episode27
特務第909班、通称アウル班に一つの通信が入った
現在地から南西にあるベルー橋、そこの北側砦が陥落、アウル班は今から現場に向かって第701歩兵中隊と合流してベルー橋の奪還作戦を命じられた
すぐに向かったアウル班、彼らを迎えたのは地獄だった
二割が戦闘行為が不可能な重症者、補給はおろかすでに包帯の大替品として死体の衣服を剥いで使う、士気は低く脱走兵が出ていないだけまだマシと言った状況だ
「特務第909班班長スバル・レッドソード以下三名只今現着しました」
「……ッ!?噂は聞いてるよ!、よく来てくれた、ここの中隊を率いているレグレット中尉だ、と言ってもつい昨日まで一個小隊を率いているだけの少尉だった」
そのが目が示すアウロ隊に向けられた期待、けれど彼らも魔法使いでもなんでもない、生身の人間だ、怪我人を走れるようにすることも足りない物資をどこからともなく補充することもできない
「以降我々特務第909班はそちらの指揮下に入ることになっています」
「そうか……、そうか、………本部は我々にこの戦力でのベルー橋北部基地の奪還を命じた、しかし戦力差は歴然、奴らは兵、物資共に潤沢なのに対して我々は消耗する一方、しかし撤退は許可されていない、徹底抗戦の姿勢を貫くしかないのだ」
決死、その覚悟を抱いているのか、いや抱いてはいないがすでに生を諦めているのだろう、命令に違反すれば軍法会議にかけられる、遵守すればおそらくわずかな確率で生き残れる、だから戦う、それだけのことだろう
シャーレが進言する
「僭越ながらレグレット少佐、工兵を少し私に預けていただけないでしょうか、明日の明朝までにやっておきたいことがあるのです」
「……君が『白雫』だな、工兵か……いいよ、許可するよ」
ーー
ベルー川の南側と北側を繋ぐ全長245mの石造りのアーチ橋、現在は北側を拠点とし大隊規模の敵歩兵部隊が占拠している、ベルー橋はエリーシェ王国にとって歴史的に見ても軍事的に見ても重要な土地であり南下すればエリーシェ王国内部を走る蒸気列車、西側の下流には今も奮闘している味方軍が守るアッカム砦が存在しており突破された場合主要補給戦の麻痺に加えてオルガ王国軍が雪崩れ込むように内地に入ってくることになる
「あんた昨晩何してたの?」
配給されたラスク状の乾パンに塩漬け肉を食べているとティアが尋ねる、ここ二年間戦地にずっといるため子供の頃から伸ばしていると自慢していた長い髪を短く切り、顔には煤や土塊などの汚れがついている、昔だったら考えられない見た目になっているがしかしその目だけは変わっていない
「………あぁ」
対してシャーレの瞳は澱んでいてティアとは対照的に伸ばした髪は不気味に汚れなく白く目立つ、だけど髪はボサボサで白かった肌は汚れ確かに戦場にいることを示している
「……本当に大丈夫?」
「……大丈夫」
微笑むシャーレに距離を感じるティア
拒絶とも違う壁がこの二年間でできてしまった、そしてその壁の取り払い方もわからない、ティアだけじゃない、アウル班の全員が感じていることだ
「……っ!」
発砲音、橋上での両軍の睨み合いが続いてる状況が続いていたが突然の発砲音が空に響いた、一気に二人は傍に置いていた武器を持って基地から顔を出す
「……考えたな」
橋の横一列に展開し、進む戦車、その後ろに歩兵が隠れながら橋を進んで来ている
戦車の強みはその機動力、動きが制限される上に後退もできずにしかも橋が破壊された時に川に落ちる可能性がある運用は、誰が考えても愚策、だというのにたった今橋を確かに渡ってきている
「白雫殿!」
「少佐、対戦車砲は?」
「あるにはあるが砲弾が無い上に砲兵は北部基地に行ったきり帰ってきていなくて残りは逃げた、ちなみに手榴弾はある」
だがもし対戦車用の武装がなければ?戦車の装甲を破ることができる武装がなければ?
完璧な盾ができる、主砲を打てば橋が崩落する可能性のせいで能動的な攻撃手段がないとはいえ橋を渡れさえすれば戦力差で楽に制圧することができる敵軍
側面をつかれることのない戦車を盾にすながら進む、それだけで何もできないのだ
「手榴弾しかない」
「……僕とスバルが先陣を切って戦車を破壊します、しかしただ一つお願いがあります、本気で異能を行為するので兵を近づかせないでください」
シャーレの瞳が赤く光る




