episode26 白い悪魔
「お願いだ…!故郷に盲目の彼女がいるんだ、俺がいないと身寄りのない彼女は生きていけなんだよ!分かるだろ!?頼むよ…」
––引き金を引く
「まだあいつに思いを告げていなんだよ!見逃してくれ!」
ーー引き金を引く
「……地獄に堕ちろ」
ーー引き金を引く
「妹がな、王都の学校に入学するんだ、……せめて晴れ姿だけでも見たかったよ」
ーー引き金を引く
「死ね、死ね死ねって、うざいんだよカスが、死んでくれよ」
ーーナイフを押し込む
引き金を引く、ナイフを押し込む、殴る蹴る石で顔を潰す、鼻と口から砂を入れて窒息させる、
人を殺すのには抵抗はそこまでない、けど悪人を殺すのとは違う感覚が自分を襲う、引き金を引けば人差し指に残る抵抗のように心の中にこびりつくそれ
日に日に眠れる時間は少なくなっていき心身ともに疲弊してくのがわかる、目を閉じれば殺した相手の顔が浮かび心の中で最後の言葉が反芻される、耳鳴りが止まない、次第に考えるのすら面倒になってきた、空笑いしかできない
だけどそれよりも辛いのはこの感情を共有できる相手がいないことだ
侵略者、スバル達やエリーシェ王国軍人がオルガ王国人を呼ぶときに使う言葉だ、他にも北の野蛮人、悪魔、クズ、上げようと思えば無限にある
僕はエリーシェ王国で生まれたわけじゃないしエルフだ、だから正直エリーシェ王国人もオルガ王国人も人族という括りで見ている、だからわかる、この戦争で相手しているのは生身の人間で殺しているのは国に戦わされている帰りを待つ人がいる人間だ
けどスバル達にとって殺しているのは侵略者だ、人間ではない、人の形をした悪魔だ、淘汰すべき野蛮人だ、だから殺して誇りに思うことはあっても心を痛めることはないのだ
だから辛い、僕が間違っているなら正せる、けど間違っていないから正せない
絶対にわかってもらえない孤独感が僕を蝕む
頭痛が、吐き気が、動悸が、不安感が、孤独感が、罪悪感が、耳鳴りが耳鳴りが耳なりが耳鳴りが耳鳴りが耳鳴りが……−–誰か私を理解ってくれ
ーー
六月四日 ルール戦線、ここしばらく太陽が出ていないため湿度が非常に高くジメッとした日が続いている
本日の死亡者は二十九名、重症者は七十二名、彼らは勇敢にその身を盾に国家に尽くしました
「……ぇ、…ーレ!」
また特務第909班、通称アウル班の戦果を改めて報告する
敵哨戒班を3度排除、敵戦車14両無力化、補給拠点2箇所破壊、敵主要補給戦を92時間遮断、敵旅団指揮官1名排除
「……ドレイブンの死神は白い髪をしている、その噂の一助になれるのなら格好もつきそうだ、ははっ!あの世でいい酒が飲めそうだよ!」
以下個人戦果
スバル・レッドソード 敵撃破数169名(確認98、推定71)
ノア 敵撃破数46名(確認26、推定20)
ラスティア 敵撃破数20(確認7、推定13)
「––シャーレ!……いつまで突っ立てるのさ、もう死んでるよ」
「……………あぁ」
シャーレ・ラングレイ 敵撃破数204名(確認203、推定1)




