episode1 出会い
第一印象はなんて綺麗な子なのだろうと思った
先生が連れてきた新しいボクたちの仲間、真っ白の髪を靡かせた冬風のような子
右目を髪で隠したその子はどこか気品というものが溢れていた
翡翠色の瞳がまるで宝石みたいで綺麗だ
「シャーレ・ラングレイだ」
先生が名前を告げる、先生と同じ苗字
先生の子か、いや先生は確か結婚していなかったから多分親戚の子なのだろう
シャーレ、なんて綺麗な響きなのだろう
友達になりたい、初めてそう鮮明に思った、仲良くなれたらなぁ〜ではなく、なりたいと
「ボクはノア、困ったことがあったらなんでも聞いて欲しいな」
「……どうも」
少し歯に噛むような歯切れの悪い返事が返ってきた
まだ少し緊張しているのか、少し距離も遠い気がする
するとボクが話しかけたのを皮切りにみんなが自分の気になることを投げかけ始めた
「どこ出身なの?」
「好きな食べ物は!?」
「なんで目隠してるの?」
友達になりたいという第一印象、けどそのイメージは一瞬で崩れ去った
「……いちいちうるさいんだけど?騒がなきゃ死ぬなら死んでほしいかもしれない」
心底嫌そうな顔でそう言い放つシャーレ、ボクはすぐさま前言を撤回した
嫌な奴だ
ーー
「なんなのあいつ!」
不満げな声が響く、別に最初から仲良くするつもりはなかったからどうでもいいがここまで露骨だと普通に不愉快に感じる
「声を抑えて、すぐそこにいるから」
「良いのよ!聞こえるように言ってるから!」
三つ開けた席に座っている三人組
確か今注意している金髪の男がスバル、大声で聞こえるように僕に向かって文句を言っているのがティア
「まぁボクもどうかと思ったけどね!」
不貞腐れてるような感じなのがノアだ
そして同時に彼らがアカシアの家で成績最優秀の班だ
一日経たずで九割以上の人間に嫌われてしまったが特段問題は無い、なぜなら僕の目的は仲良しこよしで暮らすことではないからだ
一人で黙々と食事を摂っていると正面に誰かが座る
とんだ物好きだと思って顔を上げると三人組の一人、スバルが座っていた
「影口はあまり好かない」
「あぁ、僕もだ、たいていそう言った人間に限って食事中にわざわざ話しかけてくる迷惑な人間が多い」
何しにきたのだろうか、さっさとどっかに行けと念を飛ばしながら無視して食事をしているとプレートをスバルが引っ張って僕から遠ざけた
「しかし君の態度もあまり好きにはなれない」
「そうか、それを面と向かって本人に伝えるとは随分と人付き合いが上手いらしいな」
鼻につくこの態度、僕も気に入らないと思ってきた
人がご飯を食べてるのだから後でにしたら良いものを随分嫌がらせが好きらしい
「お互い最低限接しない、それで良いのにわざわざ関わってきて、随分面白い思考回路を持ってるんだな、叩けば一天地六でも出そうだ」
「あくまでその態度を崩さないんだな」
呆れたような素振りを見せるスバル
すると近くにあったテーブルに置かれていたボードを持ってきて正面に広げる
「キング&ナイツだ、ルールくらい知ってるだろ?俺が勝ったらその態度をやめてみんなと仲良くしてもらう」
「僕が勝ったら?」
キング&ナイツ、老若男女で人気のあるボードゲームだ
戦争を模した性質上戦略的な要素が非常に強く兵法を遊んで学べる面白いゲームだ
「……考えてなかった、昼ごはんを邪魔されずに食べれるとかはどうだ?」
「お前じゃ千回やってもヨットは出ないぞ?」
先手は相手から始まった
定石通りの立ち上がりだ
数手交わスト互いの癖がわかるのがこのゲームだ
やけに守りを重視したり、逆にどんなにコマを取られてもキングを取りにきたりとだいたいの性格がわかる
「教科書が愛読書か?」
「……っ!そういう君は捻くれてるな」
揺さぶりをかけて行く
さっさと終わらせて食事を取りたいのだ
今の僕に花を持たせる気なんてさらさらない
「ミスったな、ここまで長考をされると思わなかったからタイマーがないな
この手も教科書に乗せてもらっておいた方がいいな」
「……この手でどうだ」
予想通りの手が帰ってきたのであらかじめ考えていた駒を進める
いつもならもっとゆっくりと指すのだがプレッシャーを与えるためにわざとやっている
「これどっちが優勢なの?」
ティアがそんなことを聞いてくる
ボクもさほどキング&ナイツに詳しくないからはっきりは言えないが盤ではなく人を見れば結構分かりやすいかもしれない
スバルが少し考えながら指してるのに対してシャーレはスバルが置いた瞬間に差し替えしている
この差がどれほど結果に左右してくるのかわからないが少なくとも余裕があるように見えるのは明らかだ
「わからないけど……スバルがこんなに時間をかけるのって初めてじゃない?」
そうとしか返せなかった
口が裂けてもスバルが押されているとは言えなかった
絶対負けてほしくない、心からそう思った
「…あっ」
よそ見をしながら歩いていた人が、机の足に引っかかってこける
そして咄嗟についた腕が二人の机を巻き込んで倒れた
「わ、悪い…」
「いや、大丈夫か?」
手を差し出すスバルとは対照的に盤を拾って駒を並べ始めたシャーレ
「さっさと続きをしよう」
「……盤面を覚えてるのかい?」
その一言にスバルが戸惑い聞き返す
少しズレたとかではないのだ、盤がひっくり返ったのだ
それなのに駒を少し見覚えのある形に並べるシャーレは少し考えたそぶりを見せてからため息をつく
「……いや、覚えてないならいい、後から文句をつけられても困るからな」
そう言って落ちたパンを拾って口に運ぶシャーレ
それを見たティアが「汚っ」と言葉を漏らす
そんなことよりもボクはほっと安堵したような息をついたスバルの姿を見てなんとも言えない気持ちになってしまった
変なクラムボン「一度落とした食べ物を食べるのは汚い!とよむもの達は思うかもしれませんが3秒ルールがあるのでセーフです」
右下謎クラムボン「と見せかけてしっかりダメだから衛生管理には気をつけた方がいいね」
変なクラムボン「しかし食べ物を大事にする考えの方が大切なので大丈夫でした」




