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episode38 襲撃〈信頼と後悔〉

シャーレは慣れない手つきで装甲車を運転し、魔力探知と音から大体の場所を割り出してラングレイたちが戦っている場所まで向かう


「思ってたより離れてなかったな」


目の前が見えなくなるほど濃い霧がすぐそこの境目を超えた先から広がっており、シャーレはその手前に装甲車を止めた

援護に行こうにもこの霧の中では五感のほとんどが役目を果たすことができず、また霧の中をラングレイは完璧に把握できるため戦闘中に入らない情報を与えて変に気を散らさせないようにシャーレは自分の治療をしながら待つことにした


「……終わったか、迎えに行くとするか」


ラングレイの異能を解除したらしく霧がだんだんと晴れていく

シャーレは戦闘が終わったことを理解してエンジンをかける、しかし発進しようとペダルを踏み込んだ瞬間、スバルの爆発するような魔力の膨張を知覚した


「––っ!?……どういうことだ?」


シャーレは装甲車を急いで走らせる

焦りからか無自覚に瞳が赤く染まり魔力がブレる


「…………は?」


渦中にいたのは腹から流してはいけない量の血が流れているように見えるラングレイに必死にその血を止めようとするティアとノア、そしてラングレイに相手を近づかせないように守りながら戦うスバルだった

シャーレは言葉を失った、絶対の信頼、絶対に負けるはずがないと思っていたラングレイが倒れている、その事実を受け入れられずにいた



「…………は?いや、……敵の幻術か?」


ラングレイに昔教えられたように瞳に魔力を込めて必死に幻術を暴こうとするシャーレ、しかし何度試してもその幻術が晴れず怪我をしている右肩に思いっきり手を突っ込んだ


「−–何をしているんだ私は!」


「「––っ!?」」


シャーレは思いっきり装甲車を走らせ褐色の男を吹き飛ばしラングレイのすぐそばに停まらせた


「ラングレイ!何をしているんだ!」


すでに意識が朦朧としているのか、しかしそれでもシャーレの声に反応し視線を向けるラングレイ、完全に腹に穴が空いていてすでに助かるような状態では無いことをシャーレは嫌でも理解した


「シャーレ、ごめんなさい、私たちを庇って先生が……」


ティアの言葉を聞いてシャーレは自分の最もドス黒い感情の部分をぶつけようとした、しかしラングレイの目を見てそんな自分の浅ましさを嫌悪した


「……君たちだけでも生きていてくれてよかったよ」


必死に感情を取り繕ってその言葉を紡ぐ、それにラングレイは少し満足そうに、けれど悲しそうな目をする、それから体を少し起こして、掠れる声でシャーレに何かを伝えようとする


「……!?」


すぐにそのことに気づきシャーレはラングレイの口元まで耳を近づけた、そばの二人も今だけは音を出さないように気を使う


「……逃げろ、撤退してあいつの情報を伝えろ」


「……あぁ」


「それから……」


ラングレイは一瞬その言葉を飲み込もうとした、しかしシャーレの目を見て確かに伝えた


「俺には過ぎた息子だったよ、……お前は俺の宝物だった」


まるで体の中に残っていたものを全て出し切ったような、激痛で苦しいはずなのに満足げにラングレイは事切れた

シャーレの頭がぐちゃぐちゃになって悲しさと後悔が押し寄せてくる



「ははあはっ!死んだ!ついに死神を殺したよ!兄さん見てるかい!」


「……あ゛?」


背後から聞こえた神経を逆撫でする声にシャーレは自分の声とは思えないほど低い声が出た、振り向くとそこには褐色の肌をした男がスバルの首根っこを掴んで立っていた


「あぁ〜楽しい、……?お前がいるってことはリリーは死んだのか、使えないやつだなぁ、まぁいいかあんなやつ、改めて俺の名前はジャック・グルーツェ、言わずとしれた七賢者最強の第一位だ、覚えておいてくれよ?クソガキ」


ジャックと名乗った男がスバルを宙に投げ、その腹を強く蹴ってシャーレたちの方に蹴り飛ばした、そして狂ったかのように自分以外の全てを嗤う


「ティア、ノア、スバルを連れてあの男の情報を上に伝えろ」


「わ、わかったわ!」


ティアは急いでスバルを背負って装甲車に積み込みエンジンをかける、ノアもその後ろをついて行こうとしたがシャーレがついてこないことに気づいて立ち止まった


「……君はどうするつもりなの?」


シャーレは自分の部隊章をちぎってノアに預ける、そして今まで見せたことのないほど穏やかな表情で笑い親愛の意を込めたハグをした


「帰ったらみんなのためにラーシュを作るよ、私好みの珈琲を淹れて、その前にラングレイを弔わないといけない、血は繋がって無いけど私の父なんだ」


「……楽しみにしてるから」


ノアは力強くシャーレを抱き締め返して装甲車に乗り込んだ

小さくなっていく装甲車を見送ってシャーレは再びジャックと相対する


「なんだ、お前は逃げないのかぁ?今なら俺気分はすげぇ良いから見逃すぜ?クソガキよぉ」


「なんだ、お前逃げないのか?今、私は苛つきすぎて手加減できそうにない、本当に殺すぞ?雑種」


シャーレは返答と同時に異能を使った、空気中の水分が水蒸気になり段々と気温が下がっていく、水滴があたりに散り始めて、やがて霧となった


「“霧の街(ロッド)”」



変なクラムボン「あかん!ラングレイが負けてしまった!これじゃ猿どもに「ここで死ぬ人初めて見たw」ってコメントを打たれてしまう!」

右下謎クラムボン「と見せかけて何度繰り返しても敵が最初にティア狙うせいでラングレイ庇ってしまうという負けイベントだね」


変なクラムボン「この眼帯掠れ声おじさんは弱いんじゃないか?」

右下謎クラムボン「と見せかけてゲームのプログラムを書き換えて時間を止める力を手に入れた千一卜使いことジャックの兄をたった一人で倒した英雄ことロッド・ラングレイだね」


変なクラムボン「体から煙を出すだけなんて弱いんじゃ無いのか?」

右下謎クラムボン「と見せかけて霧の中だと一方的に相手の位置がわかって攻撃ができる上に遠距離も強くて近距離も強く、行く宛のない子供のシャーレに戦い方と充実した衣食住、そして不器用ながらも本当の子供のように愛情をかけた人間の鏡ことロッド・ラングレイだね」


変なクラムボン「いやいややっぱり弱いでしょ、全身から煙を出すくらいなら全身から致死量の媚薬を出したほうが強いと思うのでやっぱり弱いです」

右下謎クラムボン「もう死ね」

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