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episode22 ハーレクイン

アンダーソンのとった作戦は上手くいけば有翼種の子供を助けることができる上に侵略の情報を国に伝えることができる、逆に失敗しても情報だけは伝えることができるという分かりやすく合理的なものだった


「シャーレ、いやシャーレ・ハーレクイン、君の演技力にこの作戦はかかってると言って良い、頑張れ」


「分かってます」


シャーレの本名を口にするアンダーソン、彼はグラントファミリー壊滅の際に制圧を担当した兵士のうちの一人なのだ、そしてシャーレをラングレイのベッドまで運んだ張本人でありエルフだということを知る数少ない人物の一人なのだ

こんな状況にもならなければその事実を告げることもなかったらしい


アンダーソン達を乗せ、上から布を被せることで眠っているように偽装した荷車を有翼種の民族衣装に着替えたシャーレと族長が共に引っ張る、そして髪を括りその尖った耳を露出させる


できるだけ自分の素性を晒したくないシャーレだったが背に腹は変えられず族長にだけその耳を見せることにしたのだ、当然スバル達には見られないようにフードを被って後ろの馬車から万が一にも見えることを防いでいる


荷車を弾き始めおおよそ三十分と少し、悪路ということもありかなり時間がかかったが捕縛したオルガ王国の兵士から聞き出した話通りの場所に人が来ていることを確認し、第一関門を突破しことにひとまず安心する


「鳥の族長と……お前は誰だ?」


こちらに気付き、そして見慣れないシャーレに銃口を向ける兵士

しかしシャーレは慌てずに両手を上げながら近づきフードをズラす、尖った耳を見た兵士はすぐに隣の部下を止めた


「エルフ…?、なんでこんなところにいる?」


「私がどこにいようが私の勝手だろ?しかし久しぶりに顔を出せば人間がこいつらの里に入り込んでいる、欲しいのだろう?さっさと連れて行ってくれ」


まるでゴミでも見るかのように荷車に積まれたアンダーソンたちを見るシャーレ、その様子から排他的なエルフだということを把握したオルガ兵士は後ろの兵士を下がらせる


「しかし貴様らは随分舐めたことをするらしい、私が管理する森の民を攫ったらしいな?」


「……悪いが仕事だから解放しろと言われてもできないぞ、だが俺の実家は農家なんだ、村を枯らされても困るから顔は見せてやる」


エルフを怒らせば畑が枯れる、そういった嘘か本当かわからない話でも農村部ではかなり広く、そしてかなり信じられている話があるのだ、他にもいろんな話があるせいでエルフは怒らせてはいけないという風潮がある

そしてそれを利用すればかなりの確率で話を通せるというアンダーソンの作戦だ


兵士の後ろをついて行こうとするシャーレと荷車を引っ張る族長、しかしそれを見た兵士がすぐに止める


「顔を合わせるのはあんただけだ、鳥の族長は俺の部下に荷車を渡してさっさと帰れ、それともなんだ?何か不都合でもあるのか?」


(まずいか…?ここで分断されるとは思わなかった、警戒心が思ってたより強いな)


シャーレは無表情を崩さずに後ろの族長に向かって、帰れ、と一言言い、そのまま兵士の後ろをついて行く、一度大勢の兵士が屯していいる場所を通ったかと思えばそこから少し離れた、周りには何も無い場所場所に案内された


どこにいるのだと尋ねようとしたシャーレが振り向いた瞬間に銃声が一つ鳴り響いた

右の手のひらに滑りを感じ、触ると真っ赤な液体がべっとりと付いているそれを認識してから二の腕が急激に熱くなるのを感じた


「けどよくよく考えれば…、なんでお前が人質のことを知ってるんだ?魔法の誓約があるはずなのに……念の為だ、エルフィン大森林の外に出てきた物好きエルフ、殺したところで他のエルフにはバレない」


「御名答だよ、馬鹿野郎…!」


エリーシェ王国軍人とはまだバレてはいないが作戦の続行は不可能、そう判断したシャーレは走った、全心全力で走った


「––速ッ!?」


そもそも最初から成功率の低い作戦なのだ

人質が捕らえられている場所もわからないのだからさっさと逃げるが吉、そう考え一度身を隠すために野営用の大型天幕飛び込む


「声を出すな!変な動…き……」


運悪く中に人がいたためすぐに拳銃を突き立てて脅す、しかしその異様な体の小ささと啜り泣くような声、そして肩から腰の上あたりから生えている異物に違和感を覚えよく見てみる


「作戦続行か……」


「え、エルフ…?それにその服、里の…」


天幕の中を見渡すと羽を縛られ足枷をつけられた有翼種の子供たちが十五人程度拘束されていた

食事はろくに与えられていないのか手足は痩せ細っており、過度なストレスから目の焦点があっていない、そして多くが殴られたような形跡があり全身に青い痣ができていることもがほとんどだ、顔が林檎のように真っ赤になって咳をしている子もいる

もしあと三日、いや二日経っていたら死人が出ていただろう


「いいか?家族に会いたいなら僕のいうことを聞いてくれ、今から君たちを解放する、合図とともに南…あっちにまっすぐ走ってくれ、飛んでも良い、イグル川だ、イグル川を超えてくれ」


拘束の鍵を“血汐を泳ぐ”で外しながらなるべく全員に聞こえるように、子供でもわかるように端的に伝えていく、それに対して半分の子供だけが頷くか目線を合わせ意思を見せる、しかし残りの半分はまるでシャーレなんていないかのように無反応だった


当然だ、数ヶ月近くこんなところに閉じ込められていたのだ、気力がなくなっていてもおかしくない、むしろここで頷けた子供がすごいのだろう

シャーレもわかっている、一人程度なら無理やり連れ出せる、けれどこの人数は無理なのだ、これだけの無気力な人間を助けようとすると逆にまだ生きる意思がある人間が命を落とす可能性がある


「……病人は背負ってやる」


床に倒れ、今にも死んでしまいそう子供を抱え、そして魔力を発して合図を送る、数秒後全てを焼くような光と圧倒的な魔力が少し離れたところで解放された

それと同時にシャーレは叫んだ


「––走れ!」


自分を探しに来た兵士を撃ち殺し、全体を引っ張るように走り出した




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