心の闇
本日更新二話目です。
読みに来ていただきありがとうございます。
そろそろ来ててもいい時間なのに美琴が来ない。
今朝、嬉しそうに頬を赤くしていたからデートを楽しみにしてくれていたはずだけど...何だか嫌な予感がする。
「ベリアルさん誰かと待ち合わせ?ずっとそこにいるからみんな気になって噂になってるよ」
そこにリリーが声を掛けてきた。
「あらリリー、今日はみこちゃんとデートの約束してるのよ。ここで待ち合わせなんだけど仕事忙しいのかしらね」
「やっと、告白でもするのかしら?」
「まぁ、そんなところよ。本当はもっとゆっくり、みこちゃんのペースに合わせようとしてたのに、みこちゃんに気がある異性が多くて、まぁ色々と大変だったのよ?あんなに男慣れしてない子、野放しにしてたら手遅れになっちゃう。で、それなら私のものにしようとしたら、いままで私のこと散々悪く言ってた貴族達がこぞって娘を勧めてくるしで参ったわよ。黙らせるのに時間がかかちゃったわ」
そう、最近お城に行くことが増えたことは闇の王に関してのこともあったが、まだ解決していないが、世界が落ち着き始めたことで今後のことをと、私に婚約者を迎える話に発展していたのだ。いままでのこと考えると王子の婚約発表は国にとってはいい影響を与えると。
「それだけ世の中が平和になったってことよね。でも、独占欲もほどほどにしないと嫌われちゃうよ~」
「まあそこは上手くやってるから大丈夫よ」
「上手くって、隙あらばキスしまくってることかしらね」
「それは仕方ないじゃない、あんなに可愛いのよ。頬染めてはにかむ姿はもう最高でしかないわ。それにね、リリー聞いてよ、みこちゃんてばね―――」
「はい、ストップ!もうみことからも惚気聞かされているのに、ベリアルさんからも聞かされるって、いま彼氏のいない私に対してどんな嫌がらせよ」
「えぇ~いいじゃない話せる人いないのよ。それにリリーにだっているじゃない、リリーのことすごく愛してくれている人が」
「何よそれ、初耳なんだけど、誰の事?教えて!!」
「あ、まぁそれは本人から...きっとリリーも幸せになれるわ。ふふっまぁ頑張りなさい」
「何よそれ~。...でも安心した。付き合ってもいないのにキスしてるって聞かされたときは何してんのよ!思ってたから」
「それは反省はしてるけど後悔はしてないわよ。むしろ、してよかった。あんなに可愛い美琴が見られるなんて、しかも私にしか見せない顔よ。それにね、キスしかしてないんだから褒めてほしいくらいよ」
「はいはい。独占欲の塊感が半端ない...まぁ、みことが幸せならいいけどね。絶対に幸せにしてあげてよね」
「もちろんよ。あんな純粋で真っ白な美琴のことをいままでゆっくり私色に染めてきたのよ、誰に何を言われても手放す気あるわけないじゃない」
「やだ!ベリアルさんの愛重すぎる」
「何とでも言ってちょうだい」
「ねぇベリアルさん、何だか空がおかしくない?」
リリーと話していると、次第に空の色が黒い雲に覆われ始めてきた、そして空気が重苦しいものに変わっていった。
明らかに何かがおかしい。もしかしたら闇の王が何かし始めたのかもと考えて、美琴に何かあったのかと急に不安になって私は家へと走り出した。
「ちょっとベリアルさん急にどうしたのよ、どこに行くの?」
「家に帰るわ、何だか嫌な予感がするのよ、みこちゃんに何かあったのかもしれないわ」
「みことに?それなら私も行くっ」
急いで家に着くと、何だか様子がおかしい。
「ベリアル様!」
「ゼファイルお前も来ていたのか」
「異常を感じて来たのですが、美琴さんは?」
と、そこにジルの姿が。
「ジル、みこちゃんはどこにいるの?」
「...」
ジルの様子がおかしい。
不安を感じて勢いよく扉を開けると、アリスが床に座っている、とその目の前には床に倒れている美琴の姿が―――。
「えっみことっ!大丈夫なの!?」
「お前、美琴から離れろ!」
「あらら、王子様の登場早すぎー」
