夜明け前の逢瀬
マリー いったい何者なんだ…(笑)
「その右手に持っているのは…花か。どこかで見たような」
「え、この花をご存じなんですか?」
「その特徴的な青い花。そういえば俺が子供の頃によく遊んでいた故郷の花畑に咲いていたものに似ているな」
「本当ですか!この花は私が王城の中庭で育てていたものなのですが、学者の方が絶滅寸前の花だと…」
「俺の故郷では一面に咲いていたが」
「是非そこの花畑に案内して頂けませんか!」
「あ、ああ。この戦いが終わって平和になったらな」
「絶対ですよ」
マリーは俺の右手を両手で包み笑顔を見せる。俺は自分が照れて顔が赤くなっているいる事に気づき顔を背ける。
マリーは俺の行動にまたクスッと笑い。俺が背けた顔の方向へ回り込み顔を覗いてきた。
「どうして顔を背けるのですか?」
「べ、別に背けては…」
ここで追撃されると思ってなかった俺は思考停止に陥っていた。そして背後から強烈な殺気を感じる。
「ク、クルト少尉!あなたは一体何をやってるんですか!」
背後を確認すると船酔いから回復したらしいローネが立っていた。
驚きのあまり動けなかった俺にマリーがそっと耳打ちする。
「クルトさん。またお話しましょう」
マリーはローネの許へと歩いていく。
ローネはあの男に乱暴されたのですかなどと聞き捨てならない内容をマリーへ言っていたが、マリーがローネへ何かを言うとローネはおとなしくなった。
すぐ後から息を切らせた下士官が到着した。
「ローネ少尉…規則で…近衛の単独での…行動は禁止と…伝えていたはずです…」
「ごめんなさい、急いでいたもので。もう大丈夫です。おとなしく士官室へ戻ります。行きましょう」
「はい」
マリーは振り向き様に俺に向かって小さく手を振ると下士官とローネに連れられて士官室へと戻って行った。
見送った俺は命拾いをした安堵とこれまでの疲れがどっと出てその場に座り込んだ。
マリーか、ただの貴族の令嬢ではなさそうだな。
そんなことを考えながら俺は少しの間座ったまま澄み渡った夜空を眺めた後、艦長へ任務完了の報告をしに艦橋へと戻った。




