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episode11

試験開始から31時間後、シャーレとイネは変わらず洞穴の中で身を隠していた

入り口を木の枝で骨組んだ草木のカーテンで蓋をし、その隙間から顔を焚き火の隅で黒くカモフラージュした二人が変わりながら外の様子を確認している


人数的にもかなり追い詰められた六班、しかしその実四班との戦闘以降どことも接敵しておらず、またシャーレのおかげで食料に困っていないためかなり余裕があると言得ないこともないのだ


「合図だ」


横になっていたシャーレに向かって外を見張っていたイネが呟く

それを聞いたシャーレがすぐに体を起こし、装備を確認する

イネが言った合図とは、

残っている班が少なくなった場合、接敵する確率自体が低くなり演習が無駄に間延びする

その上こういったサバイバル形式の場合そもそも動き回ること自体がリスクに繋がり身を隠す方が賢い手段だ、しかしそんなことを許すのなら演習は終わるのに数ヶ月かかってしまう、それを防ぐために教官が試験の最中に目標を与えて接敵の可能性を上げる、そのために何らかの方法で演習中の訓練兵に伝えるものだ


「赤、青、緑、赤だ」

「……小屋、六時間以内、か」


指定された地点に向かう、一見単純そうに見えるこの課題だがかなり考えられている

目的地に向かっている間も戦闘は続いているのだ、そして六時間以内に間に合わなかった場合失格になる

つまりこれはいかに他の班よりも早く目的地につき、そこを六時間防衛するかが重要になるのだ

そして二人欠けている六班にとって防衛側の有利なこの課題は数少ない勝ち筋でもある


しかし問題になるのが小屋の場所が不明なこと

対抗戦に使われているフィールドに一応の制限がかかっているとはいえそれでもかなり広い、他班の妨害がなくとも六時間以内にこの樹海にポツンと存在している小さな小屋を見つけること自体難しいかもしれない


そう考えた二人はすぐさま洞穴を出た

リュックは捨て小銃を構えベルトにナイフを巻き、水筒をぶら下げ、全身を炭と土で暗く目立ちにくして草むらの中を進んでいく

耳に触るのは湿った土の匂いといろんな植物の花粉や樹液、踏み潰された草の汁が混ざった匂いだ

別に特段臭いとか嫌な匂いというわけではない、ただ少しずっと嗅いでいるような匂いではないと感じる匂いだということだ、別に匂いに限った話ではない

景色も大して変わらず、自分たち以外からは自然音しか聞こえないとかなり飽きてくるものだなのだ


そしてシャーレ…というかエルフの五感というものはかなり鋭い

特に聴覚と第六感は特段鋭く一説によればエルフの耳と第六感的な感覚は植物の声を聞くために発達しているとまで言われている


つまりそんな周囲の環境に慣れたシャーレに突如異物のように何かが混ざったらどうなるか、当然こうなる


(……二時の方向、距離はかなり遠いけど複数人いる)


その場で屈み、ハンドサインで状況を伝える

大体の距離しかわからないがあちらの方がペースは遅い、そのことから人数が自分たちよりも多いと仮定づけたシャーレ


(……どうする?)


数的不利有利はかなり大きな問題である

戦いとはいかに数的有利を活かすか、とある兵法家の言葉だ

しかしこの状況をシャーレはかなりチャンスだと感じている

まだ自分たちは気づかれていない上に進行方向上が迎え撃つ形を取れるのだ


(奇襲を仕掛けた後全速力で逃げる)

(……良い作戦だな、性格の良さが滲み出ている)


しかしチャンスだとしても無理はしない

一撃離脱の戦法で無理なく相手を消耗させる、それがシャーレだった









ーー

一列に並び、先頭が前を、その後ろが左右をと背後を警戒しながら進む三班

五班と対峙、その後誰も脱落すことなく制圧し現在に至るまで六班と同じく小さな洞窟で身を隠しており、唯一四人残っている班でもある


「––おい!そこの地面、魔力の残穢があるからトラップだ」

「あっ、あっぶな…、落とし穴か、演習だと致命傷にならないけどかなりだるい罠だな」


本来だったら落とし穴の底に先を鋭く削った木や刃物を立てることで負傷者を増やさせることができる落とし穴だがあくまで訓練、命を奪う可能性がある危険な罠は禁じられているためそう溢しながら落とし穴を観察する


「言われなかったら気づかなかったな」


魔力の残穢を自分でも確認しながらそれを避けるように足を踏み出す、と同時に胸から肩にかけて何かの抵抗を感じた


(なんだ…!?蔦…それも薄く切って見えづらくしてやがる!)


バサリと葉の揺れる音と共に仕掛けが発動し、上から太い枝が降ってきて先頭を歩いていた訓練生の頭に直撃する

それと同時にシャーレとイネが正面の茂みから飛び出す


「––っ!?敵だ!」


三班に一方的に発砲しながら正面から左右に抜けるように散開し、木々の中に消えていく二人、しかし一瞬上に意識を割いていた三班だったがすぐに防御の体制をとることには成功していた


「被弾した!」

「俺もだ!」


先頭二人が被弾し、その場に伏せる

残った二人がすぐに逃げていったシャーレたちを追いかけようと走り出す、しかしシャーレの一言を聞いて一瞬怯む


「今だ、第二波!」


二人しか残っていない六班が二人で奇襲をかけたのだ

もちろん第二派なんてものに避ける人数はいない、しかしそれを知らない三班にとってその言葉は足を止めるのには十分すぎる言葉だった


「––ッ!?……クソっ!やられた」


すぐにブラフだったことに気づく、しかしすでにシャーレたちの姿は見えなくなっており、この状態で追いかけてもまた不意打ちを喰らうため三班はその場に佇むことしかできなかった

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