アリスは笑いながら立ち上がった。
「美琴に何をしたっ」
「さて何をしたでしょう?」
「貴様っ」
「ああ怖い、本当にこの子が大切なんだね」
「そうだ!私にとって美琴はかけがえのない存在なんだ。だから美琴に何かしたのなら許さない」
「じゃあ、尚更みことお姉ちゃんのことは渡せないな」
「お前は一体...いいやアインス、お前の正体は兄さんなんだろ?」
アリスは少し驚いて目を見開いた。そして姿がアインスの姿へと変わっていった。
「気付いていたんだ、そうだよ、ふふっ久しぶりだねベリアル」
「兄さん...まさかとは思ったけど本当にそうだとはね、兄さんのせいでこの国が世界が大変なことになったのに、何やってるんだよ」
「お前に何がわかるって言うんだ。私にずっとくっついてきていたと思ったら、今度は母様にべったりになって、女々しくものんびりドレス作りとはな、しかも話し方まで女になって...あぁいまは怒りで仮面がはがれたのかな、くくっ、そんなお前の顔が見られていますごく嬉しいよ」
兄の言葉に胸が痛む。
「...兄さんは私のことが嫌いだったんだね」
「そうだよ、無邪気で明るくて、私が努力して築いてきた人脈もお前がいると皆、私のことを見ずにお前ばかりを構うようになっていったんだよ、私の欲しいものはみんなお前が持っていった。そして次第に私の心は壊れていったんだ」
「兄さんはお父様に頼りにされていたじゃないか。他人なんてどうでもいい、私はずっとそんな兄さんに憧れて、兄さんみたいになりたかった。でもお父様は私を見ようとしてくれなかったから、私は―――」
「あいつは私を道具としていいように使ってきただけじゃないか、笑わせてくれるな。そしてお前も私のことを切り捨てた、嫌なことは私に押し付けて、お前は好きなことだけやってみんなからちやほやされて、さぞいい気分だっただろ」
「違うっ!私は兄さんのことを切り捨ててなんていない」
「もういいんだ、今度は私がお前の一番大切なものをもらうことにしたから、みことお姉ちゃん可愛いよな、私の正体にも気が付かないで可愛い可愛いってアリスのことを妹のように可愛がってくれて、私がしがみつくと必ず抱きしめ返してくれて、温かくて、いい匂いで、みことお姉ちゃん、いや、みことといると心が癒されるよ、すごく安心する、お前が気に入っている理由がよくわかるよ」
「何を勝手なこと言っているんだ、美琴の気持ちは、意思はどうなる」
「そんなことは問題ない、カルロスからもらった薬があればみことの心は徐々に闇へと落ちていく。光を、希望を見るから、人は傷付くんだ、最初から闇に落ちていれば辛い思いも傷付くこともない、それに私はみことが気に入ったからな、ちゃんと大事にしてあげるよ」
「美琴を返せ、美琴は自由にしているから輝いているんだ、自分がしたいことが何なのか考えて、挑戦して、色々な経験から新しい自分を見つけて美琴は変わっていった。そんな美琴の意思もなく闇の力で美琴を縛り付けるなんて、そんなの間違っている。そもそも闇に落ちて兄さんは幸せになれた?私にはそうは見えない、闇の王にいいように利用された可哀そうな男にしか見えない」
「なんだとっ、私は間違ってなんかいないっ!お前には私の何がわかるんだ、私は間違っていいない...」
「わからないよ、人のせいにして弱い自分から逃げただけだろっ。美琴は違う、自分の弱さに向き合って変わっていった、そんな美琴だから兄さんも美琴に惹かれていったんじゃないの?私はそんな美琴に惹かれたよ...見たくない認めたくない現実から目をそらしていた私を美琴が救ってくれた。兄さんだって本当はわかっているはずだ、こんなの間違っているって。だからもうこんなことやめてくれよ」
「っそんなことない!...そうだ、それにそんなこと言っているが、そこにいるライオン、ジルだっけ?私が美琴に薬の入った飴をあげたのを止めることもせずに黙って見ていたぞ?そもそもジルは最初から私の正体に気付いていたしな。美琴はジルのこと信頼してたみたいだけど、ジルは違った簡単に裏切ったんだよ。結局、誰も信用できないんだよっ」
