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迷子の戦艦

ここから第三章スタートです!!

フィーア指揮所内


「艦長、これから我々は何処へ向かえば良いのでしょうか?」


俺はコーヒーカップを片手にくつろいでいる艦長に尋ねた。


「一先ずアンホルト港へ向かう。あそこならまだクーデター軍の手は及んでいないはずだ。何より我々には補給と乗員の休息が必要だ。港も大型船が停泊できる程だからフィーアも泊められるだろう」


「なるほど、アンホルト港ですか。ここまでの戦闘で全員の疲労はピークに達していますし、王都より西側でこの大型艦が入港できる港はアンホルトだけでしたね」


アンホルトは人口約10000人の大きな港町でフェルゼルシアの貿易を一手に担っており、他国からの商船も寄港している為、フィーアクラスの大型艦の停泊も可能だろう。

また、領主の指示で景観を重視した街づくりがされており。特に海沿いに面した建物の外壁は白塗りが義務付けられており、白塗りの建物群が海と共に太陽の光に照らされ輝いている光景は世界的に知られており、皇国随一の海水浴場があることでも有名であった。


「アンホルトは綺麗な港町と噂で聞いたことがあります。一度行ってみたかったんですよね」


「アンナはアンホルトには行ったことはないのか?」


「ラース先輩はあるんですか?」


「士官学校時代にちょっとな」


「俺は初耳だぞ」


「クルトは誘ったのに来なかったじゃねえか」


「士官学校の時のお前の誘いなんてナンパばかりだっただろ」


「ひでえな。ナンパではなくあの時はアンホルトの浜辺で水着の美女を拝みにいかないかっていう誘いだったろ」


「知るか、似たようなもんだろ。それにラース、そろそろそういう事を控えないとアンナがな」


「いいんですクルト先輩。ラース先輩がこういう人だっていうのは知ってますから」


「全く、クルトは良いよな。あんなに可愛い幼馴染がいてよ。俺なんか周りはみんな男ばかりで」


「お前の周りにも女はいるだろう」


「誰だよ?」


「アンナとか」


「クルト先輩!ラース先輩もいい加減にして下さい。まだ作戦行動中ですよ」


「「ごめんなさい」」


いささか強引すぎたな。作戦行動中といえど政府軍に海軍戦力が無い為洋上で追撃を受ける可能性はなく、フィーア乗員は度重なる戦闘での疲れか気が緩んでいた。

かくいう俺も先程の話の流れでどうすればラースとアンナの仲をより親密に出来たのかをずっと考えている。

オルリック艦長も艦長席に座ってはいるものの、海軍帽を目深に被り考えているフリをしながらうたた寝していた。

そのような状況の中、下士官に連れられたレナート副団長が指揮所を訪れた。

俺は慌てて艦長を起こし、オルリック艦長は目を擦りながらレナート副団長に尋ねた。


「レナート副団長、いかがされましたか?」


「艦長…折り入って話があるのですが」


レナート副団長と艦長は周りに会話の内容が聞かれないよう、指揮所の隅へ移動し話し始めた。


「何ですって…それは本当ですか」


「こちらの不徳で申し訳ない。ローネ少尉も付いていたというのに…」


「しかしこれは艦内で事を大きくする訳にはいきませんね」


「我々は制約上この艦を自由に歩き回ることが出来ないようですので、何卒捜索にご協力をお願いいたします」


「分かりました。直ちにこちらで対処致します」


「お願いします」


会話が終わるとレナート副団長は下士官の案内で与えられた士官室へ戻って行った。

オルリック艦長は俺を手招きする。


「クルト副長、貴官に頼みがある。この件はくれぐれも内密に、出来れば貴官一人で解決してもらいたい」


「一体どうしたのですか?艦長はともかくレナート副団長もかなり焦っているようでしたが」


「その言葉は何処か引っかかるが…まあいい。急ぎ内容を要約すると王城で保護した貴族のご令嬢が部屋から出て現在行方不明とのことだ」


「しかし彼女はローネ少尉と一緒だったはずですが?」


「10分程前にローネ少尉が船酔いで席を外していた間に部屋から姿を消されていたらしい」


「なるほど…」


「高貴な方である為、大人数で捜索し追い回すような乱暴なやり方は出来ない。この艦の事を詳しく知っており、見た目が比較的真面目そうで人畜無害であると思われるのは貴官しかおらん。やってくれるか?」


「人畜無害って…。まあ艦長の頼みですし、ラースの奴などに任せてはナンパなど不敬な事をしかねません。任務謹んでお受けします」


「それは良かった。くれぐれも丁重にな」


「了解しました。では行ってまいります」


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