episode35
耳につけている連絡用の小型魔道具、それがずっと震えていることにフェリシアは気づいた、まだ気づいていないシャーレの肩を叩いて教える
「耳のそれ、ずっと震えてるよ」
「……壊れてるな」
そう言って軽く手のひらで何度か叩くシャーレ、すると一瞬亀裂のような音を出してから通信を繋いだ
《……随分と環境の悪いところにいるらしいな》
「……話はスバルから聞いてるだろ、おそらく転移の際に魔力に当てられて調子が悪くなってたらしい、要件は?」
シャーレが先ほど話題にしていたせいか、ロッド・ラングレイの低い声が耳に響く
先ほど七賢者を私情で見逃した今、シャーレにとって最も会話をしたくない相手だ
《……七賢者が戦場に出てきた》
「それは怖い、出会いたくない相手だ」
《……まぁいい、その影響で俺も戦場に出ることになった、今モタニアにいる、……いい豆を持ってきたんだ、……珈琲を入れてくれないか》
不器用だが頑張ってシャーレとコミュニケーションを取ろうとするラングレイ、しかしそれを冗談だと思ってシャーレは軽く流す
「それよりだ、原因不明だが僕と同じように転移させられた人がいるんだ、名前はフェリシア・アンダーソン、アドルフ少尉の妹だ」
《アドルフ少尉の妹?……無事か?》
「目立った外傷は無し、精神状態も安定している、主戦場から離れた経路を通っているから大きな接敵もない、今日の夕方にはモタニアに着くからベッドを一台…いや先に食事か、何か精のつく食事を用意してやっておいてくれ、それと家族か無理ならアドルフ少尉を呼んでおいてくれ、身内がそばにいた方が安心できるだろ」
《……待て、食事などについては理解した、だが小規模とはいえ魔力災害の被害者の可能性があるのだろう?今なんともなくとも後から影響が出る場合も多い、先に病院だろう》
「……いや、すでに僕が手を打った、経過観察とかは必要だが先に休息を取らしてやってくれ」
《……了解した》
通信を切断し、ため息をつくようやくこの二人旅の終わりが見えてきて安心したのか疲れが押し寄せている、そんなシャーレに気を使って少し離れた位置で待っていたfエリシアが耳につけている通信用の魔道具に興味の視線を向けながら話しかけた
「今のって上官さん?軍の機密を話してたのかい?ていうかその魔道具すごく格好いいな、夜抜け出す時に友達と細かい打ち合わせができるじゃないか、それにステージの上で観客の声にかき消されずに指示を出せそうだし」
「格好いい?……まぁ便利だよ、今だって顔を合わせずに君を保護していることを伝えれたし」
「えっ、ボクのことなんて伝えたんだい?やっぱり稀代の奇術師かい?」
「敵国の女スパイって伝えた」
「えぇ〜!?」
大袈裟なリアクションをとるフェリシアに「冗談だよ」と言う
シャーレの予想とは違い、モタニアには四時間程度でついた、人工的な建造物が見えた途端フェリシアは気が抜けたらしく倒れてしまった、ただ一言「よく頑張った」と一言声をかけフェリシアに声をかけ背負い、低く分厚い星形を模ったレンガの城壁を潜る
こうして二人の一週間にも満たない、けれどとても長かった旅は終わりを迎えた