「は?ジル、どういうことだ?ジルは美琴のこと守ってくれていたんじゃ...」
「...」
ジルは黙って悲しい顔をしている。
突然、眩い光が光り出し女神様が現れた。
「それは私が説明します。ジルは私の言うことを聞いただけです、だからジルを責めないでください。私に力がないばかりに、美琴には一度闇の力を取り込んでもらう必要があったのでそうさせてもらいました」
「闇の力って、そんなっ」
急に空気が重苦しいものに変わった。
「我が最愛の人プレディーネ、会いたかった」
すると、どこからともなく闇の王が現れて、プレディーネを抱きしめる。
「闇の王...?なんてオーラなんだ」
「あぁカルロス、やっとあなたに会えたわ。1000年、眠っていてもあたなのことをずっと想っていました。とても長かった、ずっとずっと会いたかった」
涙を流すプレディーネにカルロスがより強く抱きしめ、口づける。
「プレディーネ、もうじき我を封印しようとした人間どもを滅ぼすことができる、これからはプレディーネと二人だけの世界で生きよう、そうすればもう誰も私達の邪魔をする者はいなくなる」
「カルロス、それはどういうことだ?私を必要としてくれたのではなかったのか?」
アインスが悲壮な面持ちで問いかけた。
「ああ、アインス、いままでよくやってくれた。お前のおかげで私の目醒めが早まり、あの娘を使って、これから私の復讐を遂げることができる、もうお前は用済みだ」
アインスはカルロスにいいように言われてきたのだろう、騙されて切り捨てられたことにショックを受けて、その場に膝をついて放心している。
結局、自分もアインスを信用し裏切られてしまった。
「おいっ美琴を使うってどういうことだっ」
「これはこれは王子様、娘の光が強く育ったのはお前のおかげでもあったな礼を言う。光が強くなればなるほど闇もまた強くなる、そしてその娘の力を使って世界を終わらせることができる。あの娘に飲ませた薬は己の中にある闇を見せる効果がある。いまごろこの世界に光が強くなった分、心の闇が広がっていっているだろう、あははっ愉快だ」
「くそっどうしたらいいんだっ」
「...カルロス」
「なんだ?プレディーネ、愛しているよ。早く二人きりになれるところへ行こう、そこでこの世界の終わりを楽しもうではないか」
さらに口づけをする。
「カルロス、私もあなたのことを心から愛しているわ。だからお願い、もう復讐なんてやめてほしいの、私はあなたがいればそれだけで幸せなの、だからお願いよ」
「プレディーネは優しいな。だが、そうは言っても私は、私達を離れ離れにしようとした人間を許すことはできない。それにもう遅い、この娘はもうすでに闇に囚われてしまったのだ。プレディーネはこの娘を使って闇の力を抑え込もうとしたみたいだが、人間は闇の力には勝てはしない、闇を恐れて私を封印しようとしたのがいい証拠じゃないか」
「なら、それでも美琴が闇の力に勝つことができたら、もう復讐なんてやめてくれると約束して?」
「プレディーネはこの娘を信じているのだな...ああわかった約束しよう。闇に勝つことができないとわかればプレディーネも納得できるだろう。だが結果は何も変わらないと思うがな」
「美琴...」
ベリアルは美琴に近づいて抱きしめた、美琴の温もりを感じて、ちゃんと生きていることを確認した。
そして美琴を抱き上げ、二階にあるベッドへ寝かせた。
そこに心配したリリーとゼファイル、ジルがその様子を見ている。
アインスは一人その場から動くことはなく、カルロスとプレディーネはいつの間にか姿を消していた。
アインスの一人称はアリスになっている間に我➝私だったので、そのまま私になってます。
そろそろ終わりが近づいて寂しいです。
本編終わってから、後日談なども書く予定です。
読んでいただきありがとうございます。




