光の女神様と闇の王様
最後、語ってます。
昔々、この世界には光の女神と闇の王がいました。
二人は光と闇、対極でありながらも互いに惹かれ、愛を誓い合いました。
ゆっくりと二人で紡ぐ時間はとても大切で掛けがえのないもの、二人はとても幸せでした。
しかし二人の平和な時間は長く続きませんでした。
光の女神様が闇に囚われてしまうのではないかと、闇を恐れた村人達が二人の前にやってきて、太古より存在していた秘術で闇の王を葬ろうとしました。
王の力が強く、術も不完全であった為、闇の王は消滅することはなく封印されてしまいました。
女神様は愛する闇の王が封印されてしまったことに酷く悲しみ、闇の王のことを想い泣きました。
その涙が、王への愛、復活を願い、その地に根付きプレジールとなりました。
プレジールは女神様の闇の王への愛の証として生まれたものだったのです。
そして、そのプレジールのおかげで闇の王の封印は不完全となり1000年の眠りへとなりました。
女神様は涙が枯れてしまったころ、王のいない世界に耐えられず自ら命を断とうとしましたが、そのことに気が付いて、王と同じ時に目覚めるよう女神様も1000年の眠りにつくことにしました。
こうしてこの世界には光の女神と闇の王様の姿はなくなってしまいました。
葬ることはできなかったが、完全に封印できたと思って安心していた村人達は、光の女神様も自ら眠りについたことによって女神様の愛の深さに気付き、自分たちの行動が間違っていたのかもしれないと疑問を抱く人もいたが、村全体で決まったことに対して異議を唱える者はいなかった。
そして、自分たちの過ちを隠そうとその出来事を隠すことにしました。
けれど、女神様は眠りに着く前、この悲しみを自分達がしたことを忘れて欲しくなくて、この出来事を記した手記を残し、女神様のことを慕い、信仰の強かったある少女に託しました。
「これは女神様の記憶...?」
私は、その時の女神様の気持ちを感じて、涙が止まらず悲しくて悲しくて仕方がなかった。
「にゃー」
「ジル、プレジールは、女神様の闇の王様への愛の結晶だったんだね」
「美琴、よくこの地へ来てくれました。ジルも美琴を守ってくれてありがとう」
顔を上げると金色の輝く髪をした美しい女性が立っていた。
「...女神様?」
「私は光の女神プレディーネ、美琴、カルロスを、闇の王を助けてあげて」
「闇の王...この声、ずっと、夢の中で助けてって...女神様だったんだ...」
「美琴お願い、カルロスはアインスの強い心の闇の影響で1000年の眠りより早く目覚めてしまったの、そしてアインスの心の闇を利用して世界中が闇に飲み込まれてしまった。美琴のおかげで皆が元に戻ったけれど、今度こそカルロスは闇の力でこの世界の人達に復讐しようとしている。復讐はまた悲しみの連鎖でしかないのよ、私はそれを止めたいの。美琴がカルロスの闇に囚われてしまった人達を助けてくれたおかげで私の力は戻りつつある、でもまだ目覚める力が足りなくて美琴の力が必要なの。美琴の意思の力が私の力となるの、いままでも美琴が変わりたいと強い意志でやり遂げてきたこと全てが私の力になっているの、あなたの成長は私の力になる。だから、この先も恐れずに自分と向き合って」
「私の意思の強さ、私の成長...」
「本当はね、闇は恐れるものではないの。光と闇、両方があるから人は氣付くことができるのよ。それを忘れないで...」
「えっ、女神様、私、何をすれば...」
「美琴なら、きっと大丈夫だから...美琴は美琴らしくいれば大丈夫だから...」
そして、女神様の声が遠くなっていった。
...みこちゃん、みこちゃん...
「...みこちゃん」
「美琴、美琴、目を覚ましてよ」
ベリアルさんとユリアの声...
