31話 ゲート問題の解決後
港町の町長であるポールに屋敷へと案内された賢者たちは、ゆっくりと休んだ。
そして翌日、賢者たちは大部屋に集まっていた。
「それじゃあこれからなのだけど、私は用事があるしルナの事も気になるからここに残るつもりよ。だからソイル達に王都に報告に行ってもらいたいのだけど、いいかしら?」
「了解。シエルとゼータも連れてくけどいいよな?」
「ええもちろんよ。」
2人とも嬉しそうにしてるし、駄目って...言わないけど、言っても聞かなさそうだしね。
それにこっちの用事は私一人でも—あ、やっぱり人が多い方がいいかしら...
「アルスとエリスは私の手伝いをしてくれないかしら?」
「分かりました。エリスはまだ寝てますし、起きたら話しておきます。」
「それじゃあ決まりね。そっちは任せるわ、ソイル。」
「あぁ。」
こうしてソイル、シエル、ゼータの3人は王都へと向かい、残ったヘスティア、アルス、エリスは港町に残った。
「ねぇアルス、あなたに教えてもらった魔法付与を実践で使ってみたわ、教えてくれてありがとう。それと、いくつか聞きたいことがあるのよね。」
「何か問題がありましたか?」
エリスが自室で寝ている中、大部屋に残っていたアルスと、お礼といくつか話したいことがあったヘスティアが会話していた。
「問題はなかったのだけど...えっと、気になった点の一つ目は魔法の威力が落ちていた所ね。そして2つ目は無詠唱で魔法が発動したって事ね。」
アルスは魔法付与を“ある程度魔力操作のできる人であれば誰でも出来る技術”だと言っていたから、いくら魔力捜査が苦手とはいえ賢者である私なら扱えると思ってたし、実際にできた。
そこはいいけど、この2つのこと...特に無詠唱で魔法が扱えた理由が分からないのよね。
「そういえば詳しい話はしていませんでしたね。でもこれ、少し難しいですし、話すと長くなってしまうんですけど、いいですか?」
「ええ、教えてもらえるなら構わないわ。」
魔法を扱ううえで余計な思考が混ざると上手く扱えなくなってしまうかもしれないし、何より話過ぎて嫌われたりしたらどうしよう...。
でもいいって言ってくれたし、頼まれたんだから話さないとだよね。
「えー、魔法の発動とは基本的に準備→展開→詠唱の3段階に分けられます。準備では使いたい魔法に必要な術式や魔力、属性なんかもイメージする必要があります。ほとんどの人が“この魔法を使う”とだけイメージしている所ですね。ほぼ無意識でやる方もいますが...。このイメージが詳細であるほど、魔法の効力が大きくなります。ですが、ただ魔法を使うだけであるならそこまで細かくイメージする必要はないんですけどね。そして次の展開ですが、準備でイメージした術式などを使って魔法陣を展開します。魔法陣無しで魔法を使う場合もありますが、これにもイメージが関わってきます。より詳細に、より強いイメージを持つことによって見える形として魔法陣を展開しなくても魔法が扱えます。ただしその分脳に負担がかかりますし、普通に展開した方がいいですね。そして最後に詠唱は、魔力をさらに消費することによって、魔法の効力を上昇させることが出来ます。これが1つ目の疑問の答えですかね。そして2つ目の疑問である、“無詠唱”に関してですが、まず詠唱するかしないかで変わってくる部分は、魔法の効力と魔力消費量、そして発動のタイミングです。そしてヘスティアさんが最も疑問に感じているであろう“なぜ無詠唱で魔法が扱えたのか”ですが、これには賢者の力が関わってきます。魔法を無詠唱で扱うには術式を変える必要があります。簡単な魔法、例えば初級魔法の術式の改変であっても、一流の魔法使いが10年かけて1つの魔法の研究をし続け、やっと改変できるというくらいには難しいのです。しかし、僕たちにある賢者の紋章の力には、準備→展開のプロセスを補助する役割があって、その一つに術式の改変もあるんです。それにより術式の改編が行われ、魔法の発動が“詠唱し終えた時”から“魔法陣を展開した時”になり、これが無詠唱で魔法を扱うという事になるんです。ちなみに僕が最上級魔法を扱える理由も賢者の紋章の力によるものなんですよ。これがなければ上級魔法までが限界ですから。最後にここまでの事を簡単に言うと、準備は作りたいものをイメージして必要な物を準備する。展開は準備したものを使い、形を作っていく。詠唱は仕上げをして完成させる。そして賢者の紋章の力により、本来“仕上げをして完成“のところ、“形を作って完成“にすることで無詠唱になるって訳ですね。ちなみにヘスティアさんに無詠唱での魔法付与をお教えしたのには、近接戦メインであり、賢者たちの中では魔力が最も少ないヘスティアさんの場合、魔法の効力より魔力消費量と早く魔法を発動させることが重要だと考えたからなんです。」
アルスは長々と解説し終え、一息ついた。
よし、なんとか解説し終えたぞ。
分かりやすく言ったつもりだし、長くはなっちゃったけど、それも最初に言ったし、大丈夫なはず。
そう思いつつヘスティアの方を見ると、困惑しているように見えた。
あ、終わった。もうこれ完全に魔法に関する知識をひけらかす嫌なやつみたいに思われてるじゃん。
傲慢だって思われた?いやでもヘスティアさんを見下したりなんかしてないし…
取り敢えず謝らなきゃ...
