episode10 鳥みたい
洞穴から出るための口実の食べ物探し
言い訳とはいえやらないわけにはいかないので生食が可能な木の実や菜を軽く採取しながら歩く
(天ぷらにしたいな、これ…よく夕餉に出てたな)
生で食べても美味しくものの毒も無く安全に食べれる貴重な食料のため回収しておく
ただ下処理が済んでいないと苦味が強いためシャーレも本当に渋々らしく奥歯のあたりがむずむずしている
小さく指を鳴らして準備運動を済ます
そしていつでも発砲できるように拳銃に手をかけながら振り向いた
「おいおい、そんなに警戒するなよ」
シャーレが睨む先、茂みからイリューワが両手を上げながら出てきた
(なんの真似だ?魔力索敵にはこいつ以外引っかからないし……まさか本当にノコノコ姿を晒しているのか……!?)
「……何かよう?」
「そんな素っ気ない態度取るなんて酷い奴だな?お前は、本当にひどい奴だ、俺だけはお前のことを信じていたんだけどな、まさか作戦のことをバラされるなんて思いもしなかった、俺は傷ついちまったよ、なぁ?」
恩着せがましく、一方的に自分の言葉を伝えるイリューワ
その言葉に、“なんだ、そんなことか”と安心して相変わらず頭にサイコロが入っている側の人間だと納得する
「リュウノドクガの花言葉って知ってる?」
「おい、誰が喋って良いって言った?おい、俺の裏切られて気づいた心をどうすんのかって聞いてるんだよ?なぁカス」
苛つきが隠せないイリューワ、力任せに隣に生えていた低木を踏み躙って顔を歪める
しかしそんなこと自分には関係ないと拳銃を構えながら笑うシャーレ
「––っ!?」
「別名サリエリ、花言葉は“才の嫉妬“だよ」
乾燥した空気の割れる音が響く
「……ク゛ッ、ソがぁ!!、テメェやりやがったな!?」
「いや…やったも何も、演習中ってことを忘れてた?もしかして」
演習中だというのに敵に体を晒して呑気に喋っていたお前が悪いとシャーレ
まさに正論だ、しかしこの世には二種類の人間がいる
正論をぶつけられ、納得ができないが自分を引っ込めれる人間と、感情が爆発する人間
イリューワは後者である
そしてそういった人間に限って暴力、犯罪……人を傷つけるハードルが低い傾向にある
「……体にべったりついた塗料が目に入らないのか?」
「しっかり見えてるぜ?なんなら」
「ならお前はルール上死んだはずだが?」
腰にぶら下げた拳銃とは別の、2挺目の、軍で使っているものとは造りが違う拳銃を構えるイリューワに冷静に問う
表面上は至って穏便に済ませようとするシャーレ
しかしすでにその魔力は蛇のようにイリューワの体にまとわりついている
「あぁ!?実践なら別だろうが!一発二発で俺が死ぬわけないだろうが!
いいか!?……この拳銃は俺が昨日チンピラから買ってきた実銃だ、わかるか?こんな訓練やっても意味ないだろ?だから今から実践だ、殺し合いをしようぜ…?」
塗料ではなく実弾のこもった拳銃をこれ見よがしに弄るイリューワ
それと対照的にシャーレの目から熱が消えた
「……おい、何ナイフなんか構えてんだよ…?そこは俺に許してくださいって泣いて謝るところだろ…?
……なんだ!?なんなんだ!その目はぁ!?う、撃つぞ!少しでも動いたら撃つからな!?」
「––おやすみ」
二度にわたる発砲音、酸っぱい匂いが辺りに充満する
最後に思い出したのは祖母の唄
“山道入れば緑蛇様が、願い叶うと旅人喜ぶ
気になり進めば白蛇様が、商売繁盛縁起いい
欲かき誘われ山道歩く、戻れぬ祟りの赤蛇様“
畏れを抱かせる赤眼と目が合いながら彼は思考の海に消えていった
「おぉ!良いじゃんかシャーレ、詳しくないけど美味しそうだな!
……もしかしてその右手に持ってるのって」
シャーレの持って帰ってきた食べ物を見ながらイネのテンションが上がる
しかしすぐにシャーレの右手についた血と伸びる細長い何かに視線が向いた
「あぁこれ?蛇、しかも黒蛇だよ、茶色はよく見るけど黒は久しぶりだ
もう一匹には逃げられた、貴重なタンパク質だし美味しく……あれ?二人は?」
「トートがこれ以上悪化する前にってリッタを背負って行ったよ」
少し複雑な気持ちになるシャーレ
二人にも食べて欲しかった反面、自分の取り分が増えた嬉しさもある
「……もしかしてそれ食べるの?」
「……?食べないわけないだろ」
首を落とし、ちょうど半分に切ってからイネに片方を渡す
「……うっ、覚悟を決めるか」
聞き齧りの知識から生き血を飲もうと覚悟を決めるイネ
それを見て慌ててシャーレが止めに入る
「本当に辞めとけ、寄生虫がいる可能性が高いから極限状態でもない限り蛇の血なんて飲むもんじゃない」
そして慣れた手つきで皮を剥ぎ、血を絞ってから手入れのされたナイフで刺して焚き火にかける
それにイネも戸惑いながら真似をしていく
しっかりと火が通ったのを確認してからシャーレが口に入れる
そしてそれを見てから自分の方もきっちりと火が通ってるか確認してからイネも食べた
「……思ってたより美味しい、鳥みたいで」
「鳥の方が美味いけどな、……まぁ捌き方を知ってて損はないと思う」
その返しにイネがニマニマと笑う、それをシャーレが嫌そうにあしらっていた
ゆっくりイリューワ
「今日は蛇の生食について解説していくぜ!ゆっくり聞いて行ってね」
「蛇の血をそのまま大量に飲んだりすると普通に鼻血が出るぜ!(n敗)」 「だから絞っておく必要があったんですね」
メ ガ ト ン ヘ ビ ノ チ
「ふ〜ざ〜け〜る〜な!!」




