めていると、いつの間にか戻ってきていたパコニカがあきれ顔で見ていた。


「なーにをやっとるんじゃおぬしは……」

「……わかんない」

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