この世界のこと
説明回です。
「ごちそうさまでした」
どうにか全部食べ終えた。
全部食べてえらいわね。と、頭をいい子いい子されてしまった。
ベリアルさん、あなたオカン属性ですか。ドキドキを通り越して安心感が半端ない。
「さてと、みこちゃん。あなたのことを教えてもらえるかしら?どうして外に倒れていたの?」
「えっと、色々あって、上手く説明できるかわからないんですが...」
「いいわよ、焦らなくていいからゆっくり話して、ねっ」
そしてベリアルさんは優しい笑みを私にくれた。
ベリアルさんは、職場で起きたこと、死にそうになったと思ったらこの世界に来ていたことを、優しく急かすことなく聞いてくれた。
初めて会った人にこんなにも自然に話せたことなんて今までなかったのにベリアルさんと話していると安心感があって心がすごく落ち着く。本当に不思議な人。
ベリアルさんは、屈んで私に目線を合わせて優しく微笑んでくれた。そして頭を撫でながら
「みこちゃん、頑張ったのね。みこちゃんが変わりたいって想いが形になって今日はたくさん成長できたのね。ちゃんと自分の意思で行動できてすごいわ、おめでとう」
私の行動を認めてくれた。
「ッ、ふぁッ、ベリアルさん、私ッ、ひっく...」
話しを聞いてもらって、頑張ったねって、変わっていく自分を認めてもらえてすごく嬉しくて、突然の異世界で一人ぼっちになった寂しさもあって、私の涙腺は崩壊してしまった。
ベリアルさんは目の前で泣かれて困ることなく、泣き止むまでずっと頭を撫でてくれた。
「ベリアルさん、話聞いてくれてありがとうございました。私の悩みなんて他人からしたらちっぽけな悩みだと思うけど、頑張ったねって言ってもらえてすごく嬉しかったです」
「みこちゃんダメよ!」
「えっ」
「悩みなんて人それぞれ、みんな生まれてきた場所や性別に環境、色々なものが同じではないのだから、違ければ経験することだって違う。みこちゃんの悩みはみこちゃんが成長するのに必要だったのよ。だからちっぽけなんて思う必要ないの。それにね、きっと成長するタイミングもいまがベストだったと思うの、だからみこちゃんは自分でも自分のこと素直に褒めてあげればいいのよ」
「私、出来ない自分のこといつも嫌で自分のこと否定ばっかりして、認めてあげることしていなかった」
「あらっそれはみこちゃんが可哀そうよ、もっと自分のこと好きになってあげなくちゃ」
「自分のことを好きに...」
「そうよ、出来ない自分も好きになってあげて、完璧を求めすぎる必要はないのよ、肩の力を抜いて、少しずつ出来ることを増やしていきましょ」
「ふふっベリアルさんに言われたらそれでいい気がしてきました。少しずつでいいからもっと自分のこと許してあげたいです」
するとベリアルさんが真剣な顔付になった。
「それでね、みこちゃん。先ずはごめんなさいね。今日あなたをこの世界に呼んだアインスは私の兄なの」
えっ、あの人がベリアルさんのお兄さん?正直、雰囲気が真逆すぎて信じられない。
「この国の名はレピアス王国。そして私たち兄弟は、この国の王の息子なの」
お、おう王の息子?って王子さま―――?口がぽかーんってなってます。
「あらら、びっくりよねー」
はい。そりゃもちろんびっくりで言葉失ってます。こんな森の外れに王子様がいるんて...
「あ、畏まらなくていいからね、言葉使いもそのままで」
「えっと、そう言う訳には...」
「今更よそよそしくされた方が寂しいから、気にしなくていいわよ。それにみこちゃんはこの世界の住人じゃないんだし、気楽にして、ねっ」
ベリアルさんがそう言ってくれるなら...
「それでね、兄は父上の後を継ぐ者としてとても優秀で、幼い頃から国の行政に関わっていたの。そんな兄は私にとって、とても尊敬する自慢の兄で大好きだった。でも兄は、自分の好きなこと、やりたいことの話しを夢中でする私のことが、疎ましかったみたいね。兄の心が傷ついていることに気付けなかったの」
寂しそうに話すベリアルさん。
「この世界はね、良くも悪くも意志の力がとても強く影響してしまうの。そして王族には他の人にはない力が代々宿っているせいもあって、傷付いた兄の心の闇が強大化し暴走してしまって、この世界に昔から生るプレジール、人々を癒すことのできる実が全て枯れてしまった、そのせいで街の人々から活気が失われ、心の闇が強くなっていったの。そして、そのまま兄は禁断の森の奥にある古城へと籠ってしまったのだけど...まさか異世界から召喚してしまうなんて、みこちゃんには本当に申し訳ないことをしてしまったわ。ごめんなさい」
「いえ、あのそんな、ベリアルさんが謝ることじゃないです。それに私は死ぬところを助けてもらったようなものなので、むしろ感謝しないといけないので、だからそんな気にしないで下さい」
ベリアルさん...すごく綺麗で、自分の好きなものを好きって言えて、優しくて一緒にいて落ち着く、誰からも好かれそうな人。そんな人でも自分のお兄さんのことで自分のことを責めている。
傷付きたくなくて人と関わることをできるだけしてこなかった私にはわかることのできない痛み。
「そんな寂しい顔しないで。ごめんなさいね、今度は私が暗い話を聞いてもらっちゃって。それにありがとう、兄のしでかしたこととは言え、そう言ってもらえてありがたいわ」
辛いのはベリアルさんの方なのに、ちょっと悲しそうな笑顔で笑ってくれた。
「だから私はね、城を出て、私が持っている力で街の人達が元気になれるように薬師の仕事をしながら美味しい野菜を育てているの。やっぱり美味しいものには人を元気にする力があるじゃない!私の作るお料理がもっと美味しければ更によかったのだけれどね」
私は、辛くてもそれ以上に楽しそうにそう語るベリアルさんの笑顔が、ベリアルさんの心を映しているようで、とても綺麗だと思った。
説明回はまとめるのになかなか難しかったです。
読んでくださってありがとうございます。




