運命の始まり
ラノベだったら挿絵が入るシーンですね 間違いない
俺は指揮所を出て艦内の捜索を始めた。
「各所から報告が無い以上人気のない区画にいるかもしくは…。流石に海に落ちては無いよな」
彼女がバランスを崩し、甲板から海に落ちる光景が脳裏をよぎり慌てて考えないようにする。
「いかんいかん。希望的考察をしろ。彼女がいた部屋からそれ程離れていない区画で現在乗員が配置されていない部屋を見て回ろう」
俺は考えついた部屋を片っ端から調べていったが未だに彼女を発見出来ずにいた。
「ここでもないか…。あと考えられるのは後部甲板くらいだな」
フィーアは火力を全面に集中する設計思想である為、艦の後部は何の設備や武装が無い後部甲板エリアと試作兵器が積んである後部格納庫エリアがあるのみであり戦闘配置時でも滅多に乗員が訪れることがない場所であった。
「頼むからこのエリアにいてくれよ」
ここにもいないとなるといよいよ最悪の事態を想定しなくてはならない。頼むからいてくれよ。俺は後部甲板の探索を始める。
しばらくして艦尾付近を確認しようとした矢先、雲で隠れていた月が徐々に姿を見せ、月明かりがフィーアを照らし始めた。
暗闇の只中にあった艦尾にも月明かりが差し込み、手摺に手を置いている女性の姿が確認できた。間違いない、探していたご令嬢だ。
彼女の横顔が見えた。王城で会った際はフードを被っていて顔が見えなかったがその顔は涙で濡れていた。
この時俺は探索中に考えていた最悪の光景が再度頭に浮かんだ。
海に飛び込んで死ぬつもりではないか。そう考える程俺には彼女の顔が思いつめた表情に見えていた。
そして次の瞬間俺の体は勝手に動いていた。
「早まってはいけない!死ぬな!」
俺は彼女の体を抱きしめ、手摺から遠ざける。
「えっ!」
彼女は驚いた表情で俺の顔を見た。
「例え家族を失ったとしても自殺はいけない!考え直せ」
驚いた顔から一転して俯き、彼女は涙声で言葉を絞り出した。
「…あなたに何が分かるんですか…」
「確かに俺は君の境遇を把握しているわけじゃない。だけど、君が死にたくなる程に辛い思いをしている事は分かる」
「…お父様が殺されたのです…。幼い頃にお母様を亡くして今度はお父様が…。もう私に家族はいません。だからもう生きている意味など無いのです…」
「俺もここまで来るまでに数多くの人々が死んでいく光景を目にした。死んでいった者達にも君と同じ様に家族がいたんだ。そしてその家族は君と同じ悲しみを背負ってもなお生きようと努力している。だから、助かった命を粗末にするような真似は俺が許さない」
「!……」
しまった。強く言い過ぎたかな。オルリック艦長に丁重にと言われていたんだった。つい身投げを止めることに夢中になって素が出てしまった。




