100・【エイリアンスキル】
「危ないですわ!!」
水宮君の吐く水流に対し、ジゼロジゼロがゴーレム数体を壁として割り込ませた。
水流はアクアジェットカッターそのもので、ゴーレムすら切断する力を持っている。
だからといって漫画のように即切断できるわけではない。
その僅かな差が、俺の命を救った。
ゴーレムの陰に隠れ、床を操作して一気に離れる。
「すまん!」
「そこはありがとうでいいですわ」
「ああ、ありがとう! あとは作戦通りに!」
「がってんですわ!」
ジゼロジゼロとゴーレム部隊が距離を取る。
壁になってくれたゴーレムが数体、ずるりと滑るように体を切り落とされたが、おかげで俺は無傷で済んだ。ありがたい。
「……残念。二度は油断してくれそうにないな」
水宮君がつぶやくように言った。
それでも生物として巨大すぎるからか、ちゃんと聞こえてきた。
【エイリアンスキル】についてもっと思考を巡らせたいが、その余裕はないらしい。
エイリアンなら頭文字はEではなく、Aだが……今は、言葉通りに受け取っておこう。
すなわち、異邦人のスキルと。
「否! 小手先は不要! ドラゴンの誇りに懸けてすり潰すのみよ!!」
「賛成でさ!!」
炎天君が前に出て来る。
「仲間を殺してくれやがった恨みは、晴らさせてもらうぜ!!
【溶岩弾】!!」
ダンバドの【ラーヴァボム】を遥かに超える、巨大な溶岩弾を吐き出す炎天君。
特急列車のような溶岩の塊が突っ込んでくると言えばいいだろうか。
あんなもの、当たれば蒸発してしまう。
「くっ!!」
床を操作し、一気に横に滑る。
頬を熱風が撫ぜて行く。
「ま、そう来るだろうなぁ!!」
「ならば、こうするに決まっている。【水断流】!!」
そこを狙いすましたかのように、水宮君がアクアジェットカッターを撃ってくる。
「【バナナの木】!!」
進行方向にバナナの木を生成する。
これは単に【バナナ生成】のスキルで木を作る際の便宜上の技名に過ぎない。
だが、技名があると咄嗟の際に段階をいちいち考えずに済む。
瞬時に生えてきたバナナの木に飛びつく。
「なんだと!?」
アクアジェットカッターは、俺のいない動く床だけを切り裂いた。
「味な真似を……」
「こいつぁ肉弾戦のほうが良さそうだなあ!」
「……!」
まずい。
それが一番、恐れていたケースだ。
ドラゴンの身体能力で肉弾戦に持ち込まれる方が、スキル戦よりよほど勝ち目がない。
もちろん、俺たちの勝ち目というのは、時間稼ぎをしてファルケファルケらと合流することだ。
だから、スキルの撃ち合いをしているほうが時間は稼げる。
だが、あれほどの巨体でありながら俊敏なドラゴンが、肉弾戦の中で【死】をむざむざ食らうというのは考えにくい。
もう油断をしてくれないのは、向こうも同じだからだ……。
「ふむ、焦りが手に取るようにわかるぞジーロとやら」
「……」
「なればこそ、今のうちに聞いておこう。貴様はなぜ【エイリアンスキル】を持っている」
……つまり、俺たちなどすぐに殺せるということ。
油断と言えなくもないが、客観的に見ればほとんど事実を述べているだけだ。
だが、時間を使ってくれるならこれほどありがたいことはない。
「【Eスキル】のことか? 精霊から授かったから、てっきりエレメンタルスキルとかそういうことだと思ってたんだがな……」
「……やはりか」
僅かに憂いを含ませて白竜帝が声を漏らす。
「ドラゴンと精霊の古の約定……それはとうに無く、精霊は人につくか」
どうやら、ドラゴンは精霊が直接スキルを授けることがあるのを知っていたようだ。
それをエイリアンと称するからには、俺が転生者だということも見抜いているのだろうか……?
「……どっちにつくとか、そういうことじゃないだろう。
そもそも人とドラゴンが争う理由がどこにある」
「貴様ら人間にはわからぬ。世界の守護者たる我らが、長きに渡り、辺境に押し込められ続けてきた……その苦悩を。ゆえに、その労苦、今度は人間たちが味わうのが公平というものだろう」
「……まぁ色々あるんだろうさ。だからってこっちもむざむざ殺されるわけにはいかないんだ」
「その通り。詰まるところこれは生存競争。されど、白骨公主を、白老を奪われた恨みも当然にある。殺し合うしかあるまい」
「勝手な都合ばっか言いやがって……」
脳裏に浮かぶのは、赤竜公主に変わってしまったスパルネの姿だった。
こいつらの身勝手な侵攻さえなければ、スパルネはあんなことになっていなかったのだ。
「こっちにだって恨みはある! 返り討ちにしてやるからかかって来い!!」
「よくぞ言った!! ならば食らうがいい!!!」
白竜帝が、その双角の間に凄まじい電撃を集める。
それはすなわち、巨大キメラを消し飛ばした必殺の熱量……!!
来たか!!
「消し飛べ!! 【白光閃】!!」
全てが白に染まる。
それはきっと、ドラゴンたちも同じだろう。
やがて、視力が戻って来た時――
「あ、ががが……」
半身を消し飛ばされた炎天君の姿があった。




