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episode5 謀略と独

シャーレがアカシアの家に帰ってきたのは午後六時を回った頃だった

対抗戦のために買ってきた荷物をベットの上に置いて椅子に座ると机の上に見覚えのないものが置かれていることに気づいた


「花の種…?」


森の民の名は伊達ではなくシャーレはすぐに何の種が察した

リュウノドクガ、かなり広い地域に分布していて独特で尖った花を咲かす植物だ

花びらは主にはちみつ漬けにしたり料理に飾ったり、乾燥させて水に溶かせば頭痛薬にもなることがある


そしてこちらは園芸に関わったものであれば知らぬものがいないほど知られた話で、種には毒があるのだ

個人差もあるが口から摂取した場合、二時間ほどで手足の末端が痺れ始めもし体が弱い人や大量摂取した場合指を折っている間に自発的な呼吸が不可能になり平衡感覚がなくなる

つまり毒薬である


不快そうな顔をしながら一緒に置かれたカードを読む


「……“ コーンシチュー、麦パン、オレンジジュース、サラダ お前が賢いことを願ってる“、か」


ご丁寧に朝食のメニューまで添えられている

四つの種、メニュー表、やらないとどうなるかわかってるよな?という圧がひしひしと伝わってくる

おそらく種一つ程度なら死にはしない、ちょうど朝食に混ぜた場合個人差あれど対抗戦開始から二時間程度で体が痺れてくるだろう

そしてそこにイリューワがタイミングよく一気に制圧、実に見事な作戦だ


「……カミソリの刃が余るな」


持て余すことになった引き出しの中に入れていたカミソリの刃をどうしたものかと悩みながらベットに入ることになった





ーー

朝の鐘の音と共に起きる

いや多分ボクは鐘の鳴る雰囲気を感じ取って起きてるのだと思う

支度をしてからすぐに朝の点呼に向かう


「おはよう」

「うん、おはゆぅノア」


若干まだ寝ぼけているのか、前に歩いているこの後頭部に向かってボクの名前を呼ぶティア

こんな調子で今日からの対抗戦をやっていけるのかと心配になったがやる気の入ったスバルが目に入ってそんな不安が和らいだ


「おはよう」

「おはよう、今日は良い朝だね、快晴だ……これなら俺の力が存分に出せそうだ」


いつにもなく明るいスバル

彼にとって天気は何よりも大事だから今日が晴れで嬉しそうだ


「わぁ!今日はコーンスープかぁ…嬉しいな」


食堂の空いている部分に座って早速お気に入りのコーンスープに手をつけようとすると肩を叩かれた


「おい」

「……イリューワ」


嫌な顔だ、ボクらのことを目の敵にして何かに関しては嫌がらせをしようとするクズ

そしてこの前だってシャーレにしょうもない話を持ちかけていたらしいし


「どうしたんだい?イリューワ、俺たちも対抗戦に向けて作戦会議をしようと思ってんだけど……」


スバルがボクの肩からイリューワの手を退けて間に入る

今にも喧嘩になりそうな雰囲気が一瞬流れたがイリューワは呆れた顔をしてため息をついた


「おいおい、先生がさっきお前たちを自分の部屋に呼んでたんだ、最優秀の一班全員をな」

「ラングレイ大佐がか?」


「それだけだ、全く感謝はされてもそんな失礼な態度を取られる謂れはねぇだろ」


嫌味を言いながら自分の席に帰っていく

ボクらはもっと何か嫌味とかボクらの調子を崩すようなことをしてくるんじゃないかと思って警戒していたため呆気に取られてしまった


「……行こうか」

「う、うん」


ボクらは急いで先生の部屋に向かった







「……どうした?今訓練生は食事中のはずだが」


ノックをして部屋に入ると開口一番そんな返事が返ってきて何がなんだがわからなくなる


「え?先生が俺たちを呼んだんじゃないんですか?」

「……呼んだ覚えはないが?」


そこでようやく合点がいった

イリューワの陰湿な嫌がらせだったのだ、ボクらの食事の時間を削るためにわざわざ先生の名前を出してきたのだ


「どうやら伝達ミスがあったらしいですね」

「……あぁ、そういう時もある、気にするな」


さっさと戻ってコーンスープが冷めないうちに食べから一礼して部屋から出ようとするとスバルが口を開いた


「先生、……シャーレ、彼の実力なら上の班でも問題はないでしょう、なぜ彼を一番戦闘向きじゃない班に入れたのですか?」


まぁボクも少し気になってた部分でもある

格闘術の教習の時チラリとしか見たけど真ん中くらいの実力があった

それに射撃訓練もちゃんとこなせてたからもう少し上の成績の班でも遜色はない


だけど絶対に今聞くことではない

スープを温かいうちに食べる方が重要だ


「そもそも俺は優秀な順に班を組んでるつもりはない、対抗戦の順位をそのまま班の名前につけてるだけだ」

「……そうですか」


今スバルそうですかってわかったふうに答えていたけど絶対に分かってない

顔に「……一緒では?」って出てるもん


「……何も起きませんよ、いや起こさせません」

「そうか」


それだけいってスバルが部屋から出ていく

それを見てティアも一礼して出て行ったためボクも出て行こうとすると呼び止められた


「ノア」

「……っ!?どうしました?」


「……根はいい奴なんだ、だが環境が悪かった、できれば俺はあいつに人並みの幸せをしてほしい……、できればで良いから目をかけてやってくれ」

「……?はい…」


一礼して部屋から出る

時計を見るとすでに十分ほど経ってしまっていて一番美味しそうなコーンスープを楽しめそうにないと肩を落とす


食堂に戻ってイリューワに一言文句を言ってやろうと思って辺りを探す

端っこの方でニヤニヤしている取り巻きを見つけることはできたがイリューワ自身はすでにどこかに行ってしまったらしく食堂にはいなかった

ぶつけ先のない怒りと共に椅子に座る


「ふん!……あれ?」


スープを見ると湯気が出ている

隣のティアのスープからは出ていない、当然スバルのものからもだ

不思議に思って一口食べる


「……美味しい、あれ?なんでだろう」


不思議に思いつつもう一口楽しんでからオレンジジュースに手をつけようとしたら触ってもないのに倒れてしまった

本当に触ってないのにだ、机にも触れてない

正真正銘勝手に倒れたのだ


「−–あっ!?うっそ……!最悪なんだけど…」

「何をやってるん––っ!?……俺も人のこと言えないな」


ほとんど同時に二人のオレンジジュースも倒れた


「不吉だなぁ……」


幸いコップは割れなかったから怪我人は出なかったけど非常に幸先の悪いスタートを切ってしまったのだった


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