episode2 孤立
あの勝負から一週間
多少の慣れが出てくる時期だ
基本的にここでの生活は班過ごすことになる
その班は成績順に組まれることになり僕は一番新入りのため下位の班に入れられることになった
まず朝の六時に鳴る鐘の音で起床する、ベットをきれいに直し寝癖を整え着替えて点呼に向かう
点呼に遅れた班には罰走があり、また一番遅かった班にも罰走が存在する
もちろん食事を摂るのが一番遅かった班にも罰走がある
昼からは練兵場で教習があり、それが終え夕方になれば食事をまた摂り眠りに着く
僕らの班はやはり成績下位のものが集まったため毎回罰走を課せられている
しんどくないわけはないがそれよりも連帯責任というものがかなりストレスだ
けど辛いかと聞かれたらそんなこともない
ここだと三食食べることが可能だし衣服にも困らない、寝床もある
昔を考えれば良い暮らしができている
「随分走るのが好きなんだな?新入り」
シャーレが考えをまとめていると部屋の中に大柄な、他班の男が入ってきた
名前はイリューワ、年はシャーレの一つ上の十四で喧嘩早いのが印象に残っている男だ
「お前浮いてるだろ、それ見てると俺は優しいから可哀想に思ってよ?お前に俺たちの仲間になるチャンスをやろうと思うんだ?」
「俺たち…?」
不思議に思ったが廊下の方に目を向けると逃げ道を塞ぐようにこれまた柄の悪そうな連中が立っていて合点がいく
「俺たち絶対次の対抗戦で一班に勝ちたくてよ、できることは全部しておきたいんだ」
「良い心がけだな」
基本的に数字は小さい方が成績が上位の班となる
イリューワたちは二班、そして一班はスバル達のところだ
「で、お前にも勝利のお手伝いをして欲しいんだ、……あいつらの飯にこれを混ぜろ」
「これは……カミソリの刃?」
しかしカミソリの刃にしては小さく、そして薄い
これなら簡単に口に入れてしまいそうになる大きさだ
「人気者にはアクシデントがつきものだろ?別にやり方はなんだっていい
そうだ!女どもをレイプするってのはどうだ?力ずくで黙らせて一生男には勝てないって植え付けるんだ、教官にチクったら殺すって言ってさ!写真でも撮れば完璧だ」
どうしたものかと悩むシャーレ
別にこの頭の回らない男の話に乗ろうかと迷っているわけではない
そもそもそんな簡単なことで上下が入れ替わるなら僕が来る前からやっているだろう
二年前からトップを独走している班がそんなチンケな悪戯で失墜するわけもないのは明らかだ
そして何よりもこの頭のゆるい男の話に乗るつもりもさらさらない
食べ物の大事さすら知らない人間とはソリが合わないのだ
しかしここでこいつを敵に回すと自分達の対抗戦にも影響が出てくるかもしれないことを危惧しているのだ
「あぁ〜…、あんたみたいに最初に目的を言ってくれる人間は好きだ」
「わかるか?なら契約成立だな」
シャーレは悩んだ末にできるだけ反感を買わないような、曖昧な答えを返した
ーー
「––なら契約成立だな」
話がまとまったらしく部屋からイリューワ達が出てきた
鉢合わせないように咄嗟に隠れて息を殺す
「いや話がわかる奴でしたね〜」
「だな、あいつとは仲良くなれそうだ」
歩いてどこかに行くのを見送ってから一息つく
「困ったかも……」




