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episode32 

ようやく道に出ることができたシャーレ達

しかし道といっても整備された平らな道というわけではなく人によって地面の露出した土の道、右を見れば森、左を見ても森といった人の通りが少ないであろう道だった


「ボクの信条をここで一つ!辛い時でも相手に優しく接すること」


「そうか、良いことだと思うよ」


綺麗な笑い方をするフェリシアを軽く流しながら歩くシャーレ


(……凄いな、フォローが必要ないくらい心が強い、…いやだからかな)


口にはしないが内心フェリシアのことを褒める

職業柄いくら日頃から旅に耐性があるとはいえほとんど他人の相手と碌な食糧も確保することが難しい上にいつ凶弾が自分に降りかかるかわからない状況での二人旅、それがもう三日も続いているのだ

イラつきを隠せなくなったり言うことを聞かなくなったりしてもなんらおかしく無いというのに出会ってから今まで笑顔を絶やさずむしろ自分のことまで気遣う姿にシャーレはどこか納得していた


「はーっはっは!そうだろうそうだろう、褒められると嬉しくなっちゃうなぁ––ぁ!?」


胸を張って笑うフェリシアを無理やり自分の方に引っ張って地面に組み伏せるシャーレ

その顔は至って真剣そのものでフェリシアは一瞬で緊急事態だということを悟った、そしてその考え通り、シャーレとフェリシアの二人が立っていた一直線上を先の削られた岩石が高速でなぞった


「な、なんだ今の!?音が全くしなかったよ!新型ってやつなのかい!?」


(いや……銃じゃないっ!今のは“鉱石を飛ばす魔術(ロック・ブラスト)“、それも人体程度なら余裕で貫通する威力だ)


すぐさまシャーレは岩石の飛んできた方向に射撃して牽制する

キンッという金属のような硬い物体にぶつかったような音が鳴り響き、草むらの中から四人の兵士が出てきた


「驚いた、まさか避けるとはな、見たところそっちの嬢ちゃんは…兵士じゃないみたいだがまぁしょうがないと割り切ってくれ」


シャーレは姿を現した四人とは別にまだ伏兵がどこかに倒れていることを前提にしてフェリシアの前に立って遮蔽物の代わりを果たす


(銀の杖と本の紋章に加えて黒をベースにしたローブ……まさか)

「……七賢者か」


「おや、親交のない国の、しかも一介の兵士がこの紋章の意味を知ってるのか

なら名乗ろう、七賢者第三位のアラクだ、悪いが接敵した相手は確実に殺せと言われている、すまないが君たちの命を貰い受ける」


その魔力の圧に一瞬押されるシャーレ、しかしすぐに負けじと魔力を解放して対抗する、フェリシアを必ず安全なところに連れて行くことを忘れずに


「見たところ四十は超えてるだろう、なら知ってるか?ロッド・ラングレイを」


ラングレイの名前を聞き固まるアラク、一瞬だったがその表情から笑みが消えたのをシャーレは見逃すことはなかった


「あぁ知ってるとも、『死神』ほど有名な奴はそういない、事実俺も二度ほど死闘を繰り広げたことがある」


「そうか、ところで私の師は隻眼の男でね、先の戦争時に左目を失ったそうだ、曰く時間を止める異能者と空間を操る異能者と戦ったとか、その経験から教訓を得たらしく一つ教えられたことがあるんだ」



(……口調が変わった?それに魔力が一瞬で凪いだ)


アラクは自分が無意識の内に後ろに後退りしそうになったことに気づき、半歩前に足を出す、その直後シャーレの魔力が滾りアラクの魔力とぶつかりあい風が起こる


「なんだ?七賢者とは戦わずに逃げろとかか?」


「いいや……見敵必殺、構わず殺せだ」


「そうか、後悔するなよ、––“鉱石を飛ばす魔術”ッ!」


シャーレはフェリシアを脇に蹴り飛ばし、一番遠くに位置取っていた兵士に向かって銃弾を撃ち続けながら近づく、当然魔力障壁で防がれる結果に終わったがそのまま構わず至近距離から打ち続ける


「うっ…!」


「馬鹿野郎がっ!“土塊を操る魔術(アースコマンド)”」


誤射を恐れた部下を叱責し、すぐに別の魔術を使ってシャーレを引き剥がそうとするアラク、しかし対応が一瞬遅れたせいか、シャーレと兵士が引き離されるよりも早く兵士の魔力障壁が破れ障壁内に血が飛び散った

シャーレが地面にできた血溜まりに触れる


血汐を泳ぐ(ヴァイン・シテルン)


血が霧となって辺りを埋め尽くす、すぐにアラクは近くにいた部下を自分の方に引き寄せて背中合わせの形を取らせる


「障壁を張って魔術を待機させろ、勝負は一瞬だ」


(かかってこいっ!すぐにその腹抉ってやる…!)


アラクの意気込みとは裏腹にすぐに自分の背中を守らせていた部下の気配が消えた、すぐに振り向き確認したが声すら上げずに跡形も無く消えていた

五分立たずに霧が晴れ、アラクの目に映ったのは斬られたことにすら気づいていないように見える自分の部下の死体だった、それも物陰に忍ばせていた伏兵も合わせてだ


「……っ!ドレイブンの白い死神か、なんの因果か『死神』の弟子がそう呼ばれてるのか、しかしわざわざ霧を晴らして姿を見せたのは完全にカウンターを狙った俺に恐れたようだな」


「想像に任せますよ」


図星を突かれたが表情を一切動かさずに対応するシャーレ、しかしそれでもアラクは手が出せなかったのだろ察した、そしてその構えを直すことなくカウンター狙いを続ける


シャーレは自分の手首を斬り、手のひらを垂れる血を撫でる、それが円を描き、宙にうねりやがて刀の骨を組み、そして明瞭な柄が浮き出し喪失感を訴える妖艶な刀が姿を現した


「憑夜酔時雨……完全権限」


シャーレが()()を鞘から抜いた瞬間、溶けゆくような雨が降り始めた


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