episode30
フェリシアが唐突に体を大きく縮こませる、虫でも飛んでいたのか顔の右側を腕で振り払いながら、シャーレがどうしたのかという視線を向けると話の最中だったの思い出したのか臀部についた砂を払ってから座り直した
「ごめん、でなんだって?」
「四季、僕はそれのあるところで生まれた、……四季ってわかる?」
一応言葉の意味を理解できているのか尋ねる
するとこの単語に嫌な思い出でもあるのか少し嫌そうな顔をする
「あ〜、はいはい、知ってるよ?四季折々って奴でしょ、確か昔本で読んだんだよね、……いやお父さんに教えてもらったのかな?よく覚えて無いな、けどあんまり良いイメージはないな、なんでだろう?」
「博識なんだな、イメージが悪いのはおそらく覚えた時によく無いことでもあったんだろう」
「そうかな?」
シャーレは素直に感心する
本で読んだにしろ父親に聞いたにしろこんな言葉を知ってるのは随分と教養がある、手品にしろオペラにしろ人を楽しませる職業には一定の教養と常識が必要になる、きっと彼女の父親はいい父親なのだろう
「で、さっきの話に戻すと、君がもし将来困ったことになったら僕の祖国を目指してくれ、そのお守りを見せれば力になってくれるはずだ、確実に」
「ボクが困ったことになったら…?人気者になりすぎた時とかかい、なら一応その国がどこにあるか教えてくれないか?」
素直にシャーレの言葉を受け止める
シャーレはそれを見て安心したような顔を見せて笑う
「いや…、もし本当に君が困っている時なら精霊が導いてくれる、烈火の精霊がね」
「精霊信仰…、君の言葉を信じるよ、この希代の奇術師、きっと将来困ったことがあったら君の言葉を思い出すと誓うよ」
その言葉をレーションと一緒に流し込んでシャーレが立ち上がり歩き始めた、その後ろをフェリシアは鼻歌混じりについていく
「面白い話でもしないかい?」
「……君じゃなくて僕がか?まぁいいけども、……面白い話か」
シャーレは少し考えこむように黙り込む
そこで自分が疑問に思い昔調べたちょっとした歴史の事を思い出した
「銃火器はわかる?これのこと」
「当たり前のスケッチだよ、君を描いてやろうかってんだい」
小銃をわざわざ見せて確認するシャーレに自信満々に、そして少し不服そうに答えるフェリシア
「銃の歴史って少し不思議なんだ」
「どんな感じで?」
フェリシアが少し興味を持って聞き返す、シャーレは簡単に理解ができるように噛み砕きながらの説明を始めた
「一番最初に登場した銃アキシナナは精霊暦543年に生まれたんだ、開発者は不明」
「へぇ〜、なら四十二歳の銃なんだね」
「そうだね、現行のものとは違って当時のものは命中制度、有効射程は低かったらしいね、まぁ当時アキシナナの利権を持っていた唯一の商会が小国の国家予算程度の利益を出したんだけどね」
小国の国家予算、それを聞いてフェリシアはジッとした視線をシャーレが持っている小銃に向ける、それに気づいたシャーレが少し笑う
「鉄砲はすごく画期的な発明だ、本当にね、魔力を使わない魔道具、小型の大砲、当時はそう呼ばれるほどだったらしい、けどどうだろうか、そんな発明品が突如現れたなんて不思議じゃないか?」
「突如?よくわからないけど発明は突然と言わない?」
「もちろんそうだよ、けれど当時は今と違って魔術全盛期だ
各国が挙って魔術師の育成に力を入れてたんだよ?大砲だって魔術師の劣化版と呼ばれたいたんだよ?なのにわざわざ小型化する必要はあったのかい?それに当時は対人用の武器を発明するよりも対魔物用の兵器や生活を豊かにする魔道具が必要とされてたんだ、道具は必要とされてこそ生まれる、その理屈を根底から覆してるんだ」
「……はぇ〜、不思議だ、“どれだけ楽をするかの思考が閃きに繋がる”って言葉もあるもんね、確かに不思議だ」
フェリシアの言葉にシャーレは腑に落ちた感覚になる
自分が持っていた違和感を表す言葉だったのだろう
「はーっは!わかったよ、君はつまりこう言いたいんだな?これは誰かの陰謀だと」
「……極端だなぁ、まぁそういった可能性もあるな、精霊歴543年以前は国家間の戦争は半世紀以上なかったのに大きな戦争がここ四十年で戦争が四度起きてる、僕がもしアキシナナの開発者に出会ったら……まぁよしておこうか」
シャーレは気づかれないように拾った小石を握りつぶして怒りを抑えつけた




