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イルリゼット宮 攻略戦 1話 【ミア】

ーイルリゼット宮 正門前 革命軍陣地ー


王都から半日馬に乗り続け、ようやく目的地であるイルリゼットに到着した。

革命軍の前線陣地は負傷兵が至る所で倒れており、物資も不足しているようだ。


隊長であるカルス少佐を先頭に、私達は司令部があるテントへ向かう。


「これはこれは。ホワイトジャベリンの方々ですな。この度は我々王立陸軍第5歩兵大隊の援軍要請にお応えいただき感謝に堪えませんな」


テントの中に入ると、こちらに気づいた中年将校が作ったような笑顔で近づいてきた。


「御託はいい。あんたがここの指揮官か?」


カルス少佐が中年将校の挨拶を手で制し、不機嫌そうに質問した。


「ええ。指揮官だった少将は早々に戦死しました。ご覧の通り戦場は地獄さながらの状態なもので、今は私が指揮を」


「・・・戦況は?」


「イルリゼットの市街地は未だ我々が押さえていますが、宮殿は包囲するのがやっとの状態です。何度か宮殿内部に突入は出来たのですが、ことごとく返り討ちにあっています」


「敵は近衛だな」


「はい、服装からして間違いありません」


「ミア中尉、お前なら知っているだろ。敵部隊について話せ」


カルス少佐の問いかけに思わず言葉が詰まる。


マグヌス団長率いる一番隊はアングレット要塞と王都近郊の山で奇襲にあい全滅、レナート副団長率いる部隊も王城での戦いで壊滅し、残った団員はクルト達と行動を共にしているはず。


だとすると残るは必然的にあの隊だけ・・・ステラ中佐が率いる三番隊。


「その顔は知っているみたいだな。早く話せ」


ステラ中佐とは浅からぬ仲だった。


男所帯の近衛に入隊した頃から何かと気にかけてくれて、剣技や銃の扱い以外にも様々なことを教わった。いわゆる姉と呼べるような人だった。


しかし今の私はもう近衛ではなく、ホワイトジャベリンの一兵士に過ぎない。

革命軍の理想に共感したから裏切ったはず。


それなのに今更ステラ中佐の心配をするなんて・・・。

革命軍に身を置いたらこうなることは分かっていたはずなのに。


「・・・あそこにいるのは恐らく近衛騎士団三番隊。指揮官はステラ・ヴィクトリアス中佐だと思います」


「近衛の三番隊か」


「おいおい、俺達もまともに正面から行ったら間違いなく死人が出るぜ。どうすんだよ隊長」


緊張感なく隊員たちとテント内の食料を物色していたアシュレイ大尉が缶詰を抱えながら振り向きざまに質問する。


イルリゼット宮は周囲を生垣で作られた人口の迷路で覆われており、要塞程ではないが、外からの攻撃、侵入に対応できるよう設計されている。


そこに近衛が万全の迎撃態勢を整えているとなると、攻略するのは容易ではないだろう。


「我々もあらゆる方向からの攻撃を試みましたが、必ず行く手で近衛が待ち伏せておりました。少数の部隊であれだけ柔軟な対応ができるとは、正直敵ながら尊敬しますな」


ステラ中佐の戦い方はマグヌス団長やレナート副団長とは違う。

個で判断し、個の力で押し切るのではなく、部隊全体の力を余すことなく駆使して戦う集団戦術を得意としていた。


己の技を極めた精鋭達が集まる近衛を部隊としてまとめ上げることは難しい。


しかしステラ中佐はその容姿と人柄、副官であるリザ大尉のサポートもあり、真の意味で三番隊を一つの部隊とすることに成功した。


「・・・とりあえず相手の出方を見るとしよう。お手並み拝見だ」


カルス少佐の言葉に部隊全員の雰囲気が一変した。


これまで全く緊張感が感じられなかったアシュレイ大尉や他の隊員は皆不敵な笑みを浮かべ、

一様に闘志か殺気にもとれる様な気を放ち、出撃の合図を待っている。


これがホワイトジャベリン。

王国で存在を秘匿された知られざる裏の王国最強部隊。

私は思わず息を吞んだ。


「ミア中尉は一先ずアシュレイの隊につけ。俺達の戦い方をしっかり目に焼き付けろ」


「・・・了解!」


「ホワイトジャベリン出撃だ!」


「「おぉ!」」

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