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11・【バグスキル】

 水マジロは倒したものの、別に階段は見つかっていない。

 ジゼロジゼロの腹ごしらえに時間を要し、探索どころではなかったのはある……。

 外は夕暮れとかではないだろうか。

 空間自体が違うせいか、こちらはまったく日が落ちる様子はない。

 そろそろセーフティーエリアのようなものを確保したいところだ。

 最悪、階段で寝るしかないが、水マジロをどかすのは骨が折れそうだ。


「ほら、何をぐずぐずしていらっしゃいますの? 探索しましょう!」


 周囲の魔物を排除したことで魚たちが顔を出してきたので、釣りが大成功。

 僅かな陸地に、岩を操るスキルで作った簡易七輪で魚を焼きまくり、たっぷり食べてジゼロジゼロは元気百倍だ。

 というか――


「……そんなにデカかったっけ?」


 明らかに、サイズ感が上がっている。

 元々大柄ではあったが、今は身長が2mくらいに見える。

 それと、銀色の髪が、完全に緑色になっている。


「まぁ! レディの体重をいじるなんて、マナー違反でしてよ!」

「体重については一切、触れてないんだけども!?」

「あなたこそ、ちゃんと食べてますの? なんか小さくなってるような……」

「君が大きくなったんだよ! 身長が2mはあるよ!?」


 おかげで金ビキニがマイクロビキニみたいになってるし……!

 ちなみにこの世界がメートル法というわけではないが、それ言い出すとわけかんなくなるので変換していると思ってほしい。


「またまた~そんなことあるはずありませんわ。だって【呪い】では痩せてしまうだけで、小さくなるわけじゃないんですもの」

「……ちょっと待って。そもそも、それ【呪い】なの?」

「へ?」

「痩せる【呪い】じゃなく、体のサイズが変わるスキルなんじゃない?」

「そんな馬鹿な……」

「なら、【水鏡】で確認してみたら?」

「いいですわよ、ほら」

「え?」

 

 誰でも使える基礎スキル【水鏡】はステータスを表示できる。

 だが、その分、デリケートな扱いだ。

 そう簡単に、他人に見せるものじゃないが、お嬢様ということで浮世離れしているのかもしれない。


「ま、まぁ、見せてくれるなら見るけど……」


 ステータスと言っても、細かい数値が並んでいるわけではない。

 また、スキルが全てみたいな世界だから、基本的にはスキルツリーが並んでいるだけだ。

 ちなみにスキルを得る前には、水面に浮かぶ光点の数や大きさで潜在能力がわかるようになっている。

 ジゼロジゼロのスキルは【地】とか【岩】に関するものだろう――


「は?」


 彼女の【水鏡】に書かれていたのは、【大地母神】だった。

 そこからツリーが伸びて【岩石操作】、【ゴーレム作成】、【ゴーレム操作】などに派生している。

 普通はない【呪い】の欄もあり、【飢餓】とある。


「大地母神……?」

「何を言っていますの?」

「いや、ほら、一番上のところ」

「え? これ読めますの?」

「あっ」


 そこで気づいた。

 大地母神は――


「そこ文字化けしていて誰も読めませんのに」

「そういうことか……」


 この世界に大地母神という概念はない。

 なぜなら、唯一神が作ったとされる世界だからだ。

 神が世界を作り、それからスキルの理を足した。

 そして完成した世界の管理を精霊に任せ、姿を消したとされる。

 この神話のどこにも、大地母神など出てこない。

 概念自体がないから、この世界の人間には理解できない。

 結果、【水鏡】の情報を、読み取ることができないのだ。


「何を一人で納得してますの? 説明してくださいまし」

「ええと……どう言ったらいいかな……」


 まともに説明しようとするとガリレオ的転回案件だ。

 混乱するだろうし、ジゼロジゼロが信心深い場合、トラブルになりかねない。

 うまいこと誤魔化して説明しよう。


「君は、大地という概念そのものを投影した能力が使えるんだと思う。これは、他のスキルより遥かに概念的能力なんだ。岩石を操れるのは、あくまで手前の能力なんだよ」

「それがダイチボシンですの……?」

「たぶんね……だってほら、髪の色も変わってる」

「あら!」


 緑色になった髪を掴んで目の前やって、ようやく気付くジゼロジゼロ。


「でも、いくらわたくしでも、髪の色が変わってたら気づくはずですわ。あと、大きくなるのだって屋敷に居たら流石に気づきますわ。頭とかぶつけるでしょうし」

「確かに……」


 何か、条件があるってことだろうか。

 いっぱい食べるのだって、貴族なんだから家にいた時に何度もあっただろう。

 なぜ急に巨大化して、髪の色が変わったのか?

 この迷宮と関係がある?


「……地下だから?」

「大地の中にいると、効果が上がるんですの?」

「かもしれない……あまりにも概念的な能力だからわからないけど……」


 こんなスキル聞いたことがない。

 【バグスキル】とでも名付けようか。

 ……。

 いや、そういうのは、俺が貰えるべきだろ!!!

 滅茶苦茶主人公っぽいし!

 俺もバグりてえよ!!


「まぁ、何でもいいですわ。どうせ【腹ペコの呪い】で縮むでしょうし」

「いや、あれ正確には【飢餓】……」


 あー、でも、【大地母神】が俺にしか読めなかったように、人によって見え方が違うのか。

 だから概念自体を本人が理解できない場合は読めないのだ。

 飢餓を腹ペコと捉えるのは、なるほど貴族的と言えるかもしれない。

 そもそもこの世界では水がスキルで出せるので干ばつによる飢餓が起こらないのもある。


「そんなことよりも、あれを何とかしないといけませんわね」

「あれ?」


 言われて気づいた。

 遠くから、何かが水面を割って進んできている。

 浅瀬に近づき、その姿が露になってくる。


「あれは――」


 大きなたてがみに覆われた猛獣の顔面に、跳ね上がる魚の尾。


「マーライオン!?」

「何ですのそれ!?」


 と、思ったら、ライオンの横からヤギの頭が現れた!


「ごめん違うわ! マーキメラだあれ!!」

「だから何ですのそれ!?」

「俺も知らない!!」

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