「あ、私...」
「美琴、気が付いたのね、よかった~」
ユリアが私に抱き着いてきた、すごく心配してくれたみたいで泣いている。
「...ユリア、ありがとうもう大丈夫だよ」
「本当?」
「うん、ベリアルさんも心配して来てくれたんですね」
「そうよ、ユリア王女様が泣きながら美琴が倒れて意識が戻らないって呼びに来てくれたのよ」
「そうだったんだ。ユリアありがとう」
女神様...夢、じゃない。
「ベリアルさん、私、女神様に会いました」
「どういうこと?」
私はさっきの女神様との会話を二人に話した。
「そうだったのね、闇の王は自分を封印した人間に復讐しようとしているね。それなら、きっとまだ兄と一緒にいるはずよ。この先、何かしてくるのは確実ってことね」
「ベリアルさん、私どうしたらいいんでしょう?具体的になにをすればいいのか...私の成長が女神様の目醒めに影響しているなんて、そんなこと言われても...またパンが焼けなくなるときだってあるかもしれない、私が成長できなかったらこの世界はどうなのる?私、どうしたら...」
「そうねぇ、女神様が言うようにみこちゃんはみこちゃんらしく、そのままでいいんじゃないかしら」
「私らしくって何だろう...」
「みこちゃんは、料理のことに関しては貪欲で、いつも幸せそうにしながら料理して美味しそうに食べてる姿は見ている人も幸せにしちゃうの。思いついたら突っ走って、意外な行動力もあるわね。それに損得なんて考えずに自分を変える為、傷付いている誰かの為に頑張ってる。弱いけど強い。もう難しく考えないで、これからもやりたいって思ったこと突っ走ったらいいじゃない」
「もうベリアルさん、私らしくの一番って食いしん坊みたいじゃないですか。...それで、いいんですか?」
「それがいいんじゃないかしら。みこちゃんのやりたいこと、いまはお店開くんでしょ?お店開いて、みんなに美味しいものを食べてもらって、その人達が笑顔になったら、みこちゃんも嬉しいでしょ?」
「それはもちろん!」
自分の作った料理をみんなに食べてもらいたくてお店をやりたいと思った。ベリアルさんやリリーの喜んで食べてくれる姿をいつも嬉しいって感じてる。
「ほら考えたら楽しくなってきたでしょ。それにね、誰かに何かこれをやりなさいって言われたとして、それを言われた通りやったとしても、きっと楽しくないんじゃないかしら。人に決めてもらって何かをやるのは責任もないし楽だと思うわよ、でもその分、やっていても酷くつまらないものになるんじゃないかしら」
「あ...」
会社でただひたすら仕事をこなしていたことを思い出した。
「もちろん、全てみんながやりたいことをやって生きて行けるわけじゃないと思うわよ。でもいまのみこちゃんには、自分の好きなこと、やりたいことがわかっているんだから、とことん楽しんじゃえばいいじゃない!」
そう言ってベリアルさんはちょっといたずらな笑顔を見せてくれた。
「ほーら、みこちゃんはどうしたいの?」
いつもベリアルさんが言ってくれる、決断するときに私の背中を押してくれる魔法の言葉。
「私は、私が作った料理をみんなに食べてもらって喜んでほしい。みんなの笑顔が見たいです」
「ふふっ、よろしい」
「にゃん!」
「そうだね。ジル、私、頑張るよ」
とにかくやってみよう。ごちゃごちゃ考えたら、また悪いこと考えて、きっと何もできなくなっちゃうもの。
「あの、美琴は女神様と関係があるってことよね、それじゃその本は美琴が持っていてちょうだい」
「えっ、でもこれはユリアのお母さんの遺品でしょ」
「これは遺品っていうよりもお母さんの御先祖様が女神様に託されたものみたいだから、これは美琴が持っていないといけないものだわ」
「わかった、ユリアありがとう」
「私も美琴に救われましたもの、美琴ならきっと大丈夫ですわ」
「うん、やれるだけのことをしてみる」
私はやっぱり幸せなんだ。こうして大好きな人達に励まされて、私なら大丈夫って勇気をくれる、人からもらえるエネルギーってほんとすごい力になるんだ。
この世界に来ることは偶然じゃなかったのかもしれない。どっちにしても私はこの世界に来ることができたから色々なことに気付くことができた。失敗や傷付くことを恐れていたけど、失敗したからこそ気付けることもあったし、私の経験したもの全てが自分の成長につながっているって、いまはよくわかる。大好きで大切な友達、そして、いつも私を見守ってくれていざとなったら助けてくれる私の大好きな人、この世界に来て恋をすることができた。
人の心は光だけじゃない闇だって必ずある、あっていい、両方あってこそ自分の大切なものに気付くことができる、だから私はもう必要以上に闇を恐れなくていいんだ。
かけがえのないこの世界がいまはとても愛おしい。
だから、この世界を壊してほしくない、復讐なんてやめてもらわないと。
いつも読んでいただきありがとうございます。




