厳しい判断
ローネはレナートに淡い恋心抱いてますね…
レナート副団長にローネの事を知らせるいい機会だ。そう考えた俺はオルリック艦長に敬礼し、すぐさま艦橋1階へ向う。
ラッタルを降り1階へ到着するとそこにはフィーアの下士官と共にいるレナート副団長がいた。
「クルト副長、お出迎え頂きありがとうございます」
「いえ、こちらこそ戦いの後でお疲れのところお待たせしてしまい申し訳ございませんでした」
こんな士官になりたての自分にも敬語で話すレナート副団長。豪快な性格のマグヌス団長と違い、同じ近衛でもレナート副団長は何処か得体のしれない不気味さの様なものを感じる。
今はそんな事よりローネの事を話さないとな。
「レナート副団長…実はローネ少尉の事なのですが…」
「ローネがどうかしたのですか?」
「市街地での戦闘で負傷し、現在医務室で治療を受けています。自分がいながらこの様なことになってしまい…」
「マリー様は、マリー様は無事なのですか!」
レナート副団長は俺の話を最後まで聞かずに何やら慌てた様子で詰め寄り訊ねてきた。
「は、はいマリーは…マリー様は無事です。今は自室に戻られています」
俺の言葉にレナート副団長は肩を撫で下ろし、いつもの調子に戻った。
「そうですか…それは良かった…」
「ですが、ローネ少尉は決して軽い怪我ではなく…」
「彼女は近衛の任務を全うした。それ以上でも以下でもない当たり前の事。怪我をしたのはまだ腕が未熟だった為です。気にされる必要はありません」
ローネは命を懸けてあの場で戦って大怪我をしたのにそれを任務だから当然?未熟だから?。俺はレナート副団長が言った言葉が理解できなかった。
しかし自然と怒りの感情がこみ上げてくるのを感じる。
「ローネ少尉は必死で戦っていた!貴方の為に大怪我を負ってまで任務を全うしたんだ!それを当然の様に…」
「確かにマリー様の護衛を全うしたことは評価に値します。しかしその過程で大怪我をしたことは彼女の慢心か力量不足。それ以外の何物でもありません」
レナート副団長。いつもの丁寧な言葉遣いの裏に隠された冷たい一面。それは彼が隠している内面の一部に過ぎないのではないだろうか?。彼の心の内にある異質な何かを感じ取った俺は怒りの感情を忘れ、得も言われぬ不気味さを感じていた。
「……」
「クルト副長?」
レナート副団長の声で我に返った俺は慌ててその場を取り繕う。
「!…戦闘後で気分が高揚しておかしなことを言いました。申し訳ございません。自室までご案内します」
「感情が高ぶるのも無理はありません。陸での戦いはこれが初めてでしょう。無事アンホルトから脱出が出来たら少し休んだ方がいいですよ」
「…はい。ありがとうございます」
俺はレナート副団長を部屋まで送り届け、指揮所へと戻った。フィーアは既に出航し、埠頭から出ようとしていた。
港には政府軍部隊が殺到しており、取り残されたアンホルトの市民たちは捕まるかその場で殺されている。
指揮所はその地獄の様な光景を目にし、誰もが憤っていた。
「クソ!政府軍の奴らめ。相手は武器を持たない市民なんだぞ!」
「これは一方的な殺戮じゃないか…」
「艦長!急ぎ反転し、政府軍の奴らに攻撃を!」
口々に攻撃を主張する乗員達とは対照的にオルリック艦長はいつもと変わらず海軍帽を目深に被って艦長席に座っていた。
しかし副長として短い間ながらも隣にいた俺には分かった。オルリック艦長の握った拳が震えていた事が。
「艦長!攻撃命令を!」
「こうしている間にもアンホルトの市民は虐殺されているんです!」
ラースやアンナは他の乗組員と違いオルリック艦長艦長に攻撃を迫っては無いが、沈痛な面持ちで俯き、自分の持ち場に立っていた。
かく言う俺も同じ表情をしているだろう。しかしこのままでは攻撃を主張する乗組員達が暴発しかねない。
俺は暴発する前にオルリック艦長に意見具申をしようと近づいた時。
「…針路そのまま。最大船速」




