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episode33 英雄が恐れた剣技

肌に染み込むような雨の中、生身の刀身を魅せながら時雨を背負うシャーレにフェリシアはとてつもない不安感を覚える


(なんで?なんでボクの心臓の鼓動は加速する!?なんでか全くわからないけどすごく嫌な予感がするぞぉ!?)


シャーレの雑な対応のせいで文字通り草葉の陰から土の匂いを嗅ぎながら観戦するフェリシア、しかしそんな彼女の心配が伝わることはなくシャーレたちのボルテージが上がる


「ほう…剣を得意とするのか、魔術師と剣士、時代錯誤とは言わせまい、手塩にかけて育てた部下の敵だというのに少し昂ってきたよ、“鉱石を飛ばす魔術”っ!」


一度に七つの魔術がシャーレに向かって打ち込まれそれが絶え間なく連続で行われる

それに対して最低限致命傷になり得る軌道のものだけを斬り時折懐に飛び込んでは障壁に阻まれ致命傷を刻むことのできずにいる


「流石に硬いな!」


「当たり前だ、貴様の技は俺には届くことはない」


「ははっ!言うなぁ…まぁいいよ、久しぶりだ、人に向けて技を使うの」


シャーレが刀を鞘に納め、鯉口を切る


「水妖花・一輪」


瞬間アラクは自分の魔力障壁に衝撃が走ったことでようやくシャーレが刀を振ったことを知覚した


「そこそこ楽しめたぞ!“鉱石を飛ばすっ––う?」


一気に反撃を仕掛けようと右手で杖を振ろうとし、腹に激痛が走った、視線を向けると腹からは血が流れており、あと少しでも深かったら腑が千切れ落ちてただろう傷がそこにあった


「憑夜酔時雨・四季」


先ほどと同じように刀を鞘に納めたシャーレ、しかし先ほどとは違い刀身が黒金色に

色を変え雨粒が理に逆らって宙で止まっていた

アラクは二千を超える模擬戦とその半分ほどの実戦の経験、第六感のような説明のつかないもののおかげでこれから起きることを先取りすることができた


一撃目の居合で首を切り落とし、先ほどには無かった二撃目で肩から袈裟斬りにされる、そしてなんらかの条件をいつの間にか満たしことによる刀の成長もしくは進化

今度は障壁を挟んだ状態で食らったとしても確実に死ぬ

そう考えたアラクの体は大きく沈み地面に落ちた


「––っ!?」


目の前からまるで地面に吸い込まれるように消え、その影響で一撃目は宙を切り確かに身体を縦に捉えた二撃目はかろうじて右の肘から先を掠め取っただけであった


シャーレはその事実に一瞬固まる


(消えた、魔術じゃない…!、見間違え?いや幻覚…)


ほんの一瞬、おそらく瞬き程度の硬直だった、しかしその一瞬が命取りになった

シャーレの()が不気味に蠢く


「影渡り…俺の異能だよ、“鉱石を飛ばす魔術”っ!!」


空間が歪むほどの魔力が込められたアラク最大威力の一撃

鉱石を飛ばす魔術がシャーレを背後から襲った




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