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106・タイクーン

 真の姿を現した苔転君は、異形の怪物だった。

 紫色の巨体は、竜なのに鱗を持たず、うなぎのようにぬらぬらしている。

 ひれや尻尾などの末端は、触手に変わっていた……。


「その姿……!? 邪神の一味か!!」


 言って、気づく。

 なんて愚かな質問だろう。

 あいつは、【死】をまともにくらった。

 ()()()()()()()()()()

 ならば答えは一つしかない。


「当然でしょう。

 わしは最古の侵深偵団。

 遥か昔より、邪神についたもの」


 やはりか……。


「ば……馬鹿な……誇りある……我らが一族から……なぜ……」

「もっと喜べばいいでしょう。

 ドラゴンが力を示す時が来たのですから。

 かかかかかか!」


 老成した声が、だんだんと若々しくなっていく。


「苔転君!!!」

「その名はもういらんですな!

 わしのことは、タイクーンとでも呼んでいただきましょう!」


 苔転君――タイクーンが大きく口を開く。

 すると爬虫類人たちがわらわらと出て来た。

 いきなり爬虫類人たちが現れたのは、これが原因だったのだ。

 そして彼らの肌の色も、紫色に変わっていた。

 同様に先に現れた爬虫類人たちの肌の色も変わっていく。


「そうか……!

 お前が爬虫類人たちを引き込んだんだな!」

「もちろんもちろん。

 みな、わしがやりました!

 若を唆して人域に攻め込ませたのも、

 白骨公主を唆して侵深偵団と秘かに組ませたのも、

 ああ、若に父君をしいさせたのもわしですな!

 かかかかかかかかかか!!」


 よほど気分が良いのか、ぺらぺらと喋ってくる。

 もはや勝利を確信しているのだ。


「黙れ……! 黙れええええ!!」


 雷を角に集めながら、白竜帝がタイクーンを睨みつける。


「ああ、それは通用しませんよ」


 タイクーンの前の爬虫類人たちが一気に駆け出した。

 そして、白竜帝を取り囲む。

 その手には太い棒が握られていた。


「消えろ!!」

「やめ――」


 制止も間に合わず、白竜帝は雷撃を放った。

 しかし、その雷撃は爬虫類人たちの円陣を超えることはない。

 電撃の威力は、そのまま白竜帝へ返っていく。


「があああああああああああ!!」


 さながらそれは電子レンジのよう。

 円陣は不可思議な力によって繋がり、檻と化していた。

 その中で雷撃が弾き返され続けているのだ。


封雷棒ふうらいぼうと名付けました。

 原理はそう難しいものではありません。

 ()()()()()()()()()()()

 要は異界律を強化しただけです」

「な……がっ……」


 多少の雷ならば耐えうるドラゴンでも、白竜帝ほどの熱量と、大怪我を負った体となれば話は別だ。

 白目を剥いて崩れ落ちた。


「……さて、残るは君たちだけど……」

「……!」


 タイクーンが視線をこちらに向ける。

 一連の流れの中で、実は奴は一度もこちらから注意を切っていない。

 だから、何も出来なかった……!


「ドラゴンを倒すほどの奴らだ。

 もちろん見逃しはしないよ。

 ああ、罠なんかもあるだろうから、ゆっくりすり潰させてもらおうか」


 ずしん、ずしんと迫ってくる巨体。

 白竜帝を凌ぐあの巨体では、床の回転など効きはしないだろう。

 【生】をぶつけるにしても、油断をしていない今、殺し切るまで触らせてくれると思えない。

 切れるカードは、全て白竜幕府に使ってしまっていた。

 詰みだ……。

 どうしようもない……。


「ジゼロジゼロ! 逃げろ!!」

「!」


 この時のための赤い床だ。

 それを破壊したら逃げられる!


「逃がすわけないでしょうが!」


 タイクーンが口を開き、その奥に火がちらつくのが見えた。

 まずい――

 と、次の瞬間――


「ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 ()()()()()()()()()、タイクーンの首に食らいついた!!


「なっ、グアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

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