102・白竜陥落
「おおおおおおおおおおおっ!?」
白竜帝が巨大な落とし穴に吸い込まれていく。
時間稼ぎのおかげでリソースが回復し、落とし穴を設置するくらいは出来たのだ。
「若!!」
水宮君が叫ぶが、彼も咄嗟に動けない。
どこに落とし穴があるかわからないが咄嗟に飛べはしないし、下手に攻撃すればさっきの白竜帝の二の舞になる。
ここしかない!
「今だーーーーーーっ!!」
俺の叫びを聞いたジゼロジゼロが遠くでグッドサインを出す。
そして、床の大理石パネルを【岩石操作】の力で押し上げる。
そう、ジゼロジゼロは管理者権限などなくてもこの空間を自在に操れるのだ。
そのまま天井にタッチ。
「行きますわよーーー! 【鍾乳洞】!!」
ジゼロジゼロの【岩石操作】スキルで、天井が波打った。
そこからどんどん大理石の鍾乳石が生成されていく。
彼女から離れた白竜帝の頭上の天井まで、岩のツララだらけになっていく。
さながらそれは槍衾。
さらにそれが捻じれ、ドリルを成す。
「【鍾乳洞ドリル】!!」
別に【鍾乳洞ドリル】というスキルがあるわけではなく、岩石とドリルのスキルを合わせたものに彼女が勝手に技名をつけただけだ。
だが、その間の抜けたネーミングとは裏腹に、極めて凶悪な攻撃が、白竜帝に降り注いだ。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
猛烈な勢いで落下――いや、発射されていくドリルの群れ。
ドラゴンの強靭な肌でさえ、それは貫いていく。
「ぐおおおおおおのれええええええええええええ!!」
白竜帝はでたらめに天井に雷撃を放つが無駄だ。
「悪いですけど、こっちも必死なのですわ!! 【壁ドリル】!!」
「なあっ!? ぐおおおおおおっ!?」
今度は落とし穴の壁から次々とドリルが生成され、白竜帝の体を貫いて――いるはずだ。
角度的によく見えないが、白竜帝の絶叫がそれを示している。
逃げ場の無い穴は、いまや巨大怪獣の顎に等しい。
「やめろ!!」
水宮君がジゼロジゼロに向かおうとする。
だが、俺が両手に【死】を纏わせて立ちはだかる。
「くっ……!」
明らかにドラゴンたちの中で一番冷静な水宮君だけに、リスクに気づいて動けない。
突っ込めば、相討ち狙いの【死】を食らう。
下手に水流や電撃を放てば、また床を回転させられて同士討ちになる。
飛ぼうとすると、天井からドリルが落ちて来る。
別に、詰んではいない。
単にゆっくり進んで、少しずつ攻撃すればいいのだ。
それだけで俺たちは完封される。
それほどに、ドラゴンと人間の間には大きな差がある。
しかし――
「それでは……間に合わん……!」
「があああああああああああああ!!」
高い知性が、戦略的な敗北を悟った。
俺たちを皆殺しにするのは容易い。
だが、それまでに白竜帝は、致命傷を受けるだろう。
「……っ」
ゆえに、水宮君は敗北を悟り――
「降伏だ!! 我らは降伏する!!」
降伏を宣言した。