「ごめんなさい、ヘスティアさん。調子に乗って解説していたわけじゃないんです。自分なりに分かりやすく伝えるために話していたのであって...」
「別に調子に乗ってるなんて思っていないわ。ただアルスが意外としゃべるんだなって思っただけよ。私の事を考えて話してくれたんでしょ?もちろん感謝してるわ。ありがとう、アルス。」
「よかったです~。ヘスティアさんに嫌われたのかと思いました。」
「アルスを嫌いになんてならないわよ。」
ヘスティアは涙目のアルスに近づくと抱き寄せて頭をなでた。
そして目が覚めて大部屋に来たエリスにちょうどその様子を見られ、ヘスティアが問い詰められたのだった。
ヘスティア達が港街に着く少し前、王都にあるとある一室で一人の少女が目を覚ました。
「ん?」
ここはどこで自分がどういった状況なのかを知るために辺りを見回した。
王城に戻って来たみたいだけど、誰が連れてきてくれたんだろう。
アルス君かエリスちゃんだったらいいなぁ...ってあれ?
...私一人だけ残ってる感じ?もしかして他の皆はもう港町に行ったのかな?
事情は王様に聞けば分かるかなぁ。
白が部屋のドアを開けると、近くに居たメイドが気づいてこちらに駆け寄って来た。
「白様!お目覚めになられたようですね。お体の具合はどうでしょうか。どこか悪ければもう少し安まれても...」
「ううん、大丈夫ですよ。それより王様に会いたいんですけど、いいですか?」
「はい!少々お待ちください。」
メイドは白から離れて玉座の間へと向かっていった。
その後数分部屋で待っているとメイドに呼ばれ、連れられて白は玉座の間へと来た。
「白殿、まずはゲートの破壊、ご苦労であった。して、次は今の状況を説明するべきだな。まず察しの通り、他の賢者たちは既に港町に向かっている。そしてここからが本題なのだが…」
「やっほー白ちゃん、初めまして!水青竜王の星水だよ~。君の事は翔ちゃんから“賢者の中に神を宿してる者がいる”って聞いてたけど、ほんとだね~。」
後ろから青い髪の少女の姿をした者が現れ、白は少し押され気味になっていた。
この人...じゃなくて竜王か、テンション高いなぁ。まぁ嫌いじゃないけど。
それにしても、見た目の年齢は私と変わらないくらいに見えるのに、どこか底知れない感じだったり、裏がありそうな感じがするんだよなぁ。
「えっと、何でここに竜王様がいらっしゃるんですか?」
「そういう固いのはいらないから、ラフな感じで話してね。それでなんで私がここに居るかなんだけど、まず白ちゃんを私の秘境に連れていくため。そのついでに魔物による被害で困ってる海底王国レムトーラを助けてもらおうと思ってさ。ほら、第一の試練的な感じでちゃちゃっとさ。」
どうやら星水は試練を受けに行く片手間に一国を救えと言っているようだ。
…いや、急じゃない?まず何すればいいか分からないし、そんなにピンチなら竜王が自らやればいいのに。
あ、でも竜王って神の使いだし、アステリズムが関係してるのかなぁ?
なんにせよ自分がこれからやることは決まった。
「分かった。レムトーラを救うのが試練だったら...いや試練じゃなくても、困ってる人たちがいるなら救うのが賢者の役目、そしてなにより頼りになるお姉ちゃんの務め!レムトーラを救って、さらに強くなればあの二人のお姉ちゃんとしての地位がより確実なものになるはず!そうと決まればよし、すぐ行こう!!」
「あ、自分の欲求全部言っちゃうんだ。ともかくやる気になってくれたならいっか。て訳なんで、他の賢者が来たら説明よろしくねブラウちゃん。」
「…承りました。」
「も~ブラウちゃんもそんな堅苦しくなくていいのに~。んじゃ、行こうか。」
今度は逆に白に押されつつあった星水とやる気に満ちている白を、“ちゃん”付けされ何とも言えない感情になっているブラウ王は見送った。




