105・侵深偵団の真実
俺はずっと、爬虫類人たちが白竜幕府であることを隠すために、咄嗟に中立の侵深偵団を名乗ったのだと思っていた。
だから、犯人扱いされたパコニカが激怒したのだと。
だが、違ったんだ。
ダンバドの拷問は、完全に成功していたのだ……!
奴らこそ、侵深偵団だったのだ……!!
「ごはっ……!?」
大量の血を吐き、水宮君がその場に崩れ落ちた。
真っ赤な血が床に流れ出し、その体の痙攣もやがて止まった……。
あまりにも、あっさりと、三将の一角が落ちたのだ……。
「とち狂ったか!!!」
「まさか。正気ですよ」
「正気ならばなぜ……このような暴挙に出た!!」
「陛下。私の名前を言えますか?」
トカゲ人間が、不意に投げかけたその言葉。
「あ?」
よほど意外だったのだろう。
白竜帝は口をぱくぱくさせるのみ。
「知らんでしょう。それが動機です」
「は……?」
「我ら爬虫類人は、奉族としてドラゴンに仕えて来た。
世界の守護者たるドラゴンのしもべとして世界を守る誇りを持ちながら……。
だがっ! あんたらドラゴンには、虫けらのように扱われ続けて来た!
此度の侵攻でも、我らは体のいい鉄砲玉に過ぎん!!
これでは、あまりに報われぬ!!」
感情が堰を切ったように溢れ出す。
トカゲ人間は、泣いていた。
「ゆえに! 我らは白竜幕府を見限った!!
侵深偵団となり、内部から好機を伺っていたのだ!」
「言いたいことはそれだけか……」
白竜帝が傷ついた体を起こす。
「我らは別に縛りはせぬ……逃げたければ勝手に逃げれば良かったのだ……
それを逆恨みし、よくも言ったもの……」
若き帝王は水宮君の遺体に目を向ける。
それから目を閉じたのは、白骨公主を思ってか。
「許さぬ……! 今の余とて、貴様らが如きを灰にするくらいは出来ようぞ!!」
白竜帝の双角に、電気が集まり、スパークする。
「白竜帝……あなたは周りが見えない。
それが最大の欠点です」
「何を……」
次の瞬間、信じられないことが起きた。
白竜帝の近くで蹲っていた苔転君の遺体が起き上がったのだ!
「おお、苔転君……!」
白竜帝が喜んだのも束の間。
「ごあふっ!?」
苔転君の体当たりで白竜帝の巨体が跳ね飛んだ。
そのまま地響きを上げながら床をバウンドする白竜帝。
深いダメージを受けた体のあちこちから血を噴き出し、倒れ伏す。
「が、が……」
とても立ち上がれそうにない。
おそらく今の衝撃で、アバラも軒並み折れているだろう。
口の端からは血の泡が噴き出していた。
だが、それでも彼は言葉を紡いだ。
「どういう……ことだ……苔転君……!」
「どうもこうも……」
苔転君の体から、【死】した苔が剥がれ落ちていく。
下から現れたのは、紫色に変色した、若々しいドラゴンだった。
「わしが侵深偵団の長ですよ」
苔転君の額に、第三の目が開いた……。




